INFINITY

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猫、只今反抗期



 ↓ ↓ ↓









大きな瞳は手元の文字をさらさらと流れる。
長いまつげが時々考える様に伏せられ輝きを放つ。
訝しげに眉を顰めてみたり、小声で復唱してみたり。
その細い指は宙を描き、思い立ってまた定位置の顎へ持っていかれる。
偶に笑ったり、愉しげに音読してみたり、そして驚きに見開かれる瞳だったり。

溜め息。

さっきからその本ばかり見て。
ね、ぼくの事も見てくれて良いんじゃない?
もしかして気付いても居ないとか?

溜め息。

ま、良いけどね(良くない。

何をするでもなく見つめていたぼくは、用事でも有れば彼に声を
掛けられたものの、その一心な姿に何も言えず、今に至る。

綺麗な人だから、飽きるって事は無いんだけどね。

仕様が無くぼくは流しに残っている洗物を済ませる。
他は…洗濯はさっき済ませたし、掃除もこの前したし、ゴミ捨てはその時一緒にしちゃったし。

残りの仕事を片付けるほどの気力は無く、夕飯の時間まではまだまだある。

じゃ、せっかくの休日だし、久々に嫌って云うほど寝てみますか。

溜め息。

詰まらないな、寂しいな、のどちらかが喉に出掛けて飲み込む。
何でそんなことぼくが思わなくちゃいけないんだよ。女々しい。

思っていたよりぼくは疲れていたらしい。それに着替えるのも面倒だ。
ほら、どんどん身体がベッドに沈んで溶けていくみたいだ。

 * * *

…ん…っ。

息が苦しい。持病のじゃないし…何だろ。
あれ、視界が真っ暗。身動きが上手く取れないし、重い。

…………。

思い切り布団を返し跳ね起きる。寝起きだったのでちょっと頭がくらくらした。
ついでにほこりが立って咳が出た。ぼくの目の前には思いっきりぼくが布団を
返す手に殴られたエドワードさんが額を押さえてうずくまっている。

「何やってるんですか」

半ば呆れた顔。疲労感たっぷりの声。

「やー腹減ったなぁと」

!!
しまったと思ってももう遅い。既に時計の針は予想を遥かに越えていて
窓の外はもう暗くて、カーテンぐらい閉めてくれたって、と思ってしまうような景色。


やってしまった。

溜め息。

「ごめんなさいエドワードさん、今すぐに―」
「いや謝らせたい訳じゃないからさまだ起きなくて良い、てか寧ろ寝てて良いぞ」
「?」
「お前さ~さっきからそんなに溜め息ばっかついてっと幸せ逃げるぞ」
「!」
「もう大分疲れ取れたか?まだだるいし眠いだろ」
「~~っ」
「そういう時には適度な運動が効果的なんだよ」
「あの―」
「オレも丁度腹減ってるし」

言葉を挟む隙を下さい!
さっきからぽんぽん驚くような言葉が出てきてぼくは正直追い付けない。
何か妙に優しいし。それに、さっきから溜め息て何?知ってたの?ずっと気にしていてくれたの?
それよりもお腹が減って丁度良いって…適度な運動って何ですか!?
そのエドワードさんの手付きでぼくが賛成しない運動だって事は良く分かりますが…ッ!



「タンマ!」
「なし」
「夕食すぐ作れますから!」
「今すぐ喰いたい」
「許してください!」
「悪いと思ってんならその身体で払え」
「何を!」
「言わせる気か?」
「っ鬼!」
「よく分かってんじゃん」
「~~っ」

あぁ、本当にこの人は猫みたいな人だ。
気まぐれで気高くて、綺麗。じゃれてくる様はなぜか可愛くて。
それに翻弄されるばかりの自分。飼い主バカなんだろうか。
やっとぼくを見てくれたことに対して「嬉しい」とか思ってる自分が意味不明。
満更でもない自分が許せない。色々な意味で涙が出そう。

「君は本当に猫みたいな人だ、気まぐれで」
「毛並み良いだろ、優しい飼い主に見付けられたからな」
「原因と結果、引っくり返すなっ」
「褒めてるだろ」
「随分ふてぶてしい猫だこと、飼われ身のくせに」
「その分ちゃんとご奉仕してやるよ」
「やめ…っ」
「頂きます、ご主人様」

猫、只今反抗期です。

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エドにゃん×飼い主リヒ!

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