そして今日も日は過ぎる

2005/12/04
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 最近読んだ本です。

ハル
 パラサイトイヴでデビューした、瀬名秀明の中編集です。
 題材はロボットで、ハードカバーの単行本化の時には「あしたのロボット」というタイトルで発売されていたようです。
 いやあ、これが本当に面白かった!
 一つの同じ世界観のもと、時と場所を変えロボットにまつわる物語が6編収録されており、その中編と中編の間に一つの物語の各章が挟まれることで、一冊の本としての統一感を導いています。こうした構成は実は、私、大好きでして、アイザック・アジモフの「わたしはロボット」などもこのような構成になっていて非常に読みやすく、なおかつ心地よい読後感を与えてくれました。
 特徴的なのは、現代のロボットの進化を前提とした、ありそうな近未来(それもほんのちょっと先の時代)を書いていること。ロボットを題材にしつつも、地に足がついた感覚があって心地よいです。
 瀬名秀明氏はロボットに関して相当な取材を積まれた上で書かれているようで、現実のロボット進化を念頭に置きつつ(ASIMOやAIBOなども世界観を彩っています)、アジモフやクラークなどロボット系SF作家へのオマージュも軽く差し込み、日本が誇るアトム、ドラえもんなどといった空想世界のロボット達を、随所での物語の彩りとして扱っており、これが実に良い感じです。特にアトムは、本作で特別に重要な役割を担っており、最終話などはアトムファンにはある意味たまらない作品ではないでしょうか。
 絶品です。

Brain Valley
 こちらも瀬名秀明氏の作品。上下巻に分かれた分厚い本でして、ハルが面白かったのと、本屋で独特の存在感を醸し出していたので、ついつい購入してしまいました。

 エイリアンアブダクションや臨死体験、そして神の存在を脳の観点から見据えつつ、多数のキャラクター達の抱える闇を浮き彫りにし、謎が謎を呼ぶ展開を実にテンポ良くつないでいっていますので、読んでいて引き込まれてしまいます。
 そしてクライマックス。このクライマックスのすごさはただごとではありません。久しぶりに読んでいて圧倒されるという感覚を味わいました。
 とにかく超一級の娯楽大作です。まさに絶品。ここ数年で読んだ日本の小説の中では、三本の指に入る面白さでした。
 是非とも映像化して欲しい作品ですね。スティーヴン・キングの作品のようにTVで前後編に分けて8時間くらいにして。とてもではないですが、映画化するのは難しいでしょう、尺の問題で。
 ただ、問題はあのクライマックスだよなあ。あれをきちんと映像化するのは相当難しいでしょうね。
 それにしても瀬名秀明氏の作品がこんなに面白いとは思いませんでした。パラサイトイヴは、映画がなんだかなあ、って感じだったので原作は読んでいなかったのですが、どうやらこの人の作品は、映像化するのが困難なほど圧倒的なビジュアルイメージを持っているようです。とすると、原作の方はめちゃくちゃ面白いのかも。次は、パラサイトイヴに挑戦します。





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Last updated  2005/12/04 12:01:15 PM
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剣竜 @ パク・チャヌク監督作品 ocobaさんへ その2つの映画,評価高いよ…
ocoba@ Re:殺人の追憶(03/04) 韓国映画では、パク・チャヌク監督の「オ…
剣竜 @ Re[3]:投票義務制の問題点(11/10) サムスさんへ いえいえあまりお役に立てず…
サムス@ Re[2]:投票義務制の問題点(11/10) 剣竜さんへ ありがとうございます!
剣竜 @ Re:投票義務制の問題点(11/10) ありがとうございます。 随分昔に書いたの…

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