2006年12月04日
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今日のまとめ

1.ユーカリの木から採れるパルプがシェアを伸ばしている
2.ユーカリの木は生育が早くブラジル企業の競争力の源泉となっている
3.アラクルーズはブラジル企業で最初にADRをNY市場に上場
4.市況リスクに注意

パルプについて

紙の原料となるパルプは大まかに分けてハードウッド・パルプとソフトウッド・パルプの2種類に大別されます。ハードウッド・パルプはアカシア、楢、ユーカリ、ポプラ、かばの木などから採れるパルプで一般に繊維が短く、コート紙やアンコート紙、ティッシュ・ペーパーなどを作るのに適しています。一方、ソフトウッド・パルプは松などの軟質な木から採れるパルプであり繊維が長いのが特徴です。ソフトウッド・パルプは紙質を強化したりするためにハードウッド・パルプに混ぜられます。

パルプの製法には(1)化学パルプ製法と(2)機械パルプ製法があります。機械パルプ製法による紙は時間が経つと褪せるため、日本などでは化学パルプ製法によるパルプが主流です。化学パルプ製法では化学物質によって木の中にあるリグニンと呼ばれる繊維を繋ぎとめている物質を溶解します。普通、この過程を「クラフト過程」と呼びます。こうして溶解された原料はマーケット・パルプ(自由に取引されるパルプ原材料)として世界の製紙会社に買われてゆくわけです。2005年の時点での世界のパルプの生産キャパシティーは約1.9億メトリック・トンです。生産キャパシティーの地域別の分散は下のパイ・チャートのようになっています。

世界のパルプの生産キャパシティー(%、PPI)

上のグラフからわかるように南米のパルプの生産キャパシティーは世界の8%です。しかし、これらのパルプの生産能力は植林から伐採、パルプの採取、製紙までの全ての過程を垂直的に統合した製紙会社の所有になるキャパシティーが過半を占め、原材料が不足している製紙会社が市場から買い付けてくるマーケット・パルプは全体の25%、4700万トン程度に過ぎません。

パルプ消費の内訳(PPPIアニュアル・レビュー)

ユーカリの木から採れるパルプ

さらにこのマーケット・パルプの中でユーカリの木から採れるクラフト・パルプで漂白されたもの(それをBEKと呼びます)は約1000万トンです。このBEKの市場の中での構成比はアラクルーズが26%、残りのブラジル企業が30%で、ブラジル勢が全体の過半数を占めています。なおマーケット・パルプの需要は年率4%成長、BEKは年率10%で成長しています。換言すればマーケット・パルプに占めるBEKの比率は年々上昇しているわけです。



これらのことからBHKPに占めるユーカリの木の比率は1980年の29%から去年は43%にまでシェアを伸ばしています。なおアラクルーズなどのブラジルの大手パルプ業者の場合、生産の殆どを人工の植林に依存しています。

BHKPのコスト(US$/メトリック・トン、輸送費込み、ホーキンス・ライト)

ブラジルの林業

ブラジルのパルプの業者を規模の大きい順に並べると:

アラクルーズ
セニブラス
ヴォトランチン
スザノ
ジャリ

となります。最大手のアラクルーズは約43万ヘクタールの土地を持っており、うち26万ヘクタールが実際に植林されています。ブラジルのパルプ業者のうちADRのあるのはアラクルーズ(ティッカー:ARA)とヴォトランチン(ティッカー:VCP)です。両社の売り上げの推移を下のグラフに示します。なおヴォトランチンは垂直統合されたメーカーであり、パルプ(生産量の4割を社内で消費、残りの6割をマーケット・パルプとして国際市場でさばいています)だけでなくコート紙、アンコート紙などの最終製品も作っています。

アラクルーズとヴォトランチンの売り上げ高の推移(百万ドル、各社20-F)

アラクルーズはブラジル企業の中で最初にニューヨーク取引所にADRを上場した企業であり草分け的な存在です。林業は自然を相手にしたビジネスですから特に企業の倫理や社会的責任や環境保全に対する考え方が重要になります。その点、アラクルーズは株主のみならず植林作業に当たる農家や従業員、コミュニティーの人々、NGO(環境保護団体などの非営利団体)までを含めてステーク・ホールダー(関係者)と看做し、責任ある企業活動を行なっていこうとする努力が見られます。環境保護に関するディスクロージャーも良いですし、NGOなどとの対話もきちんとやっているほうではないでしょうか?。(勿論、問題が全然無いわけではありません。具体的には去年、原住民インディアンのコミュニティーと先祖代々の土地の所有権を巡って論争がありました。しかし、それらの問題をつつみ隠すことなくディスクロージャーしている点は評価できます。)エマージング・マーケットの企業は一般に金儲けをするのに忙しすぎて、こういった面では大変遅れている企業が多いのですが同社の姿勢は今後BRICsのほかの企業のお手本になると思います。

主要林業株の株価収益率

リスク

さて、ブラジルのパルプの銘柄に投資する際のリスクですが、先ず林業という性格上、やはり市況に左右される面を考慮しておく必要があります。先進国経済が減速すれば紙の消費も鈍りますから市況が悪化します。また需要成長の約半分が中国からもたらされていることを考えれば、若し中国経済の成長が鈍化した場合、ブラジルのパルプの企業もその影響を当然受けると考えられます。さらに林業は環境を巡る法規制などに厳格に縛られた業界であり、ルール違反があった場合、伐採許可が取り消しになったりするリスクもあります。さらに山火事などの自然災害のリスクも考慮すべきでしょう。

株式の所有関係の観点からですが、ヴォトランチンはもともと同族経営の会社であり、今でもエミリオ・デ・モラエス一族に支配されています。従って少数株主権の擁護の点からは好ましくありません。一方、アラクルーズの場合、投票権の28%、発行済み株式数の12.35%に相当する株式がヴォトランチンに握られています。10人のアラクルーズのボードメンバーのうち3名はヴォトランチンが送り込んだ役員です。従ってアラクルーズの首脳が考える通りの経営政策が役員会の反対で実行できないなどの支障が出る可能性があると思われます。





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最終更新日  2006年12月05日 12時33分42秒


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