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2016年02月14日
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カテゴリ: 鈴木藤三郎
 4、藤三郎、アメリカ大陸鉄道に乗る
 藤三郎は八月一二日大陸横断鉄道に乗って、オークデン・ソートレーキシティー、シカゴを経てニューヨークに着いたのが八月二十日です。日記で藤三郎は珍しくその車窓からの景色を詳しくしるし、当時の大陸鉄道の旅を彷彿(ほうふつ)させます。少し原文を読んでみましょう。
「ニユーカストル辺(あたり)より地勢漸(ようや)く高くなり、ブロメルゴツトの狭(きょう)路(ろ)より岡巒(こうらん)〔高い台地と山〕重畳(ちょうじょう)峻(けわ)しくて進行頗(すこぶ)る至難(しなん)なり。コルハツキスに達するとき、汽車は傾斜して仰(ぎょう)登(とう)す。谿坡(けいは)を渉(わた)り、橋を越へ、眺望(ちょうぼう)絶佳(ぜっけい)の城に着く。背後は厳嶂(げんしょう)〔きびしい峰〕壁をなし、樹木を負(おい)て嶄(ざん)然(ぜん)〔ひときわ目立つ〕たり。前は深谷(しんこく)洞(とう)然(ぜん)〔ぽっかり〕と窪(くぼ)く、且(かつ)つ其(その)谷底(たにぞこ)に一村落あり。遥(はるか)に豆人(まめひと)寸(すん)馬(ば)を見る。是よりコールドロン村を過ぐ、此(この)辺(あたり)には谷間より渓(けい)水(すい)を引き金(きん)砂(さ)を淘(とう)する桶(おけ)を処々(しょしょ)に観(み)る。ドツチユルラツト村を経(へ)てヲルタに至るも、各家皆、採金家にして亦(また)桶(おけ)の仕掛(しか)けあり。是(これ)即(すなわ)ち世界三大金鉱の一つなりと云(い)ふ。偖(さ)て列車は険(けん)を走せサデールンに登りしが、峻坂(しゅんぱん)〔険しい坂〕倍々(ますます)急なり、機関車を増して三となし、サデール・チウナリングの両高山前後を塞(ふさ)ぎて聳(そび)へ立ち、険峻(けんしゅん)最も極まれり。此(こ)辺(こ)よりは鉄道は雪覆(せつふく)の設(もうけ)あり。其(それ)よりウエストボーターの隧道(トンネル)を抜け、スシツト村に着したり。此(この)駅はシーラネヴアタ山脈の絶頂にして、海面を抜(ぬ)くこと七千〇十七尺〔約二千メートル〕なりと云(い)ふ。峰巒(ほうらん)波を成し、此(この)地に一宇(う) [一棟の家]を建設して列車を寄す。」
 ゴールドラッシュのなごりもあり、当時の大陸横断鉄道の旅の貴重な記録です。
横断旅行中の汽車の中のエピソードが「風聞百話」に載っています。アメリカで長旅の上等汽車に乗っているとき、藤三郎がカバンを車の中央に置いたところ、同乗のアメリカ人婦人がそのカバンの上に腰かけて同行の婦人とおしゃべりした。藤三郎は怒ってうしろからカバンを引くと、婦人は腰をとられ転んだ。婦人は真っ赤になって怒り、食ってかかり、藤三郎も日本語で言い返す。同乗の藤山治一は、この男はクレージーだからと仲裁し、事をおさめ、藤三郎に聞きました。
「君はなぜ、あんなバカなことをしたのかね」
「カバンの中には、母から貰った大事な守り札が入れてある。これを女の尻(しり)に敷(し)かれるは忍ばんと欲して忍ぶことができなかった」
藤三郎の人生を通して感じるのは、養母ちえを大切にするところです。これは生母ちえの涙の教えにあったと思われます。藤三郎の実父の太田文四郎が亡くなった後、家を継いだ長男がなくなるという不幸が続きました。そのときに、菩提寺(ぼだいじ)の和尚(おしょう)が心配して実家にやってきて、生母にこう言いました。
「おちえさん、ご主人に引続いてご長男がなくなって、家を継ぐ者がなくなって、さぞ心細いことでしょう。私が口を聞いて、次男の才助を実家に戻すようとり計らいましょうか」

「あなたの言うとおりだ」と、和尚さんは引き下がったそうです。生母ちえは藤三郎を呼んで、事の次第を話して、養母のやすに親孝行を尽すように涙ながらに訓戒したといいます。





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最終更新日  2016年02月14日 10時41分45秒


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