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2007年03月24日
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大量虐殺の独裁者、アミンの半生。背後の英国こそ実は。他人事にあらず、北の将軍様を想起すべし。

 注目作。1970年代のアフリカはウガンダの独裁者イディ・アミンと、彼の顧問となるスコットランドの一白人青年医師の“運命”を描いています(ちなみにスコットランド人青年医師ニコラスは架空の人物です。それからウガンダ・トラさんは元ビジーフォーのタレントさんです(^O^)。
 主役のアミン大統領を演じたフォレスト・ウィテカーは本作品でゴールデングローブ賞、アカデミー賞の主演男優賞を受賞しました。独裁者の狂気と情けなさを熱演しています。この人には『ゴースト・ドッグ』(『葉隠れ』をモチーフにしたサムライアクションの異色作)の主役を演じた時から一寸注目していました。煙っているような視線が印象的な俳優さんですね。一度パンフを御覧になると直ぐに感じられると思うのですが、この「煙っているような目」が、独裁者を演じるに当たって大変効果を上げています(怖いのよ)。

 R-15指定です。2シーン程、生理的嫌悪感を感じる映像があります(吊り上げ拷問シーンは大した事無いけど、手足入れ違え接合は退いた)。

 (白紙の状態で観たい方は以下の文を読まないで下さい)

 ストーリー自体は紹介してもしょうがないですね。これを機にアフリカの現代史の復習などしてみるのも良いでしょう(どうでもいいですが、劇中の「人肉は食べていない」とのアミン氏怒りの声はどうも正しいらしいです。鶏肉以外は召し上がらない方だったようですね)。
 クーデターを成功させ、大統領に就任した当初は民衆の熱狂的な声援によって支えられていたアミン。この時は希望に燃えた快活な男でした。それが徐々に猜疑心によって狂気の独裁者と化して行きます。
 この過程は将に、「よくある(陳腐な)」独裁者への変貌過程ですね。

“邪悪” である事」の特長の一つに「 “陳腐” さ」があるような気がします。どういう訳か、通常「悪(悪人)=個性的」というイメージで語られる事が多いのですが、これは、恐らく「我“欲”」がしばしば“個性”と勘違いされている為でしょう。一般に“欲望”というものは実はひどく“凡庸”“陳腐”なものなのですが(他者との関連、比較等により喚起されるもの)。

 この映画を観るに当たって、特に 注目すべき点 は「 何故、架空の白人青年を主人公に持ってきたか 」という点でしょう(ドキュメンタリータッチで構成する事も十分可能な題材であるにも拘らずです)。恐らく、「欧米人が感情移入しやすい登場人物(=白人)を主役に据える為」だけではないでしょう。

 この映画には、「独裁者」の背後にもう一つの「 隠されたテーマ 」があると見るべきでしょう。

 それは「 植民地主義 」。欧米列強(ウガンダの場合は英国ですね)の植民地主義の強い影響とその残滓(と言うより今も強いか)。
 (本作品でも英国政府関係者の暗躍が描かれていました)

 アフリカ諸国に多く見られる“失敗国家”はこの「植民地主義」が植民地にもたらした政治的、心理的、そして特に道徳的ダメージによって生まれたものです(と、言い切っちゃう。アフリカの諸民族が「馬鹿だから」、「劣っている」から、失敗国家になったのとは違う、という事ですね)。
植民地主義 」によって固有の “伝統”が根こそぎ破壊 された地で、一体何に “道徳”の基盤 を求める事が出来るでしょうか(「道徳とは祖母が孫に語る言葉の内にある」『虚栄の篝火』にこんな台詞なかったっけ)。

 つまり、このウガンダの悲劇(30万人が虐殺されたらしい)も直接の原因はイディ・アミンに求められるでしょうが、真の原因は「植民地主義」にある訳です。

 ラスト、いよいよ主人公ニコラスとアミンの決定的対立が明らかになる空港でのシークエンス、重要な台詞がアミンの口から吐かれます。「お前は『ボクは白人、キミは原住民』ゴッコをしているつもりか」

 ボランティア活動だろうと、政治顧問だろうと、彼にとっては役割の固定化されたゲーム(リアリズムが欠如している“遊戯”という意味です)を楽しんでいるに過ぎなかった訳です。「白人は“先生”、有色人種は“生徒”」「白人は“医師”、有色人種は“病める者”」「白人は“成人”、有色人種は“子ども”」(このあたり皮肉を言えば、日本は良い“生徒”でありましたが、一時期“グレ”て、しかし今は“改心”して良い“生徒”になっているといった所でしょうか。y=-(゚д゚)・∴;。


 この映画は決して、我々と無関係な「アフリカの独裁者」の映画として観てはいけないでしょう。また、これまた我々と無関係な「アフリカと西洋」の“特殊な関係”から生まれた悲劇、と捉えてもいけないでしょう。

 突き放して、 他人事として観ちゃイケナイ映画
 何故ならば。

 ウガンダで虐殺された人々の数は30万人と言われています。
では、北朝鮮では どれ程なのでしょう(100万人は突破していると言われていますが)。

 また、北朝鮮の独裁者がその地位を維持しえているのは日本国内の独裁体制支持者による援助が大きいと思われます(と言うより、それが全てか。何しろ核兵器を密造できたのも日本からの潤沢な資金と密輸出された機材があればこそだもんね)。
 大江健三郎を始めとして、いとも“無邪気”に独裁国家を賛美した人々は、将にこの映画のニコラス青年の姿にダブるのです。

 ニコラス青年は一体何をしたのか。

 旧従属国と旧宗主国、独裁者と“無邪気”な“良心的知識人”。この関係は如何なる“深淵”から発生しているのか。

 さらに日本が“植民地”とした地域は(北朝鮮以外は)押並べて高いGDP、GNIを(アフリカ諸国に比べ)誇っていますが、これは如何なる理由からなのか(「皇民化(自国民化)」というのは世界的に見て日本だけが行った特殊な方針のようです{「良い、悪い」はここでは論じません}。

 また、台湾は民主主義体制を確立していますが(おっと、韓国も、え~、民主主義国家という事になっていますね、うん民主主義国家だ(笑)、何故、それが可能だったのでしょうか。アフリカ諸国と宗主国諸国との個々の事情、どう違い、どう同じものがあるのでしょうか。

 (馬鹿さんの為に言っておくが「だから日本はエライ」なんぞという事を言いたいのではない。そうじゃなくて)
 日本がアフリカ諸国の為にできる事、否、しなければならない事は単純に表層的な資金、物資の援助だけではない、という事です。

 日本の過去の政策の内、何が評価でき、何が出来ないか、そして何が「アフリカ--欧米」の関係と違ったのか。
 何でもかんでも思考停止の「日本即、悪だぁ~」じゃ駄目、ちゃんと考えなきゃイカン、という事です。

 それは決して日本人の名誉の為じゃない、アフリカ、南米、アジアその他多くの国々の 諸民族、諸国民の為のプラグマチックな知恵となりうる からなんだ、という事です。



 この映画、かなり“日本人”として“触発”される映画なんですがね。

 北朝鮮のキチガイ独裁者を念頭において見るとさらに興味深いと思います。

(あっ『特攻サンダーボルト作戦』って言うのも観たら良いかも。この映画にも出てたエンテベ空港の人質救出作戦を描いた映画)






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最終更新日  2007年03月24日 07時14分21秒
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