白鳥の恩返し?



 むかしむかし、最上川河畔のある村におじいさんとおばあさんが住んでいました。
 おじいさんは以前、村の集団検診で、中性脂肪と肝機能で引っ掛かって以来、おばあさんとウォーキングに励んでいました。
 そんなある日、おじいさんは川上から、まだ灰色の若い白鳥が流れてくるのを見つけました。

おじいさん:「おや、可哀想に・・・死んでるのかな?」

おばあさん:「とりあえず陸に上げましょう」

二人が白鳥を抱き上げると、ちょっとだけ首をもたげて、かすかに鳴きました。

おばあさん:「まだ生きてますよ!!」

おじいさん:「保護の会の人を呼んでくる!!」

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保護の会の人:「御連絡ありがとうございました。あとは当
        方にお任せ下さい」

 こうして若い白鳥は保護の会の人に引き取られて行きました。白鳥は、愛くるしいつぶらな瞳で保護してくれた二人をずっと見つめていました。二人はほっと胸をなで下ろし帰宅しました。

 それから数カ月後の夜半に、おじいさんとおばあさんの家のドアを誰かがノックしました。

おばあさん:「誰でしょうねぇ?」

おじいさん:「回覧板にしては遅い時間だしねぇ」

 二人が玄関に出てドアをあけると・・・。
この寒い季節にプリマチュチュを来た若い女の子が立っていました。(白鳥の湖の衣装を想像して下さい)

 女の子 :「おーっほっほっほ!!白鳥麗子でございま 
      す!!」

 二 人 :「・・・・!!」

 女の子 :「(ヤバい!シャレが通じない!しかも引いて
      る)あ、ああ、嘘ウソ・・・気悪くした?」

 二 人 :「あの・・・どちらさんで?」

 女の子 :「失礼致しました、私、以前こちら様にはひと
       かたならぬお世話になり、せめて何か御恩返
       しができないものかと思い罷り越しました次
       第でございます」

おじいさん:「わし、よう知らんが?ばあさん知っとるか
       ね?」

おばあさん:「私も知りませんねぇ・・・?」

 女の子 :「まあ立ち話もなんですから・・・」

 二 人 :「(いや、あんたが言うな!)」

こうして奇妙な女の子は二人の家に上がり込んでしまいました。そして、
 「私がいいと言うまで決してこの戸は開けないで下さい」
と言うと、奥の部屋に入って行きました。

おじいさん:「これってどこかで聞いたことないかね?」

おばあさん:「『鶴の恩返し』ですねぇ、まるで」

おじいさん:「わしゃ鶴を助けた覚えないがね」

 二 人 :「ひょっとしてあの白鳥かな!?」

 鶴は自分の羽をむしって美しい反物を織り上げましたが、奥の部屋から機織りの音は聞こえません。二人は白鳥が何をしているんだろう、と思って奥の部屋を覗きました。すると・・・。
 レオタードに頬被りをした「ねずみ小僧」の様ないでたちの娘が反物を抱えて勝手口から入ってくるところでした。

 女の子 :「見てしまったのですね?」

 二 人 :「それよりその反物・・・ふつう自分で織るん
       じゃ・・・?」

 女の子 :「鳥の私に無理言わないで下さい、抱えて来る
       だけでもしんどいんですから」

おじいさん:「そりゃすまんかったね」

おばあさん:「いや、そうじゃなくて!」

 女の子 :「見られてしまった以上ここにいるわけには参
       りません」

 そういうと女の子は白鳥の姿になって飛んで行ってしまいました。

 二 人 :「おお~い!ちょっと待て!もとの場所に返し
       てから行け~!!」

 困ってしまった二人は駐在さんに反物を届けました。すると・・・。

 駐在さん:「こっ・・・これは、県警本部に報告しない     
       と!!」

おじいさん:「県警本部!?」

おばあさん:「私達、なんかヤヴァいことになってるのかし
       ら?」

 二人はパトカ-に乗せられ、県警本部に連れてこられました。いよいよお縄か?冤罪だよ~(T-T)と天を仰いだその時
県警本部長がやって来て、二人の手をがっちり握って言いました。

 本部長 :「御協力ありがとうございました。あれは広域
       窃盗団が隠していた人間国宝の作品で、犯人
       の何人かは検挙していたのですが、口を割ら  
       ないもので、困っていたのです。付着してい
       た毛髪が一致しましたので言い訳もできない
       でしょう。白鳥の羽毛の一部が付着していた
       ので、最上川の河口付近を当たったところア
       ジトを発見できました。盗品も大半がもとの
       持ち主に還ることでしょう。本当にありがと
       うございました」

 感謝状を押し付けられた、おじいさん達が目をパチクリさせていると、問題の反物の製作者が現れ、二人に礼を言うと、「ほんの気持ちだ」と、自分の最高傑作ともいうべき作品を二人に贈呈したいと申し出てきました。
「そんな滅相もない、結構です、お気持ちだけで充分です」という二人の言葉を遮って、目にも鮮やかな金襴緞子の反物を二人に押しつけて行きました。これってやっぱり白鳥のおかげなんでしょうか?

おじいさん:「ま、結果オーライかの?」
                     <終わり>



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