グランマの手料理レシピ

2023年01月12日
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カテゴリ: 卵料理
​​​​​お豆腐入りの茶碗蒸しに缶詰のホタテを入れると美味しくなります。
卵液は裏ごしすると滑らかに仕上がり、ノド越しもよいです。

​豆腐入り茶碗蒸し​


豆腐      1/2丁
ほうれん草   1/4把(塩茹で)
ホタテ缶    1缶(95g)
卵       2個
姫なると    少々

【調味料】水    1カップ
     酒    小さじ2
     醤油   大さじ1
     塩    小さじ1/2

1.豆腐は4等分に切り、ペーパータオルで包んで10分ほど置き、水切りをする。ほうれん草は3cm長さに切り、缶汁とホタテを分けておく。

2.ボウルに卵を入れ、白身を切るように溶きほぐす。【調味料】とホタテの汁を加えて卵液をつくり、ザルでこす。

3.耐熱用器に、豆腐、ほうれん草、姫なると、ホタテを入れて卵液を注ぎ、アルミ箔でフタをする。

4.器を蒸し器に入れ、フタをして2分ほど中火で蒸し、弱火にして17~20分ほど蒸す。卵液に竹串を刺し、透明な汁が出たら完成。

※蒸し器の代わりに大きめのフライパンに水を張ってもつくれます。



ブログ連載 長編時代小説 ​ 密かごと
第1章 料理茶屋【梅乃井】

4.宴席

「急なことで悪(わり)いな」
さちは、北組の木更津船惣代の伊勢屋九兵衛から急きょ、宴席を頼まれた。
七つ時(午後4時)を過ぎていたが、伊勢屋は梅乃井を贔屓にしてくれる大事な客だった。
「何人様でございますか?」
「4人だ。御船手と込み入った話があってな」
「まあ、御船手の方が、お調べに来られているんですか」
幕府水軍の御船手組、向井将監配下の侍が定湊廻りと称し、年に何度か木更津浦を訪れる。木更津船(五代力船)や押送船の艘数、諸国からの廻船の状況などを調べた後は、南北の木更津船惣代たちが持て成すことになっていた。
「いや、お調べとは違うんだ」
伊勢屋九兵衛は難しい顔をした。
「承知しました。4人様のお席を用意して、お待ち申し上げております」
梅乃井にとって御船手衆は上客であった。
さちは早速、真吉に料理の用意をするようにと指図する。

真吉は仲片町の魚店に出向き、残っていた大振りの黒鯛を分けてもらってきた。
豆絞りの手拭いをねじり鉢巻きにし、晒しに包んであった庖丁を取り出すと、黒鯛のうろこを落とし、半身におろしてから熱湯をかけ、霜降りにした。
「急かせて悪いわね」
さちは真吉に言葉をかけ、客を迎える支度をし、料理が出来上がるのを待っていた。
「黒鯛は松皮造りにして、梅醤油で食してもらおうかと」
「梅醤油?」
さちが聞き返すと、清蔵親方が上方の鱧(はも)料理にならって、黒鯛の松皮造りにも梅醤油を使っていたことを思い出し、梅醤油を使ってみることにしたのだという。
「黒鯛と梅も相性がよいんです」
そう言いながらも手は休めず、裏ごしにかけた梅を酒と醤油でのばしている。
「そう、それじゃ、頼みましたよ」
真吉に任せることにして板場を離れると、
「おばばさん、お客様が・・・」
佳乃に呼ばれて玄関に向かった。

北組の木更津船惣代の伊勢屋九兵衛が、
「御船手同心の菊地様です」と、さちに客を紹介する。
「菊地様?」
さちの表情が変わった。
「菊地弥太郎でござる」
四十前後だろうか、立派な体格といい、精悍で気迫に溢れた風貌をしている。さちは動揺を隠すように精一杯の笑顔で迎える。
「ようこそ、おいで下さりました」
「追っ付け、鶴田屋さんが来るから、来たら通してくれ!」
木更津船は北組と南組に分かれている。鶴田屋六右衛門は南組の惣代だった。

佳乃は御船手と知って、出来上がった黒鯛の刺身を運ぼうとした。
「わたしが運ぶから、お前は下がっていなさい!」
さちは佳乃の手から強引に盆を奪い取った。
「手伝おうとしているのに・・・」
「いいから、さあ、早く、さがって!」
さちは佳乃を遠ざけるように追いやった。

南組の鶴田屋六右衛門が、薪や炭を商う薪炭商(しんたんしょう)の江尻屋仁平衛を伴って現れた。
「わざわざ、ご足労いただき、有難うございます」
鶴田屋六右衛門が、御船手組同心の菊地弥太郎に挨拶をした。
「たまたま木更津に立ち寄ったところ、話があるというので、帰りを一日延ばしただけだ」
菊地弥太郎は、異国船来航に備えて造られた『富津台場』と『竹岡台場』の見廻りを終えた帰りで、南北の木更津船惣代からの申し入れに応じてくれた。
「ところで、話というのは何だ?」
菊地弥太郎は黒鯛の刺身に箸をつけると口火を切った。
「実は、江戸へ向かっていた木更津船が富津沖に流され、座礁したんでございます」
北組の伊勢屋九兵衛が話しはじめる。

座礁した船は北組の善十郎の持船で、久留里藩の年貢米16俵を積んでいた。
久留里藩の居城は上総丘陵のほぼ中央に位置し、藩主は黒田豊前守直静(なおちか)で3万石の大名だった。
善十郎は座礁した船の代わりを頼もうとしたが、北組の他の船は修繕中で、南組の木更津船も皆出払っていた。仕方なく、久津間村の五大力船の船持の栄次郎に頼み、木更津浦まで運んでもらった。
ところが、栄次郎は積荷をそのまま自分たちの船で江戸まで運ばせてくれと言い出した。
「江戸への海渡(かいと)輸送は、幕府から与えられた木更津船だけの特権ではないのか」
御船手同心の菊地弥太郎がいった。
幕府は大坂冬の陣に貢献した木更津の水主たちに特権として、江戸と木更津間の輸送権を与えていたのだ。

久留里藩の積荷は、年貢米と下谷広小路の上屋敷に届ける薪90束と畳表1包のほかに、日本橋の薪炭問屋に届けるよう依頼された薪300束があった。
「実は、その薪300束は手前どもが・・・」
南片町の薪炭商の江尻屋仁平衛が、北組の善十郎の木更津船に頼んで載せてしまったのだ。
木更津船の積荷は争いが起こらぬように、南片町の商人の荷は南組の船、北方町の商人の荷は北組の船が請け負うことになっていた。
久津間村の栄次郎は座礁した北組の船に、南組の荷があることを知って、木更津船が北組も南組も関係なく荷を運んでいるのだから、自分たちの五大力船が江戸まで運んでもよいのではないかと揺さぶりをかけてきた。
「それで、運ばせたのか?」
「いえ、断りました。ちょうど、安房から戻ってきた北組の木更津船が江戸へ向かうことになっていたので、その船に乗せました」
「そなたも木更津村の商人、船持仲間の決まりを知らぬわけではないだろう」
御船手同心の菊地弥太郎に叱責され、
「つい、うっかり、申し訳ございません」
薪炭商の江尻屋仁平衛が神妙に頭を下げた。

「然らば、何が問題なのだ」
「久津間村の近ごろの動きにございます?」
「動き?」
「久津間村では小櫃川河口に、新たに船留場や荷揚場を整えようとしています」
南組の鶴田屋六右衛門が言った。
「何故に?」
「川舟で木更津浦まで薪を運ぶのは難儀だと言いまして」
久留里川(小櫃川)上流から下った川舟は、面倒にも河口で五大力船に荷を積み替え、木更津浦まで運んでもらっている。それを木更津船が江戸まで渡海輸送をしていた。

久津間村の栄次郎は荷の積み替えは面倒であり、自分たちが直接、江戸へ運べば手間が省けると、五大力船を増やしたり、河口に船留場や荷揚場を整えようとしていた。
「栄次郎は五大力船の新造を木更津村の船大工に頼んできたそうでございます」
北組の伊勢屋九兵衛が状況を説明した。
「それは川船のご支配下で、お役目違いだ」
御船手同心の菊地弥太郎がやんわりとかわし、
「いつまでも木更津船の特権にこだわっていると、特権お取り上げということもある。ここは騒ぎ立てずに、そちらで内々で話し合うがよかろう」
菊地弥太郎の言葉で久津間村の件は締め括られた。

「梅醤油でいただく、黒鯛の松皮造りは如何でございましたか?」
さちは、頃合いを見はからって座敷に入った。
「ああ、美味しくいただいたよ」
御船手の菊地弥太郎は、真吉が品よく仕上げた煮しめも美味そうに食べていた。
「あの、菊地様のお父上様のお名前は・・・」
さちは聞かずにはいられなっかった。
「菊地彦十郎と申すが?」
「やはり、そうでございましたか」
記憶の底にある男の面影が、さちの脳裏をかすめる。

「父を知っているのか?」
「はい、以前、お見えになられたことが」
「そうか、御船手の同心だった父も見えていたか!」
「たしか、向井流の泳ぎの達人でおられましたね」
「ほう、よく存じておるな」
「こちらにお見えになられたとき、拝見したことがございます」
「父は、向井流泳法の指南役だった」
「お父上様は、御健勝であられますか」
「3年前に、肝の臓を病み、他界した」
「左様でございましたか、それは存じ上げず、失礼いたしました」
<菊地彦十郎様が亡くなられた!>
忘れたはずの、いや忘れることができない彦十郎の面影がさちの胸をよぎった。(つづく)
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Last updated  2023年01月12日 09時09分20秒
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