志 錬
週3回の稽古は緊張感があり、真剣さから誰一人笑う者すら居なかった。
当時から体が小さかった長男は、年下の子達にも歯が立たなかった。
そして、稽古を終始、私の眼が見張る。
長男にしてみれば、その様な逃げ場のない環境は息が詰まる思いだったのだと思う。
妻には、何度となく辞めたい旨の話しをしていた様だった。
それでも続けていたのは、私が怖かったからに他ならない。
そんな騙し騙しの環境に、ある転機が訪れた。
私の転勤の辞令である。
単身赴任の選択肢もあった。
しかし、長男の環境を変えることで、良い方向に向く可能性を求めることにした。
皆を説得して家族全員での引っ越しを実現させたのである。
長男、小学4年生の12月のことである。
引っ越しに先立って、候補地周辺の五つの道場を訪れてみた。
その中には、県下の強豪道場もあった。
そこに入門させれば、確実に技量と体力は向上したと思う。
しかし、私が選んだのは、1時間の遊びの様な練習が週3回のクラブだった。
入門してみると、これまで、年下の子達に投げられていた長男が一躍、主力になった。
勝ち癖が付くことで、負けん気も出てきた。
また、遊びの延長的な練習にも不満を覚え、厳しい稽古の道場への出稽古を嘆願して来る様にもなった。
ある日「前の道場は、良かったな~」とつぶやく長男を見て、意識改革に成功したと実感した。
そして、私が、そのクラブを選択したことは誤りではなかったと思った。
現在、私は、その遊びの様なクラブの指導者になっている。
長男が、大嫌いだった柔道を、大好きにしてくれたクラブ。
そして、今のクラブには、柔道が大好きなれど、まだまだ強豪道場に及ばず、強くなりたいと願う子供達がいる。
私にとっては、恩返しでもある。
子供達が、このクラブで柔道をして良かったと思える環境を築いて行きたい。
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