第六章~solitude5



 マガンとカダージがヤシの木に吊されています。
自分から進んで飲む筈のないラーズが大暴れする程泥酔したのはこの二人が嫌がるラーズに無理矢理飲ませたから・・・ということがバレたからです。

マガン:おお~い!降ろしてくれよぉ!なぁ~!なあってばぁ~~~~~!!

マジャホ:しゃらうるしゃー!こんコゾー!!コー!このコブん見えにゃーだ
     か!やあ!(うるせえ!この野郎!!見ろ!このコブが見えねえの
     か!おい!)

マガン:暴れたのはスクナじゃねえかよ~!

マジャホ:ちょれー!我んちがスクナに酒くれたずら!?(アホ!お前らが“ち
     び”に酒飲ませたんだろ!?

カディール:カダージ!お前、逆さに吊してもらった方がめぐりが良くなるん
      じゃないのか?しばらくそうしてもらったらどうだ?

カダージ:父さ~ん・・・(T^T)

 その頃ラーズはローブを脱いでノースリーブのアンダーシャツ姿で頭を消毒してもらっていました。

ラーズ:あたたたたたたた!しみる~~~!!

キサラ:ごめんなさい!痛いですか?

ラーズ:あっ!いえ・・・自業自得ですから(´ヘ`;)

リク:しっかし黒いな~。見事に黒いな~。紺色に見えるくらい黒いや。

マナ:リクちゃんあんまり「黒い黒い」言わないであげて・・・。お兄ちゃん
   それって結構トラウマなんだから。

ラーズ:マナ、いいよ。

リク:えっ?あっ!ゴメン・・・、何だか漆器みたいで綺麗だと思ったんでつ
   い・・・(¨;)何かあったの?

マナ:あのね~・・・。8才ぐらいの頃に同級生のお母さん達に「あの髪の毛
   は烏みたいで気持ち悪いからあの子と遊んじゃダメ」とかね「あの闇夜
   みたいな瞳は冥界につながってるに違いないんだから目を合わせちゃダ
   メよ」って陰口言われちゃったのよね。

ラーズ:もういいって。今はリクがいてくれるし、カダージとも何とかやっ
    て行けそうだしね。

リク:・・・そうだったんだ・・・知らなかったとはいえゴメンな~(; ;)

 そうだったんです。ラーズがピロテーサの里子になって(イエルカに行って)5年くらい経って初等教育のために塾に通い始めた頃、第1市街のハイソな方々(心ない大人達)の偏見で、ラーズには友達がいませんでした。
 井戸の周りで独楽回しに興じている子ども達を見つけて「仲間に入れて」と寄って行くと、子ども達は恐怖に歪んだ顔で、「わーっ!ウェルテ・グガ(烏人間)だーっ!!」と叫んで逃げてしまいました。

 そんなことが何度も続き、家に帰って少しでも髪の毛の色が落ちないものかと狂った様に頭を洗っていたら、ピロテーサが泣きながら「もういいよ、あんたちっとも変じゃないよ!そんな子とはこっちが願い下げだって言っておやり!」と抱きしめて来たことがありました。

 とはいうものの「仲間はずれ」って辛くて切ないものです。
 甲高い奇声を発しながら、鬼ごっこやかくれんぼに興じる子供達を、遠くから羨ましそうに眺める毎日・・・そんな頃に、肩を叩いてにっこり微笑んでくれたのがリクだったのです。リクもまた、寂しい鍵っ子でした。

ラーズ:泣くことないじゃんか!

キサラ:・・・(T^T)

ラーズ:キサラ姉さんまで!もう気にしてないし大丈夫だよ~・・・ねっ?

ミュカレ:う~ん、王都の連中も困ったもんじゃのう。第2市街ならそんなこ
     ともなかったかも知れんがのぉ。しかしお前さん、民族的にはさし
     ものワシもお目にかかったことがないタイプじゃよ。

リク:そうそう、前から聞こうと思ってたんだけどさ、「ラーズ」ってどうい
   う意味なんだ・・・?この国の言葉じゃないよね。

ミュカレ:22年くらい前じゃったかの~・・・そんな名前のセージがおった
     よ。ティアマトの国のセージじゃったな~。
      ソルダムというサリエスと、その妻・・・え~と、何て言ったか
     の~・・・。スーリアじゃったかの~・・・?その3人で、11人
     の悪玉サリエスと闘って8人までを成敗したんじゃ。3人の悪玉サ
     リエスはどこかへ逃亡してしまったがの・・・。彼らもその時の傷
     がもとで死んでしまったんじゃ。可哀想にのう・・・ラーズはまだ
     18才・・・セージになったばかりだったそうじゃ。
      だがの、母親は生きておるよ。ピロテーサとか言ったかな?ソル
     ダムの息子を連れてイエルカに亡命して来たんじゃ。

ラーズ:ピロテーサ!?僕の養母です!!じゃあ「ラーズ」っていうのは・・・。

ミュカレ:うむ、きっとお前さんに殉職した息子の姿を投影しているんじゃろ。
     あるいは顔立ちが似ておるのかも知れんな。

ラーズ:知らなかった~・・・。養母(かあ)さんも人知れぬ孤独を抱いた人
    だったんだ~。

リク:や、だから「ラーズ」の意味は?

ミュカレ:「ラハドス(明けの明星)」じゃよ。夜の終わりを告げる星じゃ・・・。
     イエルカの「ラハドス」と同じ綴りでティアマトではそう読むんじ
     ゃ。
      昔から「ラハドス(明けの明星)」と「アステル(宵の明
     星)」は太陽と月の間に生まれた双子ということになっておる
     が・・・、かなり昔に皆既日食の異変がった時に明けの明星がヤ
     ケに明るいことがあってな。それから「明けの明星は太陽に取っ
     て代わろうとする野心家の神」という寓話ができたんじゃ。
      それが親である王と、兄である第一王子を廃して王位を奪取し
     たイエルカ3世の故事と結びついての・・・、イエルカでは裏切
     りや終焉を予感させると忌み嫌われとるが、太陽を崇拝しておる
     ティアマトでは新たな一日の到来を告げる希望の星なんじゃ。  
     「ラーズ」の意味・・・、他の連中には内緒にせえよ」

ラーズ・リク:はい・・・(O.O;)(o。o;)

 しかし、ラーズとリクはうっかり聞き落としていました。ソルダムとは「太陽の子」という意味であることと、その息子が誰であるのかをです。

異人父:アノー・・・、チョトーイイデスカー?

ミュカレ:おっ、ピエトリさんじゃったかの?

異人父:オー!「ピエトリ」言ッタラ「オ父サン」デース。ワーダシ38才ネ。
    ラーズサンダッタラショガナイデース・・・デモ~、ワーダシノ「ピ
    エトリ」ヨリ年上ノ貴方二言ワレルト、チョトカライデ~ス!

ラーズ:からい?辛(つら)いってことですか?

異人父:オー!!(*‥*)

リク:僕は?

異人父:ウ~ン、アリエナイコトデハナイデスネ。

ラーズ:キサラ姉さんは?

異人父:ウッ・・・!ビ・・・微妙。

キサラ:あら・・・、微妙ってどういう意味かしら・・・?(;-_-メ;)

 思わず力が入ったキサラは酒の入った瓶を握り潰しました。

異人父:オー!!(〇o〇;)・・・全然問題無イデ~~~ス!!(^^ゞ

ミュカレ:それよかお前さん、何か言いかけてたじゃろ?

異人父:オー!ソウソウ、ラーズサン「サイベリアン」ノ支族ト思ウデース!
    多分、「アスコー人」カ「ムウ人」ダト思ウデス。

ラーズ・リク:「サイベリアン?」

異人父:シバ神、ネグリトノ女性大勢愛シタ。生マレタ子達「サイベリアン」
    アムリル神、ネグリトノ女性数エ切レナイホド愛シタ。生マレタ子達
    「アムリア」イヤーヌス神、ネグリトノ女性山ホド愛シタ。生マレタ
    子達「オアンネス」皆ネグリトオ母サン。神様ノ血ヲ引ク者、総称「デ
    ィンギル」

ミュカレ:何と!衝撃の事実じゃの~。イエルカのお偉いサン方が聞いたら腰
     抜かして脱糞するじゃろな・・・。それにしても坊やが破壊神の末
     裔とはの~・・・。

異人父:オー!シバ神、破壊神ジャナイデ~~~ス!!心優シイ神様デ~ス!
    タダチョトーオッチョコチョイナダケネ~~~。

ミュカレ:しかし史実ではアファールのカルンデ湿原を一夜にして砂漠に変え、
     北の大国を湖の底に沈めてしまったと言うことじゃが?

異人父:ソレ違ウデ~ス!アファールノカルンデ湿原底ナシ沼ダタ。人間沢山
    死ンダ。可哀想思テ乾カシタ、加減間違エタ。砂漠化シタ・・・。
     北ノ国、冬二ナルト雪二閉ザサレテ川モ畑モ凍ル、人間スルコトナ
    イカラマグワッテバカリ・・・、コノママダト人口爆発大変デース!
    雪溶カス、地面出ル、皆耕ス、食料安定スルデ~ス。ダカラ雪溶カシ
    タ、加減間違エタ、街、沢山水没シタ。シバ神人間二理由言テ謝タ。
    言葉半分通ジナカタ。「マグワッテバカリイタカラ街沈メラレタ」言
    ウ伝説ダケ残ッタデ~ス。破壊神ナチャタデ~ス。皆怖ガル様ナタ、
    居ヅラクナタシバ神「サイベリアン」連レテ極東行ッタデス。
     弓ノ形シタ列島行ッタデス。南二「アスマ」言ウ大キナ山アル島有
    タデス。大噴火、カルデラ出来タ。都、火山灰ト地下水二沈ンダデス。
    皆バラバラ逃ゲタデス。ソレ「ムウ(無憂)国」ト「アスコー(明日
    香)国」有ッタ島ノ最期。シバ、紺色ノ髪ノ神様。「サイベリアン」 
    皆黒髪、ワーダシ南オアンネスノ末裔ノ先生カラソウ習タデ~ス。

ミュカレ:なるほどの~・・・。シバ神は小柄な神だったと言うしの~。

 ラーズは思いがけない展開に目をパチクリさせていました。

ラーズ:結局のところ、その・・・なんだ・・・。

リク:結局お前も系統は違うけど俺達と同じ「ディンギル」なんだよ。そんで
   みんなネグリトの血を引いてると・・・。

ラーズ:そう!そうなんだよ。もとはみんな一緒なんだよ。ピエトリさん!い
    いこと聞きました。ありがとうございました。

異人父:オヤスイ五葉松!

ラーズ:それを言うなら「おやすい御用です」でしょ?

異人父:オー!!(*‥*)

トォニイ:ピエトリー・・・(´ヘ`;)

 トォニイは齢3才にしてお父さんが滑りまくっているのが解るのか、キサラに張り付きながら恥ずかしそうに見ていました。

つづく

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