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2005年12月08日
第八回 自分の強味を発見したインド
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2005年10月28日
価値観の衝突
前回までにインドが海外債務をため、その債務の履行に問題を生じたことが根本的な経済改革を「待ったなし」にしたところまで説明しました。インド政府はこれまでの経済的な「擬似鎖国」を解き、外資のインドへの進出などを認める決定を下します。この先陣を切った企業のひとつがエンロンです。同社はダボールに巨大な発電所を建設するプロジェクトを提案、工事に取り掛かりますが、インドの国民の外資に対する不信感は根強く、デモ、サボタージュなどが相次ぎます。この世論の沸騰に乗じて野党のBJPが政権を獲得、BJPはこのプロジェクトの差し止めを指示します。こうしてインドの市場開放はのっけから暗礁に乗り上げてしまったわけです。
神風が吹いた!
しかし、インドの政策は失敗ばかりではありませんでした。例えば、インドの初代首相、ジャワハルラル・ネールが1951年に創設したIIT(インディアン・インスティチュート・オブ・テクノロジー)は大変優秀な理工系の学生を大量に送り出しました。問題はそういう高度な教育を受けた優秀な学生が、自分の才能を生かせる雇用の場がインド国内には存在しなかった点です。
このため、それらの学生の多くは印僑として海外に脱出し、その少なからぬ者がシリコン・ヴァレーに根を下ろしました。インターネット・ブームが到来した際、シリコン・ヴァレーの印僑が大活躍したのは皆さんの記憶にも新しいところだと思います。
さらに、このブームで世界各地に光ファイバーの敷設ブームが起こりました。キャパシティーがどんどん追加されたため、価格競争が起き、通信コストは大幅に下落しました。廉価で信頼性の極めて高い通信キャパシティーがふんだんに存在することが海を越えたアウトソーシングを可能にし、ITアウトソーシングやBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の隆盛を招きます。
究極の顧客からスタート
インドのアウトソーシング産業にとって幸いだったもうひとつの「偶然」はたまたま最初に顧客にした相手がジェネラル・エレクトリック(GE)だった点でしょう。GEはもともと慢性的に発電キャパシティーの不足しているインドに発電装置を売り込むためにインドにやってきました。その機を捉えてインド側が「自分達に御社のアウトソースをやらせてください」と逆にセールス攻勢をかけたわけです。この突然の申し出に怯まず、冷静にその価値提案に耳を傾け、良いと思えばその提案をすぐに採用したところがGEをしてエクセレント・カンパニーたらしめるところでしょう。経営の神様、ジャック・ウエルチから「お墨付き」を貰ったということが瞬時にしてインドのアウトソース業界のクレディビリティー(信用)を確立したわけです。
このITアウトソース産業の成功がインドの国民的プライドに与えた影響というのは大変大きなものがあります。これまで経済の舞台では「サクセス・ストーリー」が全然無かったインドが自由競争の世界で欧米の一流企業を打ち負かすことができるという発見はインド人に「やればできるんだ」という自信を与えました。それと同時にこれまでは躊躇しがちであった経済改革に国民が「本気でチャレンジしてみよう」という気が初めて起こっていると言っても過言ではありません。
インド独立の時にロール・モデル(お手本)としたソ連が崩壊し、そのロシアは今やBRICsの一員として経済成長を競い合っていること、また、中国の成功を目の当たりにしていることなどと合わせて考えてもインドが今後、昔の価値観に逆戻りする可能性は極めて低いと思います。一方、肥大化した政府部門、融通のきかない雇用習慣、立ち遅れたインフラストラクチャーなどは成長の妨げになるというできが出来る一方で、それらを改革すればインドの経済は良くなることが明白なわけですから、今後政府が取り組んでゆくべき課題、つまりロード・マップは明快に描けるわけです。つまり弱味が転じて強味となり得る可能性を秘めていると言えるでしょう。
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最終更新日 2006年01月31日 11時59分19秒
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