日々のあぶく?

日々のあぶく?

May 23, 2006
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カテゴリ:
ruokala lokki(フィンランド語)


「人生すべて修行」が口癖で、古武道の達人の父を持つサチエは38歳。
サチエは12歳の時に事故で母を亡くし、その後一斉の家事を切り盛りするようになり、
食物科の学校、料理教室を経て、「素朴でいいから、ちゃんとした食事を食べてもらえるような店」を持ちたいと思うようになる。
開店資金を貯めるため、弁当開発部に10年以上勤め、父のフィンランド人の門弟・ティモさんの協力も得、
自分の運の良さに賭けて当てた宝くじでフィンランド(ヘルシンキ)にひっそりと"かもめ食堂"を開く。
フィンランドに行く前日に事の流れを知った父親は「人生すべて修行」と、行事のたびに作ってくれたおにぎりを持たせ、サチエを送り出す。
開店当初、近隣の人々は「東洋人の女の子」が一人で切り盛りしている「こども食堂」と呼び、気になりつつも遠目からうかがうばかり。


最初のお客さんは日本のアニメーションに興味を持ち、市民講座で日本語を勉強し、「ガッチャマンの歌」の歌詞を全部知りたいと言うトンミ・ヒルトネンという青年(学生)だった。
早くも常連となったトンミくん以後も、近隣の人々は遠目から眺めていたが、じんわりしみこむように人が訪れ始める。
それでもおにぎりはなかなか馴染まなかった(中もんに躊躇された)が、かもめ食堂には常連さんもくるように。
「ガッチャマンの歌」の全歌詞に頭を悩ませるサチエはアカデミア書店2階のカフェでミドリと出会う。

ミドリは親の言うまま生きてきて、天下りの多い会社に就職した。
独身のまま40過ぎまでのんびりした仕事をやってきて、両親を介護付き老人ホームに入れたころ、会社が解散。
すでに家庭を持っている兄弟たちがミドリを不良債権扱いするのに腹を立て、「したいことがある」とつい発言。
外国へ行ってやろうと思い立ち、目をつぶって指で差し当てたフィンランドへきたという。
(兄弟らにはフィンランド語を勉強したいからと伝える)
来てみたが、何をしていいか見当がつかず、本屋に入ったところでサチエと出会ったのだ。

そんなミドリを(ガッチャマンの歌のお礼に)自分の家に誘うサチエ。

サチエは快くミドリを受け入れ、メニュウにイラストを入れては?という彼女のアドバイスにも耳を傾ける。
居座って、コーヒーをサービスしてもらうことの多いトンミくんに複雑な思いを抱いたり、
利益をあげるためにフィンランド人好みの具を入れたおにぎりを作るのに難色を示すサチエに思う所はあったのだが、彼女が大金を持っていることを知り(こだわりを通すだけのお金を持っている)、ミドリはサチエについていく決意をする。
様子見だけだった近隣住民もぽつぽつやってくるようになり(注文するのはフィンランドの軽食が主だったが)、穏やかに時は過ぎていく。

ある日、店内を睨みつけるフィンランド人のおばさんと、次の日には東洋人のおばさんが増えているのを見つける。

荷物が届かない不安な数日をかもめ食堂で過ごす。
彼女は独身のまま親の介護をしていたが、両親が次々に亡くなり、弟が事業に失敗し、住処を追われ、
住むところは別に確保してあり、大丈夫だったのだが、腹が立って気晴らしに介護中にニュースで見たフィンランドに行こうと決めたという。

連日、店内を睨みつけていたフィンランド人のおばさんもある日、挑むように来店し、お酒を一気飲みしてぶっ倒れる。
介抱したサチエらに彼女・リーサは夫が浮気して出て行ったこと、いつも心の中から笑っている「かもめ食堂」の人達が気になったこと、
自分はお酒がほとんど飲めず、注文したコスケンコルヴァは夫がいつの飲んでいたものだったこと、愛犬も死んだことなどを語る。
介抱をきっかけにリーサも店に立ち寄るようになり、また、マサコも手伝いを申し出る。

ある日、見慣れない、身なりもあまり良くない初老の男性が来店し、
彼を追ってきた中年の男が不穏な誘いをかける。
彼らは強盗らしいのだが―


おにぎりはその家の味がする。
形じゃなく、そこにこもる何かがある。
ロハスとか、スロウフードなんてこじゃれた言葉を出さなくても、本来、私たちが、家庭が持っていた何か、を思い起こさせる言葉だ。

「自然に囲まれている人が、みな幸せになるとは限らない。
どこに住んでいても、どこにいてもその人次第」
「周りのせいじゃなく、自分のせい」
という言葉が響く。
どこでも、今いるところ以外を羨むのはないものねだりだったりするのだろう。

おおらかで、なんだか暖かい気持ちにさせてくれる小説。
小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ出演で映画化されている。
さっぱりさくっとしているサチエは小林聡美にピッタリだろう。
マリメッコグッズも馴染んでいるそう。
とても観たい!
公開されてから大分経っているので、終わるまでには映画館に行かねば!と誓いを新たにす。





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Last updated  May 27, 2006 02:40:16 PM


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