INFINITY

INFINITY

たからさがし



余り上手ではないけど、かといって音痴という訳でもない。
無意識に鼻歌していたその歌を好きと云われた。
思わず口ずさんでいたので、最初は何の事だか分からなかった。
でもその歌は、昔母によく歌ってもらっていた歌。
弟を寝かしつける際によく用いた歌。そしてお前が寝込んでいる
耳元に向けた子守歌。

「なんて歌?聞いたこと、有る様な無い様な」
「これ、俺も曲名知らないんだ」
「へー、でも、なんかの童謡みたいだ」
「子守唄だって」
「エドワードさんが楽しそうに鼻歌してるの初めて聞きました」

だからその歌好きなのかも、と手をすり合わせながら空中を眺めるリヒ。
あ、確かにそうだ。今までこんな普通に鼻歌歌うなんてオレには有り得なかった。
平和ボケしているのかもしれない。

だが今でもあの恐ろしさを隣に、背後に感じる事は出来る。でも目の前には―。

「今日はなんか良い事でもあったんですか?」

優しい彼が居るから安らかな気分になれる。

「べっつに」

笑いながらそっぽ向いてちらりと彼の顔を窺う。不審そうに、それでも
楽しそうに「なんですかそれ」と柔らかい笑みを向けてくれる。

「へんなエドワードさん」
「そんなのいつもだろ」
「そうでしたね」

他愛ない時間。平和を感じる。

「あ、エドワードさん、見て見て」

はしゃいで窓の外を見詰めるリヒ。片手で空を指差しもう片手はオレを手招く。
まだ少し湿気ているがさっきよりは晴れて窓の外も明るくなっている。
雨の後のあのすがすがしさとどくとくの自然の匂い。

「綺麗、虹」

雨後には虹、何色かしっかり見えて、根元を追いかけたら触れられそうなほど
しっかりした足元。

「虹の根元には宝が埋まっている」
「へ?」
「きいたことありません?」

そんなのある訳ないのに目を輝かせて話すリヒ。そうだな、昔アルと
何処までも虹を追った事があったかな。何処まで行っても辿り着けなくて
まだ乾いていない道の跳ね返りを受けて足は泥だらけ。今度こそはと
意気込みその度母に呆れられた日々。

「宝探し、行きません?」
「は?」
「良いじゃないですか、ほら」

頭の上にいくつもの「?」をのせたままオレは手を引かれて外に出る。

「本当に信じてるのか?」
「まさか、ただ散歩しましょうってだけですよ」
「そっか」
「この台詞で散歩に誘うのって、何かカッコ良くありませんか?」

にこにこ笑いながら先を行くリヒ。足取り軽く弾む様。

「久しぶりって感じ、ずっと寝込んでたから」
「元気になったな」
「おかげ様で」

少し早足で石畳を駆けるリヒ。靴音が濡れた地面に鈍く響いて
水溜りを跳び超える。
今度元気な時には2人で大きな1つの傘差してみたいなと
思うオレはやっぱり平和ボケなんだろう。

そうだな。宝、ね。オレはもう見つけたみたいなんだけどな。

**************************
雨の日後のお話なんぞを。
私は虹の足元に宝があるって小さい頃信じてました。
どんなに探しても先ず足元に辿り着けなくてその前に虹は消えて
泥は跳ねるし疲れたし散々だーって思い出が…苦い(笑

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: