ドラゴン山田の研究室

ドラゴン山田の研究室

2007.01.28
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カテゴリ: Study
ダンバインが「とぶ!」ものであり、ビルバインが「斬る!」のであれば、睡魔を乗り越えた今日の私を表現するには、さしずめ「読む!」とでもしておこうか。

Iris Marion Young, Inclusion and Democracy (Oxford: Oxford University Press, 2000) の第1章 "Democracy and Justice"。数年前から、授業での教材として使用し、学生たちと読んで「熟議デモクラシー deliberative democracy」について議論してきたものだった。しかし、授業中に読み進めるスピードの問題と、限られた授業回数ゆえに、この章を最後まで読みきることはなかった。それを、今日は自分でようやく読み終えた。そして、ここ数週間悶々と考え続けたことが、ひとつ開けてきそうな光明が見えてきた。

「闘技的デモクラシー agonistic democracy」モデルと「熟議デモクラシー」モデルが、必ずしも相互に排他的なものである必然性はないこと。「熟議デモクラシー」が、理性的な合意形成を重視する余り、感情とか情念とか非合理的な運動(街頭デモとか)を「civil でない」と排除する傾向性があるが、それも一種の exclusion であること。むしろ、価値多元的で相互依存的な mass society においては、多様な表現方法が認められるべきであり、それらに耳を傾ける「reasonableness」が必要であり、これこそ非暴力につながるものであること。そして、語ることは「戦い」であること。ただ、それは利益集団多元主義(あるいは「利益集積型デモクラシー」モデル)とは異なり、自身の利益なりアイデンティティなりを不動のものとは考えず、他者とのコミュニケーションの中で自己変容の可能性を受け容れるものであること。だからこそ、「聞く」という態度が大事であること。および、価値多元性や差異こそがコミュニケーションの前提であって、「討議には共通善(common good)が必要だ」とする熟議デモクラシー論には、一定の批判がなされなければならないこと――。これは、ここ数年、私がない頭で考え続けてきたことと見事に符合する。

昨年逝去してしまった Young 教授が、mass society という言葉を多用していることも、別次元の問題として興味深かった。私が拙著『大衆社会とデモクラシー』(およびシェフィールド大学の Ph.D.論文)を執筆した時、常に脳裏にあって私を悩ませたのは、「ポストモダン社会」とか「ポスト工業社会」の登場によって、1980年代以降はもはや「大衆社会」ではないとされがちであったことだ。また、1990年代以降のデモクラシー論(特に、ポストモダニズムの影響を受けたそれ)は、従来の大衆社会論とはかなり異質な議論をしてきている。にもかかわらず、ここ数年の間に、mass society の諸問題を改めて論じようという著作が、多くはないものの散見されるようになってきた(例えば C. W. ミルズの再検討など)。その意味で、Young 教授が mass society という言葉をどのように理解して用いていたのかについては、すこぶる関心がある。そのことをご本人に直接尋ねる機会が永遠に失われてしまったことは、残念で仕方がない。私が英文拙著 Democracy and Mass Society: A Japanese Debate を彼女に送りつけたのは、去年の3月頃のことだったが、すでにその時に彼女は病床にあったのかもしれない。きっと読まれてはいないだろう。せめてあと2年長生きしてくださり、読んでもらい批判をいただきたかったものだ。



それはともあれ、この Inclusion and Democracy 、私はすべてを読みきったわけではない。近々に書こうと思っている論文のために、すべての章を読む必要はないのだろうが、しかし第1章や第5章だけ読んで分かったつもりになることはできない。また第1章そのものも、もう一度注意深く読み返してみなければ。その意味で、この本の全体像を理解するのに有益な、五野井郁夫氏の書評論文「デモクラシーと境界を越える正義―― Iris Marion Young, Inclusion and Democracy





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最終更新日  2007.01.28 19:44:28
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