桜さがし
中学時代から十年来の仲間である歌義、陽介、綾、まり恵の四人は、今は作家として京都郊外の山奥に独居する恩師・浅間寺のログハウスに招待され、その途中の山道で一組の男女と出会う。幸福そうに見えた二人だったが、一ヶ月後に心中死体で発見され…。
古都の移ろいゆく季節の中、せつない青春群像を描く、傑作ミステリ連作集。
【目次】
一夜だけ/桜さがし/夏の鬼/片思いの猫/梅香の記憶/翔べない鳥/思い出の時効/金色の花びら (「BOOK」データベースより)
昨春読んだ『 流星さがし
』( 感想
)の、前篇にあたる作品です。
『流星さがし』では、新米弁護士になって奮闘する歌義の姿が描かれていましたが、こちらの連作短編では、まだ司法試験の受験中…
中学時代新聞部で一緒に活動した仲間も、それぞれが社会の入り口でとまどい、迷っているところです。
OLになったまり恵。
大学院生の綾。
エリートコースに乗っているビジネスマンの陽介。
短編はすべてミステリで、事故に見せかけた殺人や、容疑をかけられた人のアリバイさがしなどが、季節感たっぷりの京都の風景とともに描かれています。
陰惨な事件も、情景に溶けこんで、しっとりした読後感がありました。
それにも増して印象にのこるのが、彼ら4人の姿です。
恋につまずき、戸惑いながら歩む彼らの、手探りの道が、痛々しくも清々しい。
若いって、そのほろ苦ささえも、素敵だなぁと心から思います。
歌義とまり恵の、行きつ戻りつする恋が、数篇にわたって描かれますが、私は、陽介の物語『片想いの猫』と、綾の『夏の鬼』が好きでした。
ことに綾の不器用な恋の物語には、若い日の、胸の痛みをフラッシュバックしてしまうような、鮮やかな色が見えるようでした。
彼らの心の拠り所になっているのが、当時の顧問教諭で、今は山村に隠遁するように暮らす作家の浅間寺です。
迷ったときや心細くなったとき、あるいは賑やかに集まりたくなったとき、訪ねてゆく存在なのですが、この連作を読んでいると、浅間寺は浅間寺で、彼らのことを支えにしているようにも感じます。
シリーズとしては、逆から読んでしまったのですが、十分に味わい楽しむことができました。
いまはもう、歌義たちが古くからの友達かのような感覚でいます。
このあとも、また会いたいです。
佐藤雅彦 『四国はどこまで入れ換え可能… 2011.05.27
梓崎優 『叫びと祈り』 2011.03.03
白洲信哉 『白洲家としきたり』 2011.02.06
PR
キーワードサーチ
カレンダー
カテゴリ
コメント新着