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2019.10.19
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カテゴリ: 洋画

 DCコミックスのスーパーヒーロー・バットマンの宿敵ジョーカーの誕生秘話を描く。
 ジョーカーとなるアーサーを演じるのは、ホアキン・フェニックス。
 第76回ヴェネツィア国際映画祭で最優秀作品賞の金獅子賞を受賞。
 日本ではR15+に指定された。
 原題は「JOKER」。


粗筋

 財政難に陥り、閉塞感が増し、治安が悪化の一途を辿るゴッサムシティ。
 大道芸人のアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は、母ペニーの介護をしながら、毎日を辛うじて過ごしていた。
 アーサーは、緊張すると発作的に笑い出すという病を患っており、それが原因で精神病院に一時入院していた。現在も、福祉センターで精神カウンセリングを受けており、精神を安定させる薬を処方され、服用していた。「人を笑顔にさせる事をしなさい」と母親から常に言われていた彼は、コメディアンになる事を夢見ていて、ノートにネタを書き綴ったり、人気司会者マレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロ)の番組を観てその振る舞いを真似したりしていた。
 ある日、アーサーは、同僚のランドルから、護身用に、と拳銃を借り受ける。勤務中にチンピラらに襲撃され、仕事道具を破壊されてしまったと上司に報告したところ、上司から「嘘吐くな、お前が壊した道具の弁償代は給料から差っ引く」と告げられた直後だった。アーサーは、精神疾患を持つ自分は拳銃を所持すべきでない、と思っていたものの、また襲撃されては堪らないと恐れ、受け取ってしまった。
 それから間も無く、小児病棟でピエロとして仕事している最中に、子供らが見ている真ん前で拳銃を落とす、という失態を犯してしまう。アーサーは、電話で上司に対し何とか説明しようとするが、上司は言い放つ。お前はランドルに拳銃を譲ってくれとせがんだらしいな、お前は嘘吐きだ、もう面倒を見切れないからクビにする、と。
 帰りの地下鉄で、アーサーは女性に絡んでいたウェイン産業の証券マンらに暴行され、彼らを拳銃で射殺してしまう。アーサーは、ピエロの格好のまま、地下鉄駅から逃げた。

 この事件は貧困層による富裕層への復讐として世間に認知され、ゴッサムシティではピエロの格好でのデモが活発化していく。
 ウェイン産業の社長であるトーマス・ウェインは、自分の会社の従業員が殺害された事に関して、ゴッサムは危機に瀕していると表明し、それを打開する為に市長選に立候補すると宣言する。ただ、この表明も、デモの参加者からすれば富裕層の身勝手に過ぎず、事態の収拾には至らなかった。

 財政難により、市は福祉プログラムを大幅に削減。これにより、アーサーはカウンセリングを受ける事が出来なくなり、薬も買えなくなってしまった。
 ふとした事から、アーサーは隣室の未亡人ソフィーと仲良くなる。ソフィーには、自身をコメディアンとして紹介した。
 ソフィーの信用を得たいアーサーは、コメディアンがショーを行うバーで、初めてコメディアンとして人前に出る。しかし、緊張から、発作で笑い出してしまい、これといった見せ場も無く出番を強制終了させられた。
 その晩、落ち込んだ状態で帰宅したアーサーは、母から、かつて家政婦として雇われていたトーマス・ウェインへ宛てた手紙を託される。ポストに投函してくれ、と。母は、定期的にトーマスへ手紙を送っていた。トーマスは、必ず返事を寄こしてくる、と母は信じて疑わず、手紙を送り続けていたが、返事が戻ってきた事はこれまで無かった。母がウェイン家で働いていたのは30年も前の事なので、当然の事だ、とアーサーは思っていたが、母の介護の一環として、手紙をポストに投じていた。これまで母が書く手紙に興味を持つ事は無かったが、この晩だけは母が実際どんな内容の手紙に書いているのだろうと疑問を抱き、封を開け、読んでしまう。
 あなたの息子であるアーサーと、自分の生活が苦しいので、援助してほしい、という内容だった。
 アーサーは衝撃を受ける。自分はトーマス・ウェインの隠し子だったのか、と。
 真実を確かめに、アーサーはウェイン邸へ赴いた。トーマスの息子ブルースと執事アルフレッドには会う事が出来たものの、トーマスには会えなかった。
 失意のまま帰宅すると、証券マン殺人事件の捜査の一環として訪問した刑事に驚いたペニーが脳卒中を起こし、救急車で運ばれるところだった。アーサーは、母と共に病院で一晩過ごす事になる。
 病室のテレビで、その晩のマレー・フランクリンの番組が流れる。アーサーがバーで大失態を犯したショーの映像が流された。マレーは、アーサーについて、「こいつはステージ上でゲラゲラ笑ってさえいればコメディアンになれると勘違いしているふざけた野郎(ジョーカー)だ」と侮辱する。
 アーサーは、長年親しんできたマレーにも裏切られた、と感じる様になる。
 それから数日後、アーサーはウェイン劇場に侵入し、トーマスと対面する。自分はあなたの息子のアーサーです、と。
 しかし、トーマスは言う。ペニーの手紙は全て出鱈目だ、と。彼女は妄想癖の激しい精神病を患っていて、アーサーがペニーと自分との間に生まれた隠し子、というのも彼女の妄想に過ぎない。そもそも、アーサーはペニーの実子ではなく養子だ、と。そういう問題を度々起こしていたから、精神病院に入れられる運びとなり、解雇された。ペニーから手紙を貰っても返事を出さなかったのも、それが理由だった。
 母親の真相を知り、失意に暮れるアーサーは、ソフィーの家を訪ねる。が、ソフィーは恐怖に怯える表情を見せる。何故ここにいるの、部屋を間違っていないか、と。ソフィーとの思い出は、全てアーサーの妄想だったのだ。
 アーサーは、母が昔入院していたという精神病院へ行き、診断書を閲覧した。そこには、母が精神障害を患っている事、そして身元不明の捨て子を養子に取ったのがアーサーだった事を示す書類が挟まれていた。
 母親からも裏切られたと感じたアーサーは、病室のペニーを窒息死させる。彼女の死は病死と診断された。
 アーサーが自宅へ戻ると、電話があった。マレーの番組担当者からだった。先日アーサーが大失態を犯したショーの場面を流したが、それが予想に反して大好評だったので、ゲストとして出演してくれないか、というものだった。
 不本意な出演依頼だったが、千載一遇のチャンスでもあると考えたアーサーは、話に乗る事に。
 収録当日。
 ランドルが自宅に訪れた。警察がお前を証券マン殺人の犯人だと確実視しているから、犯行に使われた拳銃について口裏合わせしてやるぜ、と話を持ち掛ける。今更そんな話を持ち掛けられてもしょうがない、寧ろお前が銃を渡すからこんな事になってしまったんだ、と激高したアーサーは、彼を殺害する。
 アーサーは、落ち着いてピエロのメイクを施し、テレビ局へ向かう。途中、アーサーを見張っていた刑事らに追われるものの、デモ活動のピエロらに紛れ、追跡を撒く。
 劇場に到着し、楽屋で化粧を直しているアーサーの楽屋に、マレーとディレクターがやってくる。番組の流れを説明するディレクターとマレーに、アーサーは自分をジョーカーと紹介してほしい、と頼む。
 何故ジョーカーという偽名を、と訊くマレーに対し、アーサーは言う。番組で、自分の事を「ふざけた野郎(ジョーカー)」と呼んでいたではないか、と。マレーは既にその事を忘れていたが、了承する。
 フランクリン・ショーの生放送が始まり、ジョーカーとして紹介されたアーサーが登壇する。話の流れの中で、アーサーは証券マンらを殺したのは自分だ、と生中継で告白する。
 アーサーは、マレーが自分をテレビに出したのも、ただの笑いものにする為だけだと主張し、隠し持っていた拳銃でマレーを射殺。駆け付けた警察に逮捕された。
 アーサーの凶行が生放送されたゴッサムシティはデモが暴動と化し、街のあちこちで火の手が上がっていた。

 一家で映画を鑑賞していたトーマスは、暴動を避ける為に裏道へ妻と息子を連れて逃げるが、それを観ていた暴徒により射殺される。妻も射殺され、息子のブルースだけが生き残った。



感想

 アメリカンコミック界では随一の敵役であるジョーカーの誕生秘話を描いた作品、という事になっている。
 ジョーカーは、これまで劇場版バットマンで何度も登場しており、その誕生も既に何度か描かれているが、リブートされているので、作品ごとに誕生の経緯が異なっている。
 本作では、コメディアンを夢見ていたごく普通の男性が、ふとした事でジョーカーになってしまった、という事になっている。
 ただ、本作のアーサー・フレックは小粒で、無能。後にダークナイトでバットマンを手玉に取ってしまう大悪党へと成長する、という設定には無理があり過ぎる感が(ダークナイトと本作はリンクしている、と公式には発表されていないし、製作者側としても別物と考えているので、当たり前か)。
 本作で描かれるジョーカーは、ブルース・ウェインことバットマンを苦しめる事になるジョーカーとは別人物、と捉えるしかない。アーサー・フレックは、あくまでも「ジョーカー」という新タイプの犯罪者を生み出した人物で、バットマンと対決するジョーカーは、その流れを汲んだ別の犯罪者、と考えれば納得がいく。
 本作では後にバットマンとなるブルース・ウェインが登場するが、子供という設定。アーサーは本作では中年男性なので、もしアーサーがバットマンと対決するジョーカーと同一人物となると、老体に鞭打って30近く年下の若造と対決していた事になる。

 アーサーは、不器用ではあるものの決して悪い人物ではないが、不幸が重なって犯罪者へとなっていく、という風に、制作者側は捉えてもらいたかった様だが……。
 一部の不幸は、アーサーのせいではないが(妄想癖の母親の介護、冒頭でチンピラに襲われて仕事道具を破壊されてしまう等)、身から出た錆としか言い様が無い部分も多く、完全に同情出来ない部分も多い。
 小児病棟での仕事で護身用に持って来た銃を子供達の目の前で落としてしまい、上司から解雇を言い渡される下りは、自ら招いた失態に他ならない。小児病院に銃を持って行く必要なんて無かったし、持って行くなら持って行くで、もっと上手く隠していればよかった。ピエロの演技で飛び跳ねたくらいで落とすような場所にしまっておく方が悪く、解雇を言い渡されるのも仕方ない(銃社会のアメリカも、流石に銃を持ち歩いてはいけない場所があるらしい)。悲劇として観てください、という方が無理。

 アーサーの言動には意味不明の部分が多いが、周りの登場人物の言動も、意味不明なのが多い。
 アーサーの同僚であるランダルがその一例。
 ランダルは、チンピラに襲われて落ち込んでいたアーサーに、銃を渡す。
 アーサーが仕事先でその銃で失態を犯したと知ると否や、先回りして上司に嘘の報告をする。アーサーが銃が欲しいと俺にせがんだからくれてやるしかなかった、と。
 これにより、アーサーはクビになり、銃を渡した本人はクビを繋いだ。
 クビになった時点で関係は切れたのだから、関りを完全に断てば良かったのに、どうやらアーサーは証券マン殺害事件の犯人らしいと知ると、どういう訳かアーサーの元を訪れ、口裏合わせしよう、と持ち掛ける。
 激怒したアーサーは、ランダルを殺害。
 自分が渡した銃が殺人事件に使われてしまった、と恐れたからかも知れないが、それでも近々逮捕されるであろう殺人犯の自宅を訪れるのは愚かな行為としか言い様が無い。
 まさか自分を殺しやしないだろう、と高をくくっていたのか。

 本作では、善人がとにかくいない。

 ウェイン産業の証券マンらは、地下鉄で女性に絡み、それをアーサーに阻まれると、彼に暴行を加える。
 エリートサラリーマンでありながら、言動は下町のチンピラと全く同じ。
 アーサーに殺されたところで、同情出来ない。

 トーマス・ウェインは、自社の社員が殺害されたとの報を受けると、犯人は努力によって裕福になった者を恨む無知で無能な貧困層の仕業だと一方的に決め付け、自分ならこの街の屑共を一掃出来ると豪語し、市長選に立候補。
 この言動は貧困層の反発を招き、ゴッサムでは暴動が頻発。
 最終的に、ウェインは妻と共に、暴動参加者に殺害されてしまう。
 自業自得、とまでは言い切れないが、自分の言動が原因で巡りに巡って殺された感が否めない。
 たった一人生き残ったブルースは、犯罪者を恨み、バットマンとなるが、本作を観る限りでは、そもそも犯罪撲滅活動の根拠を踏み間違えていなかったのか、父親がもう少しまともに行動していたら殺害されていなかった可能性を考えた事無いのか、と問いたくなってしまう。

 アーサーは、ソフィという女性と交流を深めるが、実は全て彼の妄想であった事が明らかに。
 母親と同様、妄想癖がある、となると、本作のどこまでが実際に起こった出来事という設定になっているのかが分からなくなってくる。
 コメディアンが自身の腕を披露するバーでデビューを果たし、大失敗するシーンも、本当に起こっていたのか、アーサーの妄想なのか、分からない。バーが、コメディアン志望者全てを何の事前審査も無しにいきなりステージに立たせるとは思えない。事前審査があったとしたら、アーサーはそれを合格し、ステージに立った事になる。ただ、アーサーの有様を見る限りでは、そうした審査を通過出来る術すら身に付いていない気がする。
 後にアーサーは、番組からのオファーを受け、出演を果たす、という事になっているが、この下りも彼の妄想だったのでは、と思ってしまう。
 そもそも、ステージで何の見せ場の無かったシーンの映像が、大ウケするとは思えない。仮にウケたとしても、その人物を呼び出して番組に登場させたところでステージと同様、何も出来ないだろうと番組側は考える筈。
 その意味でも、本作は、「自分はバットマンの宿敵ジョーカーだ」と妄想する精神異常者の幻想を描いたもの、と受け取れる。

 アーサーは、精神カウンセラーに定期的に会い、薬を処方してもらっている。
 アメリカではこうした精神カウンセラーとの面談が何卒多い様だが、日本ではあまり無く、馴染みが薄い。
 精神カウンセラーは、実際にどこまで役立っているのか。
 女性は脳科学的に誰かに悩みを話すだけで気分がすっきりするらしいが、男性は具体的な解決法を望むので、悩みを話しても解決法が提示されないと、より気分が落ち込む。
 精神カウンセリングなんて、カウンセリングを行う側の自己満足っぽい。
 それとも、アメリカ人は男性女性に関係無く、悩みを打ち明ける事ですっきりするのか。
 それだったら、アーサーも少しはすっきりしていなくてはおかしい気がする。

 本作は、日本ではR15+指定。
 精神を蝕まれていく主人公が最終的には凶悪犯罪に手を染める、というストーリーなので、未成年に観せたら真似しかねない、という理由からだと思われる。
 ただ、暴力の描写はあるものの、これまで公開されている暴力的な作品からすれば大人しい部類に入る。また、性描写も無い。
 R15+指定に期待し過ぎて観に行くと、肩透かしを食らう。

 世間では、本作をアカデミー賞受賞確実の傑作、として評価されているが……。
 悪い作品ではないが、そこまで凄いとは思えないし、共感も同情も出来ない。
 そもそも、本作で描かれている悲劇は全て創作。
 アーサーは悲惨な目に遭うが、演じているホアキン・フェニックスは、本作に出演した事でそこらの鑑賞者が一生掛けて稼ぐ額を手に入れたと思われる。次にどんな作品に出演するかは不明だが、そこでも結構な報酬を得るだろう。作中では貧困層を代弁している様に映るが、実際には富裕層の一員なのである。
 鑑賞者が本作を観て鬱憤を晴らした気分になっても、鑑賞代金は巡りに巡って富裕層の懐をより温かくするだけで、劇場から出れば、いつもの単調な生活に戻るしかない。
 それが現実で、寧ろそちらの方が悲劇。







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Last updated  2019.10.19 15:24:34
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