2006.02.14
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カテゴリ: 絲綢之路
夜、ホテルに戻り、食事もそこそこに部屋にこもる。


そこには、バスの振動で泥が落ちて、より鮮明になった壁画が浮かび上がっている。描かれているのは、輪っかがいくつかと、滑らかな曲線だけ。これまでに見た壁画から、それは仏様の胸元あたりを飾る宝飾品の一部なのだと勝手に思ってみる。

じーっと見つめて、このカケラの先にあるものを妄想する。カケラは約30センチ×20センチ。その中に仏様の胸元が納まってるということは、俺と同じくらいの大きさの仏画じゃないだろうか?仏様は立っていたのだろうか?座っていたのだろうか?目は?髪は?色あせた宝飾品には、どんな色がちりばめてあったのだろうか?そう思うだけで、楽しくて仕方がない。

この先を自分で描いてみたい。この仏様を復元してみたい。そういう衝動に駆られて、ノートにこのカケラを写生した。できるだけ正確に。今の状態をそのまま写しておきたかった。

壁画のスケッチ壁画のスケッチ

しかし、注意して見れば見るほど、壁画に入ったヒビもくっきりと見えてくる。カケラを横から覗くと、壁画が描かれている粘土の層が浮き上がっている。ところによっては、隙間から向こう側が見ている。自分の手から離れたとたん、この宝物が崩れてしまうような気がする。いや、俺の手の中にあっても崩れていくに違いない。俺が見つけた以上、これは、これ以上壊れてはいけない。

グルグルと脳みそを回してみる。ここは、シルクロードのど真ん中。ろくな機材や材料は揃わない。ふと、停電用のロウソクが目に留まった。そして、俺は、これまでになく大胆な行動をとった。なんと、ロウソクに火をつけ、浮き上がったカケラの隙間に流し込んだのだ。

壁画の表面にロウが落ちないように、慎重に慎重に。息を殺す。汗でべっとりと濡れた手で、滑らないように、一生懸命ロウソクを握る。ロウが隙間に流れ込むにつれて、壊れそうな不安が埋まっていく。ちょっとした、考古学者気分だ。われながら、うまく修理できた。これで、少々の振動でも耐えられるだろう。





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Last updated  2006.02.14 22:38:28
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