シンデレラ・5



シンデレラ:「えっ!?」

王子:「実はこの舞踏会は、父が仕組んだ私の婚約発表パ-テ
   ィ-のはずだったのです」

シンデレラ:「まあ!あの・・・、でも」

王子:「私の母はプロイセンのリヒトシュタイン候爵と外戚
   関係にあたります。その侯爵の娘のモニ-クと、私を
   政略結婚させようというのが父上の肚なのです。そう
   すれば父はプロイセンの強大な軍事力が得られると 
   思っているのです。侯爵はヨ-ロッパ第2位の産出量
   を誇る我が国の金山や銀山の採掘権を要求してくるで
   しょう」

シンデレラ:「まあ・・・」

王子:「しかし、貴女の出現で、父の思惑は揺れ動いている
   ことでしょう・・・。我が国を遙かに上回る黄金郷の
   姫君とあらば、プロイセンどころか欧州の全てを傅   
   (かしず)かせることも可能なのですから・・・」

シンデレラ:「いや・・・ですから私は・・・」

王子:「でも、私にはすでに心に決めた人がいるのです。王侯
   貴族ではない市井の民ですし、思いを告げたことさえ
   まだないのですが・・・」

シンデレラ:「ええっ!?」

王子:「全てを捨てる覚悟が私にあれば・・・ああ、異国の方
   に長々と愚痴を言ってしまいました。申し訳ありません。
   なんだか貴女といると心が安らいだものですから」

結局、何も言えないまま貴賓室から退出したシンデレラを、二人の魔女が待ちかまえていました。良い話を期待していた二人はシンデレラの表情から、それが実らなかったことを察知しました。

シンデレラ:「さあ、お母様達が戻らない内に帰りましょう」

「納得いかない!」という顔で何か言いたげなジニ-をイライザが制しました。実際に辛い思いをしたのはシンデレラのはずなのだから・・・。それでもシンデレラは、

シンデレラ:「二人ともありがとう。色々あったけど楽しかった・・・。私
      今夜のこと、一生忘れない」

 と二人に精一杯の笑顔で言いました。
たったこれだけのことで「楽しかった」なんて・・・、何だかジニ-は泣きたくなりました。

つづく

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