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2章.思想編
陰陽五行説
太極拳の基礎となる中国思想は、陰陽五行説です。
「陰陽五行」とは、紀元前の中国の春秋戦国時代に生まれた自然哲学の思想のことで、森羅万象、つまり宇宙に存在するすべてのものを説明できるとされました。具体的には、自然や人間の生活を形成する日・月・年や季節、方位などすべてを説明し、儒教や医学、天文学などの学問や音楽など、中国文化の根幹を支える理論として重要なもので、儒教・仏教・道教にもとり入れられた自然科学でした。
中国の王朝が陰陽五行を扱う役所を設けていたことを模して、日本でも飛鳥時代には「陰陽寮」を設け、官僚として陰陽師をおきました。陰陽寮は、神道の祭祀や神事に影響を与えて、日本独自の「陰陽道」を生み、発展しました。
「陰陽五行」は「陰陽思想」と「五行思想」の二つの思想を含みます。その根本には、宇宙のあらゆる現象は「運動」と「循環」によって成り立っており、それは弁証法とも通じています。「運動」と「循環」は太極拳の根本思想ではありますが、実際の練習に於いても重要な考え方になります。
(陰陽)
陰陽思想は古代中国の易学の考え方で、存在は相反する二つの性質を持つものの調和から成っているとされます。
性質の外に向かうものを「陽」とし、内に向かうものを「陰」とします。陰陽は善悪の概念とは違いバランスの概念です。太極拳経は合一から絶対に向かうまでの、世界の生成流転を表しています。
(五行思想)
五行思想とは、中国古代の自然哲学の思想です。万物は五種類の元素からなり、その元素は一定の法則で互いに影響や規定を与えあいながら、変化し、また循環しているという思想です。
五行の「五」は五つの元素のことで、「行」は動く、めぐる、という意味を表します。
五種類の元素は人間の生活に不可欠な「木・火・土・金・水」の素材です。順循環関係を「五行相性」といい、規定関係を「五行相剋」といいます。良い悪いということではなく、形づくる関係を言います。
相性とは、木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生じと世界を捉えます。
相剋とは、木は金に規定され、土は木に規定され、水は土に規定され、火は水にされ、金は火に規定されると解きます。
世界は、やはりこの運動と循環で形作られています。身近な物質で表現されており、神秘的なものではありません。あくまで広範囲に応用できる自然科学です。
気とは
中国人は「目には見えないが確かにある」ものを、気と呼びました。
打拳に向けて、筋肉や骨の動きを順々に追っているのではなく、最初から、手足が繋がっている動きを勁と一発で呼ぶことで、武術的認識が上がり動きが変わる事こそが本当の練習です。
勁力という働きを認識することによって、小さい力で大きな力を出す出力体を実現します。その働きは目に見えません。認識するのみです。その認識が確信に変わって、手足だけでなく全体の動き、日常の感覚と違う動きを気と呼びました。
日本人は目に見えない感覚を、神社に泊まり神様からいただいたとか、鬼や天狗から教わったなどと言いますが、中国人はあるものはあると物質として扱い、それを気と呼んだのです。ですから、中国拳法の方がかなり物質的に気を感じる事ができます。
中国拳法では、先に書いた通り、気は勁を使うだけで発動し、いつのまにか当たり前に認識できるようになると説きます。それは厳しい練習の果てにあるのではなく、どれだけ認識できるかです。へとへとになるまで練習して、すべての力を出し切らせて感覚を掴ませるというのは、時間と体力がある人には良いでしょうが、武術的には非常に無駄な事です。武術の動きというのは、武の規定に則った自分の動きをどのように認識しているかという事です。
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