落語が好きな訳ではありませんが昔聞いた噺で妙に心に残っているのがあります。紺屋高尾という落語です。
舞台は神田の紺屋町。染物屋に奉公するきゅうぞうが具合が悪くて三日も飲まず食わず。親方が心配して丸が池の医者を呼びにやりました。早速先生がやってきて具合を診ました。ところが体はどこも悪くない。よくよくきゅうぞうの話を聞いてみるとどうやら恋の病らしい。相手が誰かと問い詰めると吉原、三浦屋の花魁、高尾太夫に惚れてしまったらしい。吉原といえば今でこそソープランドという言い方をしますが当時は大名道具といわれ売れっ子ともなればなかなかの身分だったようです。大名行列ならぬ花魁の行列で町を練り歩いたそうです。親戚のおじさんに嫌がるものを無理やり連れて行かれた吉原できゅうぞうはその行列に出くわします。その真ん中にいる売れっ子中の売れっ子高尾太夫を見た瞬間「こんなきれいな人間がこの世の中にいるものなのか」恋に落ちてしまったのです。どうせ自分はしがない職人、大名道具の太夫なんか買えるわけがない、どうせ叶わぬ恋なんだとすっかり塞ぎこんでいるきゅうぞうに向かって先生が「ありゃあ売り物なんだ。金さえ出せば買えないものじゃないぞ」と励まします。「十両もあれば一晩遊んでこれるよ」ひとくちに十両と言ってもきゅうぞうの一年間の給料が三両。吉原の三浦屋に遊びに行くには三年間お金をためなければいけません。それでもきゅうぞうは「三年頑張れば高尾太夫に会える」ことが励みになり元気を取り戻します。それからのきゅうぞうは以前にもましてまじめに働きます。そして三年後・・・
つづく