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結局父の病名が確定したのは、大量下血の夜より1週間後
2009年9月3日木曜日の事でした
何と言おうか、医学は進歩の一途だと思っていた私は
まさか医者からこの病気の疑いがありますと言われてから
確定するまでに1週間もの時間を要するとは夢にも思っていなかったのですが
取りあえず病名確定までの1週間と言うものは
病院側としても父の病気の原因を突き止めてやろうと懸命で調べてくれていたとは思います。
私自身もまた、心のどこかでは間違っていてくれという思いを持ちながらも
懸命にHTLV-1と成人T細胞白血病リンパ腫の事を調べていました。
手当たり次第に色々なサイトを読み漁る毎日でしたが、
ほんとに読めば読むほど、調べれば調べるほどに
難解な病気で、説明してくれている単語が難しすぎて (もちろん日本語よ)
意味不明な単語にぶち当たってはまたその単語の意味を調べる。。。
本当に学生時代にこのくらい真剣に勉強していたら…人生変わっていたかも
ほんと、この時ばかりは美容院勤めではなくて病院勤めの人生を選べは少しは楽だったかなと思ったりもしました (よく間違われるけど一字違いで大違いです)
それでもおぼろげながらに
白血病=骨髄移植
なんてことは、高齢者は既に除外で
主治医が言っていた 骨髄移植はないです
と言う言葉は
父の病気に骨髄移植は必要ではないと言う事ではなく
50歳以上で白血病を発症した場合、既に骨髄移植は対象外で
70歳で造血幹細胞移植などの残された全ての移植の対象外となり
80歳を目前に控えた父に残された治療法は抗がん剤による化学療法だけと言う事が理解できたのです。
でも、あの時の父の状態で過酷な化学療法に耐えるだけの体力が残っているとは到底思えず、祈るは 父がどうぞこの厄介な病気でないように
と願う事しかなかったように思います。
そんな私のはかない願いを見事打ち砕いてくれた夜。
いつものようにベッドとトイレの往復を繰り返す父の介助をしていると
主治医のD先生が現れ、私は父を残してD先生と一緒に病室を出ました
D先生は
時間がかかってしまいましたが、やっとお父様の病名が判明しました。
本当に残念ですが
お父様のご病気は、やはりHTLV-1ウイルスから発症する白血病でした。
本当に申し訳ないのですが
ここからは私たち消化器内科では、お父様にしてさし上げられる事は何も無いので
今後の治療に関しては血液内科に移って、別の主治医の元で治療にあたって頂く事になります。
本当になんのお力にもなれなくて申し訳御座いませんでした。
本当にもっと早くにご病気を見つけてさし上げられればよかったのですが
この病気自体大変珍しい病気で、病気を見つける事が極めて困難で、また病気確定までにも大変時間が掛かります。
と言うような事を言われたと思います。
私はこの1週間で、このHTLV-1と言うウイルスのキャリアである事を知っていないとこの白血病、成人T細胞リンパ腫を見つけることがいかに困難であるかと言う事を充分理解していて、この病気を発症しながら病院や医師がこの病気の知識がない為に原因不明のまま本当の原因を知らずに命を落としている人も、結構いると感じていたので、この非常に見つけにくい病気の名前をこの時点で確定して頂けた事にはとても感謝しました。
D先生はお話の最後に
「お父様には告知なさいますか?」
と、言われましたが
私は即座に首を横に振り
「いえ、告知はしないで下さい。父はすでにせん妄症である程度理解力は低下していますが、それでも癌は治癒困難な病気だと理解できるだけの知恵は残っています。今の状態の父に白血病や血液の癌などと告知すれば生きる気力を無くしてしまいます」
「それではお父様にはなんとお伝えしましょう?」
私は少し考えて
「いっそのこと、成人T細胞リンパ腫と本当の病名を言って下さい。」
と言いました。
せん妄症で身体もひどく弱っている父にこの病名を理解する能力は残っていないでしょうが、単純なごまかしの病名は感のいい父には通じないと思え、仮にもし父が健康な頭の状態だったとしても、80歳前の老人が、専門医でなければ言いよどんでしまうこの病名を理解する事は出来ないだろうと思ったからです。
ところが
医者は私の言葉をどう理解したのか、父に 白血病
と告知していたのです
しかもご丁寧に 血液のがん
であると
で、医師か白血病の告知を受けた父は、私の予測通り
血液のがんがどういうものかしっかり理解していて
その事を父の口から聞いた私は、本当に驚きましたが
「私の人生、一巻の終わりやな」
「がんとちゃうで」
「白血病は癌と違うよ 渡辺謙と同じ病気やん」
「渡辺謙はちゃんと病気倒して元気に仕事してるやん」
「悪いけど、お父ちゃんは簡単に死ねるような病気と違うよ」
「これからの治療はちょっとしんどいけど、また元気に旅行にも行けるよ」
ほんと、今これ書いてて泣けてきますけど
父は私のこんな単純な言葉を信じたのかどうか
ほんまやな
あんたがそう言うんやったら
お父ちゃんまだ死なへんな
また飛行機乗ってどっか行きたいなあ~
と、呟いていました
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