第十章~笑う海賊王7



 ライゾ(忍者装束の男)の雷撃を何度喰らっても、「参った!」とも「喋るから許して!」とも言わないシグルに眼帯男も動揺しています。

眼帯男:あれ~?・・・目玉、飛び出さないなぁ・・・(-""-;)

シグル:ギャグマンガじゃあるまいし、そう簡単に飛び出しませんって!

眼帯男:えぇ~!?・・・イエルカから来たってヤツらはたいてい飛び出した
    んだけどな~・・・(-""-;)

シグル:・・・閣下、(‥? キャラ変わってませんか?

眼帯男:えっ!?そうかな(¨;)?
    でもホントに飛び出したんだって!目玉の中から小人がさぁd(▼.▽)!

シグル:やはり・・・、それは掌に乗るくらいの大きさではありませんか?

眼帯男:そう!こんくらいの奴!

そう言って眼帯男は親指と人差し指で小人のサイズを表して見せました。

シグル:ですから、先程から申し上げておりますように、それは有史前と12
    00年ほど前に我が国を襲った「アヌンナキ」と名乗る異界人です。

眼帯男:しかしね、するとこの通行証は!?ヤツらは必ずこの通行証を持って
    いたぞ!!

男はそういうとシグルの目の前に通行証をかざして見せました。

シグル:この印章は!!

眼帯男:よもや見忘れたとは言うまいな?

 そこにはテオの署名があり、彼の房の紋であるムル・アド(イルカ座)の印章が押されていました。しかし・・・。

シグル:その通行証に書かれた署名の筆跡はテオ大兄のものではありません。
    明らかに他人のものです。


眼帯男:では偽造された物か・・・?んっ!?今なんと・・・?テオ大兄とな!?

シグル:はい、この署名はテオ大兄のものですが、助手がルーテシアに遣いに
    出たことなど、ただの一度もありません。それに、ここでそのセージ
    が成敗されていれば当然助手の顔を知っている私にもわかります。
  しかし大兄の助手達は一人の欠員もなく皆王都で奉公しています。

眼帯男:いや、私が言いたいのは・・・。

シグル:失礼ですが閣下が昵懇になさっておいでのイエルカの賢者とやらは何
    と名乗っていましたか?

眼帯男:え~?シグルだけど・・・。

シグル:はぁ・・・!?(〇o〇;)!!
    閣下!私こそがそのシグルなんですが・・・?

眼帯男:ええ~~~~~~っ!!!!?君がシグル!!?君はテオではないの
    かぁ!!???

シグル:何で私が・・・?私こそ正真正銘のシグルです!

眼帯男:むっ!むむむむむむむ・・・???(-"""-;)???すると彼は私に嘘
    を吐いたのか?
     2年前だったかな?・・・の評議会でその自称・シグルが「ティア
    マト戦役の生き残りの悪党がテオという賢者になりすましている。そ
    れが彼だ」と言って君を指差したんだ。
     そしてその彼が「あのテオが人身御供の姫を連れて陛下を誑かしに
    行くから成敗を頼みたい」と言うものだから私は・・・(O.O;)   

シグル:十数年前からその者はシグルと名乗っていたんですか?

眼帯男:そうだね・・・。少なくとも知り合ってから14年は経っているかな?

シグル:するとその者は私が観星官になる遙か以前からシグルという名前を知
    っていたことになります。
     閣下・・・そういえばあの時私が握手を求めたときに拒絶されたの
    は何故ですか?

眼帯男:ん?・・・いや、彼が「テオは手に触れた人の心を盗み見ますから絶
    対に握手などなさらないように」って言うもんだから・・・。

シグル:やはり・・・。
     しかもテオ大兄の名を貶め、私を亡き者にしようとした・・・。私
    が生きていては都合が悪い人間・・・、願わくば遠国で死んで貰いた
    い人間・・・。つまりその者こそティアマト戦役の生き残りの悪党な
    のではないでしょうか?

眼帯男:うっ!!(-""""-;)

ライゾ:リュンクス様、俺この人、悪人じゃない気がする。なんかこの人のオ
    ーラ・・・すごく温かい感じがするよ。

と、ライゾが言いました。

眼帯男:バカ!今はバトウだって!・・・ったく、何遍言えば解るんだよ!

シグル:リュンクス?

ノアロー:リュンクスだってェ(〇o〇;)!?

それまで伸びていたノアローが飛び起きました。

ノアロー:・・・こいつに見覚えはない?

そう言ってノアローは長剣の様な武器を差し出しました。

眼帯男:その短槍は、するとお前・・・。

ノアローが持っていた長剣は、実は柄の部分を取ると切っ先が出てくる短槍でした。刀身を鞘から抜いて一度振りかぶってから攻撃してくると思っている敵の意表を突いて一瞬早く攻撃が出来るのです。

ノアロー:14年前に行方不明になったって聞いたけど、なんだってこんな所
     にいるんだ!?

眼帯男:そりゃお前・・・。

 眼帯男が返答に窮している間にライゾは主人に断りもせずシグルの縄を解きました。

ライゾ:雷撃ちょっと手加減したし、これで地面に電流を逃がしてたつもりな
    んだけど、大丈夫だった?・・・あっ、これ親分には内緒ね?(-b-)

彼はシグルの足許に垂らしていたアース代わりの銅線を懐にしまいました。

シグル:ああ、助かったよ、気遣いありがとう。

ライゾ:へへへ・・・。(^^)


シグル:あ・・・、そういえば・・・、私たちより前に赤褐色の髪の女の子が
    出て行ったんだがその子はどうした?

ライゾ:・・・(‐_‐;)

シグル:?

ライゾ:捕まえようとしたけど、もの凄い殺気だった目で睨み付けられたんで
    金縛りにあったみたいに動けなかった・・・(..;)

シグル:(まあ、猫とネズミだもんな・・・)じゃあ・・・。

ライゾ:うん、港町の方に走って行った。

シグル:(じゃあ手紙は無事だな・・・)

するとその時、奥の部屋から、

「あうううう・・・へ、陛下!」という、ろれつの回らない呻くような声が聞こえました。

「おっと、起きちまったか?」 と言って眼帯男は隣室に走りました。
 シグル達も後を追うと、そこには眼帯をして、少し身体がかしがった状態で寝台に座っているバトウがいました。

シグル:バトウ閣下が2人・・・?

眼帯男:見られちまったな・・・。

バトウ:へ・・・陛下・・・。(; ;)

バトウはドゴーのことが心配でならない様子でうわごとのように「陛下!」を連呼しています。

眼帯男:ご安心下さい。陛下は御壮健です。俺達がぬかりなくお守りしますか
    ら。

バトウ:へ・・・陛下・・・(´▽`;)

バトウは眼帯男のその言葉を聞いて、ホッとしたように微笑みました。
眼帯男はバトウを寝かし付けると隣室へ皆を促しました。

眼帯男:ニードの言うとおり、俺はかつて山猫旅団の団長だったリュンク
    スだ。で・・・、あちらが正真正銘のバトウ閣下だ。

ノアロー:ニードっていうな。今はノアローだよう!

眼帯男:なに?ノアロー(黒猫)?・・・するとお前、山猫旅団に入ったのか?

ノアロー:そうさ。

眼帯男:何だってお前、そんな危なっかしいことを・・・。

ノアロー:それって元・団長が言うことじゃないだろ?

眼帯男:元・団長だからこそさ。お前にゃ普通に暮らして欲しかったよ。

ノアロー:だってさ、世界中を旅してたら父ちゃん見つけられると思ってさ。
・ ・・それより父ちゃんこそ、何でこんなとこにいるんだ?

眼帯男:それは・・・。

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 今から14年前のある日、アプラサスで開催されたアムリア評議会に「身体は滅法強いがオツムの具合がちょっと・・・」と噂される国王の代理として勺(関白)のバトウが出席したんですが、リュンクスがそのバトウの護衛をしながらルーテシアへの帰路についた時のことです。
 国境近くの森に差し掛かった時、突然トカゲ大の何かが降ってきてリュンクスの耳の裏に張り付き、その途端、アブに刺されたような痛みが走りました。
 その時、木立の中から飛び出してきたネズミ色の忍者(っぽい)装束のライゾが「危ない!」と言ってリュンクスの首筋を掴むと軽い電撃を喰らわしました。その時、耳の裏で何かが剥がれる感触がしました。
 リュンクスはむんずとそいつを掴むと地面に叩きつけグリグリと踏みつけました。耳の裏にツーッと血が滴るような感触がありました。

リュンクス:何だこいつは!?

ライゾ:何だか知らないけど、こいつは人に寄生して操るんだ。この触手みた
    いなヤツが頭の奥まで届いたらこいつらの操り人形みたいにされちゃ
    うんだ。間に合ってよかった。

リュンクス:感謝する!

 2人がそう言葉を交わしていると、

バトウ:ぐああああああ!!

という呻くようなバトウの悲鳴が聞こえてきました。

リュンクス:閣下!!

ネズミ男:しまった!!デュクレール(発雷)!!

忍者装束の男はバトウの首筋を掴んで電撃を加えました。するとバトウは糸の切れた操り人形のように力無く地面に膝をつき、次の瞬間、左の眼窩から眼球を押し上げるようにして小人がせり出して来ました。
 小人は目と眼窩の隙間から上半身を出したところで青黒い液体を吐き出すとガクッとくずおれ、そのままだらんと垂れ下がりました。
 リュンクスとライゾはバトウに駆け寄ると、左目の下に垂れ下がる小人を引きずり出し、地面に叩きつけてグリグリと踏み潰しました。
 しかし、触手はかなり深い部分まで浸蝕してしまったようでバトウは左目を失明し、満足に会話することも、歩行することもできなくなってしまいました。
 その日からリュンクスはバトウの影武者として生きることを決意したのです。

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眼帯男:俺は閣下をお守りできなかった。だから閣下の「影」として生きると
    誓ったんだ。でも国王陛下は鋭い御方だから、すぐに別人だって見破
    られるだろうから、しなくてもいい眼帯をして、体調不良を理由に参
    内しなかったんだ。

シグル:確かに陛下はお気づきのようです。「すっかり人が変わってしまった」
    と仰せでした。閣下御本人がここまで忠義に篤い方なのですから陛下
    の御許へ参内されたらいかがでしょう?

眼帯男:う~ん・・・。
    むっ!何やらおいでなすったらしいな・・・。

リュンクスの言葉にシグルが息を殺して耳をそばだてるとかすかに「カランカランカラン・・・、コロンコロンコロン・・・」という鳴子のような音が聞こえてきました。

シグル:これは?

眼帯男:周囲の塀に仕掛けてある警報器だ。テグスに鳴子がぶら下げてある。
    奴さんら門から堂々とではなくわざわざ塀を乗り越えて来やがった。
    ってことは。

シグル:私たちに悪意を抱く者。

眼帯男:ああ、そうだ。

シグル:もしや敵は我々が接触したことに気づいて・・・?

眼帯男:多分そんなところだろう。敵の狙いがまだ何なのかははっきりしない
    が嘘がバレたと解れば君らだけでなく俺達も一緒に始末する気だろう。

シグル:ウルク神殿に仲間がおります。助けを呼びますか?

眼帯男:いや、抜け道がある。一緒に来てくれ。そして脱出したら急いでこれ
    を・・・。

 そういうと、眼帯男は信号弾を取り出しました。

シグル:これは?

眼帯男:ヤジルを呼んでくれ。イエルカに向かった特殊部隊を止めなくては。

シグル:イエルカに特殊部隊!?

眼帯男:ああ、恥ずかしい話だが我々は君の名を騙る何者かにミスリードされ
    ていたようだ。十年余の時間をかけて、イエルカが奇妙な化け物を使
    って我が国への侵略を企てていると思わされていたんだ。
     特殊部隊が貴国の陛下を拉致してしまう前に止めなければ・・・。    
    それにはもうヤジルの船でなければ追いつけまい。

シグル:わかりました。

眼帯男:宜しく頼む。あ、それと・・・、今日のこと・・・、陛下には内密に
    頼む。

シグル:しかし・・・。

眼帯男:皆が何事もなかったように思っているウチに片付けたいんだ。おめで
    たい席にケチが付いては申し訳なくてな・・・。

シグル:・・・。

 ついに姿を現した国境を跨いだ謎の敵にどう挑む?そして敵の目論見を打破することは出来るのか?

つづく


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