作品置き場

作品置き場

PR

×
2004.12.27
XML
カテゴリ: 短編小説
そしてついにデートの日。
ウォードはデートの約束をした日から何事もなかったかのように毎日を過ごしていた。もとより、何考えているかいまいちわからない人だけれども。

エレナが朝起きて店の前を見てみるとウォードが一人立っていた。
朝霧の立ちこめる早朝に彼が立っているのは、もちろん待ち合わせのためでは無い。
"日課"をするためだ。
一時的にヒトをやめ、本来の甲冑になる。
左腕を前に突き出すと、腕の一部がぱかっと開き、立体映像が現れる。
何が書いてあるのかは知らないのだが、本人曰く「私の体の調子をチェックしている」らしい。
しばらく、その映像を眺めた後、ふたを閉じた。

「ウォードー。」
「なんだ?」
「朝ご飯食べる?」
「いただこう。」
そう言ってウォードは中にはいってきた。
私も1階に下りる。
おじいさんはすでに起きていて、朝ご飯の準備をしていた。
見た目には、結構お年を召している感じなのだが、しっかりした優しい好々爺というのが私の感想。
「あ、手伝います。」
「うむ、じゃあこちらはそろそろ終わるから、食器を並べておいてくれるかな?」
「わかりました。」

「申し訳ない、私も手伝おう。」
「ん~、でももう終わってるからおとなしく座ってて。」
「……わかった。」
何だか寂しそうに席に着くウォード。
程なくして朝食の支度が調った。

「あぁ、そうだったな。」
「ほう、そうなのですか。ウォードさんも隅に置けませんねぇ。」
「まったくです。」
「な、何のことだ?」
「まぁまぁ、気にしないで。」
「う、うむ。」
何だか釈然としない顔をしているウォード、ま、無理もないけど。
「ごちそうさまでした。」
早々に朝食を食べ終わって、席を立つ。
「おや、何か用があるのですか?」
不思議そうに声をかけるおじいさんに
「えぇ、ちょっと。」
とだけ、答えて。2階に上がる。
ふふふ、こんな面白い……ごほん危険なこと放っておけますか。

「エレナは一体どうしたのだろうか……何やらうれしそうに上がっていったが。」
「気になりますか?」
「はい、数日前からちらちらとこちらを見ていましたし。気になっておりまして。」
「ほうほう、それはそれは。なるほど。」
何やら一人で納得しているおじいさん。
「何か心当たりでも?」
「いやいや、気にするほどのことでもないよ、気にせずデートに行ってきなさい。」
「はぁ…。」

ウォードは待ち合わせ場所である噴水のそばでぽつんと立っていた。
……動体反応。近くに住む子供達に、動物たちに……エレナか。
一体何を考えているのか、路地裏からこちらを伺っている。
変装しているようだが、私相手にそのような物は意味はないし、何か考えがあるのかもしれない。
そんなことを思っていると、こちらに近づいてくる人が居る。
この間の少女だ。
彼女は息を切らせて、私に駆け寄り、
「済みません、お待たせしてしまいましたか?」
「いや、まだ約束の時間には早い、気にするな。」
「あ、はい。そう言えばそうですね。」
何だか照れたように笑う。
「それで、でーと、をするのはよいのだがお互い自己紹介が必要なのではと思うのだが。」
「あ、はい!済みません。私ったらうっかりしてて。」
慌てたようにぺこぺこと謝る。緊張しているようだ。
「そこまで気にすることはない。私はウォードだ、古本屋でお世話になっている。」
「は、はい。すぅーはぁ…私はミリスって言います。」
「よろしく、ミリス。で、本日の予定だが。私はでーとと言う物をしたことが無く、全くわからないのだ。なので、すべて君に任せてしまっていいだろうか?」
「は、はい!任せてください!ちゃんと今日のために計画は立ててきたんです!」
元気に答えるミリス。その姿に少し居まぶしい物を感じるウォード。私には無い物だな、こういった特徴は。
「頼もしいな。では行くか。」
「はい!」
二人は仲良く歩いていく。

「あ、あれがウォード?」
最近妙に言葉使いがよくなったような気はしていたが、あそこまでとは。最初の頃とは大違いだ。
それよりも、ミリスって、いい子だな~。一生懸命で素直だし。私なんかとは違うなぁ。
あ、移動する。尾行しなきゃ。

二人はまず、商店街にきた。
「そう言えば、このあたりにはきたことがないな。」
「え?そうなんですか?」
「うむ、エレナに「あなたに任せたら力仕事する人がなくなるじゃない」といわれてな。買い物基本的にエレナか店長がしている。」
「でも、何か買いに来たりはしないんですか?」
「あいにくと趣味と言った物が無くてな、休みの日はずっと寝ている。」
「えぇ!ずっとですか!?」
「あぁ。「半日以上寝ている人なんて初めて見た」と、店長とエレナに驚かれた。」
「た、確かにそれは驚きますよ。」
「そんな物か、ちなみにミリスは休みの日は何をしているのだ?」
「私ですか?そうですね・・・本を読んだり、あとは……・」
そう言って、装飾品店の前まで行き、
「こういったお店で宝石を眺めたりしてます。」
「眺めているのか?」
「はい、買うお金はありませんし。眺めているだけでも結構楽しんですよ?」
「ふむ、私も何か趣味を探してみるか。」
「ほんとですか?」
「あぁ、ミリスの顔を見ていたら実に楽しそうだったからな。」
すると、彼女は顔を真っ赤にして。
「え?や、やだ。じっと見ないでください。え、えと。じゃあ歩きながらお店を眺めてみて何か趣味になりそうな物を探してみましょうか!」
そう言って慌てながら、走り出す。
「前方に注意しないと転……。」
ウォードが言い終える前に、ミリスは全方を歩く人にぶつかって転んでしまった。
「きゃっ。」
すっと駆け寄って地面にぶつかる前に抱き上げる。
「あ、ありがとうございます。」
「気にするな、だが今度からはちゃんと前を見て歩いた方がいい。」
「は、はい。そうですね。」
と、答えた後。
「すみません、大丈夫でしたか?」
と、ぶつかった人に声をかける。
「い、いたたた。ほ、骨がおれた。」
「だ、大丈夫ですか!兄貴!」
「うぅ、いててててて。」
妙な痛がり方をする男に、それよりも格下と思われる男が声をかける。
「え?そんな!?」
ミリスが見るからに動揺している。
「なぁ、ねぇちゃん。治療費。払ってくれるよな?兄貴が骨が折れたって言ってるんだ。それなりに出す物出してもらうぜ?」
そう言って脅しを書ける男。
「必要ない。」
ミリスと男の間に割り込む。
「あぁ?なんだ兄ちゃん。喧嘩売ってんのか?兄貴が折れたって言ってるんだ。折れてるに決まっているだろうが!」
ウォードは倒れた男をすっと見て。
「その男に外傷は認められない。骨が折れているならば、少なくとも痣が出来るほどの衝撃があるはずだ。」
「なんだぁ!?けちつけようってのか!?」
「正論を述べただけだ。」
「てめぇ!!」
殴りかかる男の顔に平手を加え転倒させる。
「自分の言い分が通らなければ、暴力に訴えるか。まるで子供だな。」
それを聞いて、先ほどまで痛がっていた男が立ち上がり。
「へっ、兄ちゃん。おとなしく金を出していたら痛い思いをしなくても済んだのに……よぉ!」
不意打ちのつもりで殴りかかったきた男を、半身をずらして避け、首筋に衝撃を加えて昏倒させる。
そのまま後ろも向かず。
「ミリス、行くぞ。不愉快だ。」
「え?は、はい!」
ミリスは振り返ると慌ててついてくる。
二人の後ろで、何かを叫んでいたようだが、その声もすぐ収まった。

「このっ、待ちやがれ!」
立ち上がり、追いかけようとした男の首筋をがしっとつかむ。
「な、何だ……ひっ!?」
振り返った男が見た物は、鬼のような形相をしたエレナの顔だった。
「……いま、何をしていたのかな?」
静かにエレナは男に問う。
「ひぃ!?、す、済みません!?」
おびえきった表情で後ずさろうとするが、しっかりと捕まれているため、逃げられない。
「もう二度と、悪いことはしませんって言ってたのは嘘だったのかな?」
「……それはその。」
「問答無用♪」
鈍い音と共に。崩れ落ちる男。
「やれやれ。懲りてないんだから。」
埃を払い立ち上がる。
二人は楽しそうにデートをしているようだ。
もっとも、何もしなくてもウォードの実力があればたいていのことなら何とか出来るだろうけど。
でも、何だか気に入らない。何だか変だ。
今までウォードがさっきみたいに話してくれたことはない。
絶対に何かある。
「一体何を隠してるの?ウォード……。」

エレナの独り言は、ウォードは聞き取れていた。
なかなか鋭い。だてに長生きしてないな。
感心する。目の前の人物は、楽しそうに前を歩いている、何かに気づいた様子はない。
普段は使わないのだが、人の姿になれる軍用兵器である彼にとって、人の真似をするのは機能の内だ。
完全な人の姿がとれるのならば、敵の土地にこっそり侵入して破壊活動をする事も、容易と見られたからである。
実際にその機能をでーとの為に活用するとは思わなかったが。
ただ、楽しそうなミリスの顔を見て、この機能も捨てた物ではないと思うのだった。

楽し時間はあっという間に終わり、デートも終わりを向かえようとしていた。
「今日は楽しかったか?」
「はい。楽しかったです。ウォードさんは?」
「私も、楽しかった。こう言う休日も悪くはない。」
「よかったです。」
そう言うと、くるりとミリスは後ろを向く。
「どうした?」
「私、ウォードさんのことが好きです。つきあってもらえますか?」
ウォードはしばらく沈黙した後。
「済まないが、君の彼女にはなれない。」
「そうですよね、私なんか……。」
「勘違いするな。君に魅力がない訳じゃない。ただ、私たちは、いつかこの町を出て行く。今日か、明日か、その後か。二度とこの町に戻ってくるかもわからないし、だから。」
「だから?」
「私の友人になってくれないか?こう見えても私の友人はエレナだけだ。だから……。」
「いいですよ、私、ウォードさんのお友達になってあげます。」
「ありがとう。では、帰ろうか。我が友ミリス。」
そう言って手を差し出すウォード。
「はい、そうしましょうか。」
くるりと振り返り、笑顔でその手を取る。
そして、ウォードの初めてのデートは終わった。

その様子をうかがっていたエレナ。
あらあら。女の子泣かせな性格してるなぁウォードって。
ミリスは泣いていなかったが、きっと心の底では泣いているだろう。
まぁ、しょうがないことではある。
世界を見て回る、と言うことは、いつかはここを旅立たないといけない。危険がないとは言えないし、この後どうなるのかもわからない。そんな状況で、軽はずみな事は出来ない。
かわいそうだけど、しょうがないことではある。
そんな風に思っていたエレナだが、内心ほっとしていたことには気づかないのであった。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2004.12.28 01:49:35
コメント(1) | コメントを書く
[短編小説] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:ウォード、初めてのデート。(12/27)  
柳生桜夜 さん

…も…萌え殺す気ですか輝士都さん~(@Д@; 
今朝うっかりバイト先で読んじゃって思わず悶えまくって、周りの人から白い目攻撃集中砲火を受けましたから!!残念!!(自業自得)
…いかん~テンションがまだ変~~
…けど途中から突然エレナ視点になってちょっととまどったりσ(^_^;)
ああでもかっこいいよう可愛いようウオードたんO(≧▽≦)O
べたべたないいがかりつけてくるにーちゃん2人にへの対応とかがもう。しんぼうたまりません。
「日課」とかも~~~O(≧▽≦)O
ところでウオードたん人間時のときの髪の色と瞳の色って…?どっか描写ありましたっけ(汗汗
私は普通に銀髪に黒曜石の如き黒い瞳のイメージで読んでましたけれども…違ってたら修正よろしくです<(_ _)>
ちゅか、ウォードたんて…これがホントの人型機動兵器…(違
しかも素で女の子泣かせ回路搭載中だし…
げふげふ…今回も良いお手前で…<(_ _)>
おなかいぱーいでございましたO(≧▽≦)O
…ライバルロボとかでてきません?やたらタカビーでキザ山キザ夫みたいなのとか(おひ) (2004.12.28 23:57:46)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: