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2012年05月15日
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カテゴリ: 桜隊原爆忌

14 「憎んでいます、いまだに」=広岩近広
≪記事≫
          (毎日新聞 2012年5月15日 大阪朝刊)

 戦争と原爆をライフワークにしている映画監督の新藤兼人さんにインタビューしたことがある。1988年に封切られた「さくら隊散る」について、こう語った。

 「無念の思いを残し、新劇の俳優はどのようにして死んでいったかを克明に描けば、放射能がどんなふうにして人間を殺したかがわかると思いました」

 スクリーンの丸山定夫は激しいシャックリのたびに、体がびくんびくんとはねる。たたきつけられているようでもあった。うつろな目は一点を見つめ、ゆるゆるとあげた右手が何かをつかもうとしていた。園井恵子はブドウ粒の紫色の潰瘍が全身にでき、絶望に塗り込められた目を空に泳がせていた。

 もちろん丸山も園井も俳優の演技なのだが、2人はこうして死んでいったのだと、息をのんで映像に重ねた。新藤監督は「さくら隊散る」(未来社)の「あとがき」に書いている。

 <放射能が人間の体にしのびこんで、内部臓器を食いちらす状況は、丸山定夫、園井恵子、高山象三、仲みどり、がたどった死のプロセスが如実に物語っている。ピカッと光った瞬間に即死した以外の人はみな、こんな経過をふんでたおれたのだと思う。いったん助かって、ほっとさせ、あとからじわじわと殺すのだから、怖ろしい正体の怪物である。(略)おそらく今後、人類が放射能にさらされることがあるとすれば、丸山定夫たちのようにして死んで行くだろう>

 あれから67年の歳月をへて、84歳を迎えた元珊瑚(さんご)座女優の諸岡千恵子さんの脳裏から、最期をみとった丸山定夫の姿が消えることはない。「何十万もの人々が、丸山さんや園井さんと同じように苦しんで死んでいったかと思うと、今でも体が震えてなりません。人間の尊厳を奪って殺すのが核兵器なのです」

 元タカラジェンヌの内海明子さんは園井恵子の最後の脈を取っている。「原爆をどう思いますか?」と聞くと、内海さんは両手を顔の前にあげて「×」をつくった。91歳の白い手の指先まで力がこもっていた。



 桜隊の演出家で今は亡き八田元夫は著書「ガンマ線の臨終」(未来社、65年7月)で<あとがきの最後に、もう一度>として特記した。<アメリカよ、お前たちは、ほんとうに許すことの出来ない、わるい、わるい、ことをやったのだぞ、とかきしるす>

 今年2月28日に89歳で他界した「桜隊原爆忌の会」の中村美代子会長は昨夏の追悼会で言い切った。

 「私は原爆をいちばん憎んでいます。いまだに憎んでいます」(次回は22日に掲載)

毎日新聞連載14PHO





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最終更新日  2012年05月31日 14時58分40秒
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