五台山竹林寺の寺院では、白檀のお香を焚いている。
普通に参拝される人やお遍路さんが、心穏やかにお参りできるように日中はできるだけ絶やさない。
お馬は「よく気がつきましたねぇ」と匂い袋を懐から取り出し、顔の前でヒラヒラと揺らして見せた。
慶全は「そりゃあ、うちで使っているお香とは種類が違うきねぇ。」と自慢気に言った。
「そうやね。あたしのは、白檀じゃなくて伽羅やからね。」
おまちのはりまや橋に出ていた小間物屋で買ってきたという。
土佐藩主も15代山内容堂の頃になると、おまちの様子もすっかり変わっていた。
私設の橋であった、はりまや橋も藩でお抱えの橋となり、町割りが変わったことにつれて橋の幅も広くなった。
そうなると、橋の両脇には「17文屋」という小物を中心に売っている店が並ぶようになる。
その中のひとつに、サンゴの小物や匂い袋を売っている店が出ていた。
「ひょっと、これが白檀の入ったお香やったら、気がつかんかったかもしれんねぇ。」と意味ありげに言った。
「そうかもねぇ。うちのお香は白檀やき、鼻に浸みこんじゅうき。」と鼻をつまんでいった。
「ふふふ」と笑いながら、小さく頷くお馬がいた。(つづく)
直接のご意見、ご感想はメールでお願いします。 こちらのメールアドレスまでどうぞ