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「百田尚樹さん、潮先郁男さん、そしてKさん-1」
2012年8月31日、静岡市駿河区中吉田に
1件のコンビニがオープンした。
珍しくも何ともない出来事だ。
でも、そのオーナーを知っている人ならば、
感慨深いものがあったかもしれない。
オーナーのKさんは56才、元酒屋さんだ。
正確には、2011年3月11日午後2時45分までは、
岩手県釜石市の人気酒店の店主だった。
東日本を襲った「大きな揺れ」は、
Kさんの店の商品をなぎ倒し、
その数十分後には、押し寄せた大津波が、
建物ごと跡形もなくさらっていってしまった。
Kさんの奥さんは、その時のことをこう話す。
「津波警報って、それまでに何度も出たことあったけれど、
いつも、たいしたことなかったからね、
今度もまぁ、『一応避難するか』って程度で、
ぶらぶら高台に歩いていったのよ」
10mの防波堤に守られた釜石が、ちょっとやそっとの
津波でやられる訳がない…と多くの人が思った。
でも、その 「大丈夫だと思うけど、一応避難」
が運命を分けた。
高台にたどり着いたKさんたちは、
自分の町が濁流に飲み込まれていく様子を見続けることとなった。
近所の人たちが流されていく。
寝たきりのお年寄りを助けに行った人たちだった。
どんな思いで、それ見ていたのか…
その後の避難所暮らしを含めての壮絶な体験を、
同じように感じることは、できないけれど、
東北に知り合いの1人もいなかった私が、
「縁あって」静岡に避難してきたKさんご夫妻と
「縁あって」知り合い、こうして話しを聞いている。
どんな出来事でも「自分には関係ない」なんて
断言できないなぁ…と思う。
Kさん夫妻は色々悩んだ末に、静岡への移住を決意して、
さらに数々の問題と膨大な手間を乗り越えて、
コンビニの開業に至った。
その間、何度かお会いしたけれど、
奥様は、話をする度に必ず泣くようになっていた。
はじめは「どうしよう…」と思ったけれど、
もしかしたら、心の中にタプタプと溜めていた悲しみを
こうして洗い流しているのかもしれない…と、感じるようになって、
ただただ聴くことにした。
この日も、お店の前で長い立ち話しをしたが、
新しい商売は、希望もあるけれど不安も大きいようだった。
「でも、あれだけのことを乗り越えて来たんだから、大丈夫だよ」
と言うと、奥さんの顔が一瞬でクシャっと泣き顔になった。
「元気で、元気でね」と涙ぐんで手を振りながら、
あの顔がストップモーションみたいに記憶に焼き付いている。
Kさんの経営するセブンイレブンは、こちらです。
よかったら、お近くを通った時にでも寄ってみてください。