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【送料無料】ヒトリシズカ [ 誉田哲也 ]「ストロベリーナイト」と「ジウ」を読んでいてけっこう好きなので文庫化されていた「ヒトリシズカ」を帰り際に買った。仕事をはじめてめっきり減り、子どもを産んでさらに減った読書時間。でも、必要なんだなと思った。その時だけ世界が切り替わる。違う世界に入り込む時間って必要なんだとつくづく感じた。本作は連作で、徐々にある女性の人生が明らかになっていく…というつくり。ひとつひとつの短編ではどうってことない話だし、細かい描写がなされているわけではないから、その女性の輪郭がおぼろげにわかる程度で、いささか消化不良感は残る。で、あの登場人物は結局どうなったの!?ってところもある。(そんなレビューも多かったし)でも、一気に読みたくなってしまう引きがすごく強い作品で、個人的にはけっこう好きなものだった。消化不良感すら、「もう一回読んだらもっとわかるかな?」と二回目に挑みたくなるフックになるほどだった。WOWOWでドラマ化されるということなので観たいなあ。でも入ってないから観られないやー。いや、読書って大事な時間ですね。時間ないと言いつつ通勤、お風呂のいい友達になってくれる。
2012.09.13
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仕事が暇になってくると、本を読めるようになるからうれしい。忙しい時は、ゲラ読むだけで読書許容量を超えてしまっているのか、まったく読む気にならないのだ。そんなわけで、最近は1晩で1冊ペース。一昨日くらいに読んだのが、“アンフェア”の雪平夏見シリーズの3冊目となる『殺してもいい命…刑事 雪平夏見』(秦 建日子著/河出書房新社)。殺してもいい命「殺人ビジネス、始めます」「新規開業につき、最初の三人までは特別価格30万円」―胸にアイスピックを突き立てられた男の口には、赤いリボンで結ばれたチラシが突っ込まれていた。殺された男の名は…。あの刑事・雪平夏見が帰ってきた!待望のシリーズ最新刊。雪平夏見シリーズは、作者のデビュー作でもある『推理小説』こそドラマ版の原作になったが、以降の作品は映像作品とはまったくの別物で、独自に進んでいるのでそれはそれで楽しめると思う。本作はこれまでで一番読みやすく2時間足らずで一気に読んだ気がする。最初に殺された人物の正体で掴み、ラストまで引っ張っていかれる。非常に読みやすい文体と、規則的ですっきりとした構成により、多くの人が主人公とともに犯人捜しを楽しめる作品だ。「犯人捜しを共に楽しむ」って、読者が物語のスピードを共有するということだから、簡単すぎても難しすぎてもダメだと思うんだけど、この作者はそのあたりの塩梅を掴むのがうまい。あと、何よりも雪平夏見という魅力的な主人公を生んだこと。冊を重ねるごとに、彼女の輝きが増しているように思う。同じような美人刑事もので好きなのが、姫川玲子シリーズ。主人公の魅力度で言えば、断然雪平夏見のほうが上なんだけど、姫川玲子ものは群像劇かつホラーサスペンス的な面があって、それはそれで面白く、気に入っている。第一弾は『ストロベリーナイト』(誉田 哲也著/光文社)。ストロベリーナイト溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された。警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子は、これが単独の殺人事件で終わらないことに気づく。捜査で浮上した謎の言葉「ストロベリーナイト」が意味するものは?クセ者揃いの刑事たちとともに悪戦苦闘の末、辿り着いたのは、あまりにも衝撃的な事実だった。人気シリーズ、待望の文庫化始動。「惨殺」というキーワードと、アマゾンのレビューの賛否両論ぶりから伺えるように、このシリーズには「グロ注意」な描写が含まれる。(とはいっても表現の問題なので、想像力豊かでなければ痛くも痒くもないだろうけど)そういうのがダメな人は避けたほうが無難。でも、文章は雪平シリーズ同様平易で読みやすいので、スピーディーに読破できる。この1作目はとくにとんでもない殺人鬼がむごたらしい殺人を繰り返してくれるもんで、それに度肝を抜かれたものの、かえって心惹かれてしまった変態なわたくし。※ちなみにグロ度は綾辻行人氏の『殺人鬼』シリーズよりマシだと思う。殺人鬼シリーズはスプラッタだからな!このシリーズの欠点は、ありがちな人物設定(漫画とかドラマ的な)なんだけども、サスペンスらしいヒヤヒヤ感(グロ含む)がうまいことカバーして、総合点を上げている気がする。昨日本屋で続編を発見したので買った。『ソウルケイジ』(誉田 哲也著/光文社)ソウルケイジ多摩川土手に放置された車両から、血塗れの左手首が発見された!近くの工務店のガレージが血の海になっており、手首は工務店の主人のものと判明。死体なき殺人事件として捜査が開始された。遺体はどこに?なぜ手首だけが残されていたのか?姫川玲子ら捜査一課の刑事たちが捜査を進める中、驚くべき事実が次々と浮かび上がる―。シリーズ第二弾。前作よりもシンプルでメッセージ性を持った作品だった。「父性」というキーワードが全てを物語っている。そのため、前作よりもグロは少ないし、犯人も絞りやすい。でも、それがかえって異常と正常は紙一重感を強めていて、なんだかとっても心に響いてしまった。というわけで今度は『ジウ』を読むことにする。3冊あるから読み応えもありそうだ!
2009.11.17
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先日買った角田光代さんの「森に眠る魚」。森に眠る魚もうちょっとじっくりのろのろ読みたかったんだけど、引きこもっていた日曜日に読了した。以降は思ったことだけど、ネタバレ傾向あり。この小説は、「文京区幼女殺人事件」や「音羽"お受験"殺人」がモチーフにされたといわれている。わたしは、この事件を覚えていなかったが(子供だったから?)、当時は大変な騒ぎになったようだ。事件のシチュエーションを知れば知るほどに、今起こっても全く不思議ではないと感じた。登場するのは、5人の女たち。東京・文教地区で出会い、育児を通して親しい「グループ」になっていく。どの「彼女」も、どこかで出会ってもおかしくないな、と思えるほどフツー。各々の生活は、各々の考えや目的があって築かれ、紡がれているものだ。そんな彼女らが、共通の話題である育児を通して打ち解ける…これもごくフツーでしょ?でも、このフツーこそが崩壊への引き金を引いてしまったのかもしれない。女同士の社会は、非常に閉ざされた世界だと思う。誰が誰の仲間であり、頭はだれなのかをはっきりと示したがる。だから、いちいち机をくっつけて弁当を食べたりするのだ。これらグループの関係性が何で維持されているかというと、なにがしかの共通項だと思う。この共通項に誤差がなければないほどグループは仲良しであり、安定したものになる。ただし、あることについての考えを完全に近い形で共有するには、少なからず自分の意思というものを封じる必要がある。フツーであるためには、フツーになりきる必要があるのだ。でも、そんなに簡単に自分をなくせるのか…?というとそうではない。フツーと自分の意思との矛盾に、心を悩ませることがある。その苦悩や己の叫びこそが狂乱を生んだ第一の犯人だ。一方、第2の犯人は、「育児」という独特の世界にあったと思う。専業主婦になると、途端に生活スタイルが変わると聞く。わたしの母も専業主婦で、父の「奥さん」、わたしたちの「お母さん」でしかなかった。彼女らも同じで、もともと子供の「お母さん」として知り合った。いくら名前で呼び合っても、子供の「お母さん」のみで形成された世界に変わりない。そして、この世界で共有されるべきスタンダード、「フツー」とは子育てに他ならない。自分の価値は子供に投影される一方で、子育て観を共有してこそ成り立つグループ。はじめから破綻しているのだ。みんなで共有すべき子育て観を破壊したのはお受験。人を壊したのは、逃げ場がない育児の世界だ。この小説と、実際の事件が違うのは、犯人を何とするかの違いだと思う。事件を起こしたのは、歪んだ関係性なんじゃないのかな。わたしはそう解釈した。だから犯人はひとりじゃないどころかある人というわけでもない。だから誰も死なない。
2009.04.28
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川上未映子「乳と卵」を読了。amazonなどのレビューを見てもわかるように、賛否両論分かれそうな作品である。ずらずらと連なる文体は確かに読みづらいし、江戸っ子からすれば関西弁の意味やニュアンスも分からないし、とにかく意味を説明しているような文章ではない。でも、通して読んでいると、不思議とテーマがボワンと浮かび上がってくるから不思議だ。芥川賞の選考委員であった山田詠美さんが「無駄口は叩いていない」と言ったのもよくわかる。確かに無駄口は叩いていないのだ。絵に描いたような「転」、タイトルそのままの卵が飛び交うクライマックスなんて実はどうでもよくて、親子関係とか豊胸手術とかもおまけにすぎないような気がした。そうじゃなくて、女体の不思議、これに尽きる。生まれたとき、いや、生まれる前から子孫繁栄の目的で有無を言わさずたくさんの卵を抱える女。乳が乳として主張を始め、股から血が出、勝手に女になっていく。膨らんだり、萎んだり、飛び出たり、色を変えたり。それ自体が人格を持っているかのように姿を変える。本人の意思とは無関係のはずなのに、たまに体に気持ちまで振り回される。そんな不思議な卵の入れ物=女。女こえーーーーと、女なのに思わずにはいられなかった。乳と卵
2008.07.14
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おやすみ、こわい夢を見ないように角田光代さんの「おやすみ、こわい夢を見ないように」を読了。角田光代さんは、同居人も好きな作家のひとり。人間誰にでもある陰の部分を書くのがとてもうまい人だと思う。そんな角田さんの文庫の新刊。文庫ってものの存在が好き。ワンコインで買えるし、場所取らないし、字間行間フォントが絶妙だし。さくさく読めてしまう。「新婚夫婦、高校生カップル、同棲中の恋人たち―あなたの気持ちをざわざわとさせる衝撃的な7つのドラマ」という説明の通り、読みやすい短編集だ。だが、読みやすさと読後感は比例しない。楽しい軽いドラマというのはたぶん間違い。書名は収録の短編のひとつのタイトルでもあるのだが、これが絶妙。まさしく、誰もが持っている「こわい夢」の物語だからだ。夢は眠っているときだけに見るものではない。ちょっとしたきっかけで膨らんでしまう妄想、も含むと思う。全作に共通したテーマは「憎しみ」。ほら、誰もが持っている。そして、誰もがうまく消化したり、折り合いをつけながら生きている。でも、ひょんなことで思いが増幅し、自分を呑み込み、行動を伴わせようとしてしまったなら―誰にでも起こりうること。現実に起こっていること。だからこそ、ホラー小説ばりに怖い。本当にひどい殺人事件が頻発する世の中で、マスコミは犯人が事件を起こすに至るまでのストーリーを追い求める。執拗に掘り返し、多少脚色しながら、世に垂れ流す。どの事件にも共通すること。「はじまりはほんの些細な憎しみだった」そして、その些細な憎しみをわたしも、あなたも、持っている。
2008.06.16
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