シンデレラ・エピローグ



エゴノワ:「イリーナって毎日こんなことしてたの~(ノ_<。)」

ブコロスカヤ:「忙しくて死んじゃうわ!今からでも呼び戻しましょうよ!」

ニクラシコワ:「あら!ダメよ~!我が家の金の成る木じゃな~い!オ~ッ
       ホッホッホ!」

 そこで継母はフランク王国から実演販売の達人であるセバスチャンを番頭としてスカウトして来ました。

 セバスチャンはイリーナの残した収支仕訳表や総勘定帳を見てしきりに「ボン!(いいね!)」を繰り返していましたが、顧客リストの備考欄に、家族構成やその人の嗜好、年の暮れに何を贈ったかまでが記入されているのを見たとき、思わず「セ・ボン!(こいつはいい!)」と叫んでしまいました。後の世に、この「セ・ボン」が転じて、暮れのご挨拶を「歳暮」と言うようになったことはあまり知られていません(なんせ作り話ですから・・・(;^_^A )

セバスチャン:「う~ん・・・、お嫁に行かれた娘さんはトレビア~ンです
       ねマダ~ム。これ程のしっかり者ですから、よほど手塩にか
       けられたのでしょうネ~?」

 イリーナの献身的とも言える仕事ぶりは家族の愛に応えるため・・・、そう思っていたセバスチャンの問いに、継母達はバツが悪そうに下を向いたり、目をそらしたり・・・。商売の達人の慧眼はそれを見逃しませんでした。

セバスチャン:「この店は、このマドモアゼ~ルの人柄で持っていたんです
       ネ~。消費者本位の理念と愛がない店はいずれ傾くでしょう
       ネ~・・・。機を見て独立するのが賢明なようデ~ス」


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 3ヶ月後、王城に向かって走る3人の人影がありました。継母や義姉達です。
 1月前に番頭のセバスチャンが顧客リストを持って出奔し、隣町のピュア・ウォーターで雑貨屋を開きました。その名もジョルジュ・セバスチャンの「シンデレラ商会」です。

 イリーナ商法と、セバスチャンの小気味のいい実演販売がウケて、ドン○ホーテも真っ青の大盛況ぶりで、「老舗ブランド」にあぐらをかいていた「ラザイエフ商会」はあっという間に左前になってしまいました。

 娘が嫁いだ王子様の取りなしで「王室御用達」の看板が掲げられれば、この窮地を打開できるかも知れない、という一縷の望みを抱いて王城に駆けつけると・・・、

門番:「何が王室の外戚だッ!クラウス王子は既に爵位も王位継承権も返上
   して王室を退出されたのだぞ!世迷い言も大概にせんか!!」
と、一喝されてしまいました。
「そんな・・・(〇o〇;)」3人はその場にへたり込んでしまいました・・・。


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 一方、エドワーズ国王も斜陽の時を迎えていました。

エド:「ウソじゃ~!!何故じゃ~!!どうしてじゃ~!!こらー!!出
   せー!!出さんか~!!出さんと泣くぞ~!!おお~い!誰か~!」

 王妃がみまかられ、クラウスもいなくなり、誰も諫める者がいなくなった国王は以前にもまして傲慢になり、つまらない課税を思いついたり、ゲルマン系の国民が多い国勢も考えず、全員強制的に自分と同じ英語名に変えさせようとしたり、気に入らない官僚にすれ違いざまに「にぎりっぺ」をかましたり、とむちゃくちゃになって行ったのです。
 娘婿のミュンヒハウゼン公爵は、民衆の武装蜂起を恐れて故郷のオーストリアに妻を連れて帰国してしまいました。
 そして公爵の危惧どおり、たった今、武装蜂起した銃士隊によって国王は王城の地下牢に幽閉されてしまったのです。


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 それから20年後、遙か北の大地に人口15000人の小さな立憲君主制の王国が誕生しました。初代国王に推戴されたのは、弱冠39歳の青年実業家でした。
 たった12本のリンゴの苗木から、実り豊かな38万坪のリンゴ農園にまで発展させた青年の手腕と植物への造詣は、農園の一角で行われてきた生薬栽培によって、この地域の医学薬学の発展にも寄与していました。
 また、収入が不安定な開拓民でも安心して診療が受けられるようにと自らが出資して診療所を開くなど、ここで働く人達の健康増進に少なからず貢献してきたことから、多くの人々の尊敬と信頼を集めていました。
 人々は、人品いやしからぬこの青年を「もとは名のある貴族の出だろう」とか「どこかの国の王子様だったんじゃないか」と噂し合ったものでした。
 そして、貧しい頃からその青年を支え、静かに寄り添う妻の優しい笑顔は、寒さに耐えて開拓を進めてきた領民にとっても心の支えでした。
やがてこの妻は「建国の母」と呼ばれるようになります。

 領民の4分の3がリンゴ農家を占める、若き国王を奉戴するこの国の名は「アップフェルラント」・・・夢と希望に満ちた、美しい国です。


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