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今日は、その読後感のゆえに小泉喜美子氏の「弁護側の証人」を紹介しようと思います。タイトルから想像がつくかもしれませんが、法廷をとおして殺人事件の真相を解くという話です。決してトリックがすごいというタイプの話ではありません。結末に驚く作品はあります。ミステリの面白さの1つだと思います。しかし、結末にめまいに似た読後感が来るミステリは少ないのではないかと思います。この作品がそれに該当します(私の場合は、ですが)。その読後感は意外性だけでなく、読んだ瞬間には結末の意味がよく分からなかったというのもあるかもしれません。この本を紹介しているウェブページなどを見ると、あまり驚かなかった人もいるようなので、人によるのかもしれません。願わくは、私と同じように幸せなめまいを感じてもらえれば、と思ったりします。ちなみに、アガサ・クリスティの「検察側の証人」を読んでいないと楽しめないということは全く無いので、その点はご安心を。弁護側の証人 (集英社文庫) [ 小泉喜美子 ]【中古】 弁護側の証人 集英社文庫/小泉喜美子【著】 【中古】afb
2023.08.29
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これもたまたま出会った本の1冊です。夏樹静子氏の本は「Wの悲劇」やいくつかの短編集を読んだことがあり、面白かったのでこの本も手に取ってみました。私の場合、面白かった作者の本を書店(古書店の場合も多い)で見つけて、前情報無しに読んで見るというパターンは多いです。この作品は、鉱山の事故で家族を失った女性(恵さん)と、それを巡る男性たちの物語です。その女性に結婚を申し込む男性、養女にしたいと申し出る男性、弁護士の男性などが物語に登場します。どの人物にも、なにか影のようなものや隠しているものがあるようにも見えながらストーリーは展開していきます。最後まで誰が味方で誰が敵なのか、誰が何を隠しているのか、背負っているのか、それが見えてこないのが最高の謎です。【中古】 死の谷から来た女 / 夏樹 静子 / 文藝春秋 [文庫]【宅配便出荷】
2023.08.27
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たまたま古書店で見かけて購入し、読んでみたら面白かったので紹介したいと思います。今日紹介する1冊は「怪盗ジバコの復活」という北杜夫氏の作品です。「怪盗ジバコ」の続編のようですが、出会った経緯上「復活」を紹介します。この作品は、世界を驚かせたという怪盗ジバコが、恋人の求めに応じて世界の名探偵と戦う作品です。戦うと言っても知恵比べです。相手となる名探偵は刑事コロンボ、ホームズ、ポワロ、明智小五郎?、チャーリー・チャンです。何がいいかと言って、各探偵の癖や喋り方などが少しパロディ的かつリアルに描かれているところです。セリフの雰囲気がとても良く出ています。また、怪盗ジバコが主人公の作品とはいえ、ライバルの探偵を過度に貶めることはせず、敬意が払われているところも好感度が高いです。まあ、ポワロは・・・。コロンボとは謎の死体を巡って、明智小五郎?とはワインの入れかえ事件を巡って、ポワロとは高額切手の謎を巡って、ホームズとは赤毛の人ではなくて禿頭の人が募集されている謎を巡って、それぞれ知恵比べをします。私は、コロンボとの対決が一番気に入りました。まずなによりコロンボっぽい。クラシックですがいくつかのトリックも効いています。コロンボはうまくジバコを追い詰めたと思いきや、果たして最後は?たまたま出会った本が面白かったというのは良いものですね。【中古】 怪盗ジバコの復活 / 北 杜夫 / 新潮社 [単行本]【メール便送料無料】【あす楽対応】怪盗ジバコの復活(新潮文庫)【電子書籍】[ 北杜夫 ]
2023.08.26
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霧の夜・・・ミステリ・・・といえばシャーロック・ホームズ的な古き良き英国のミステリが想像されます。あるいは、切り裂きジャックの恐ろしい世界?今回紹介する「霧の夜にご用心」(赤川次郎 作)は現代(とはいっても今から30年近く前ですが)の日本を舞台にしたミステリです。しかし、切り裂きジャックと無関係というわけではありません。なぜなら、この話の主人公は切り裂きジャックのような殺人に憧れ、自ら手を下そうとするからです。主人公はその思いに囚われ、作戦を立て、準備をしてターゲットを定め、犯行に乗り出しますが・・・。本のカバーにすでに書いてあるので、ネタバレにはならないでしょう。実は彼は犯行に失敗します。ドジを踏んだからとか名探偵に邪魔をされたとかではありません。他の人が先にターゲットを殺してしまったからです。そんな偶然が?でも、もし意図的なものだとすると、一体なぜ?切り裂きジャックになろうとした主人公はここから奇妙なミステリの世界を彷徨います。彼は切り裂きジャックになれるのか・・・?殺人事件の真相は?ドキドキしながら読める作品です。私は試しませんでしたが、静かで本当に霧が出そうな真夜中に読んでみるのも悪くはないでしょう。ちょっとポップな感もある紙書籍の表紙が私は好きです。霧の夜にご用心 (徳間文庫) [ 赤川次郎 ]霧の夜にご用心【電子書籍】[ 赤川 次郎 ]
2022.07.31
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私は結構「倒叙」のミステリが好きです。倒叙とは、犯人と犯行が先に描かれてその後で謎解きがなされていくタイプのミステリです。犯人が気づかなかったミスは何か、犯人と探偵役のやり取りの緊迫、犯人の心情・・・などが見どころになるミステリです。古くは、シャーロック・ホームズのライヴァルたちの一人として名高いソーンダイク博士シリーズがあります。犯人が残した痕跡を科学調査によって暴いていくスタイルです。歌う白骨【電子書籍】[ オースチン・フリーマン ]ソーンダイクシリーズは倒叙の長編もありますが、こちらは短編で気軽に読めます。その倒叙の系譜は21世紀に至るまで続いていくのですが、今日紹介する「福家警部補の挨拶」もその系譜に連なる名作の1つです。この作品は、ドラマで有名な「刑事コロンボ」の後継者と位置づけられるようです。コロンボといえばあのキャラクターと色々な職業の犯人とそれに関連する犯罪が特徴的です。本作でも、図書館の管理者、大学の先生、酒造会社の社長などバラエティに富んだ犯人が登場します。事件の舞台ももちろんそれぞれの職業に関連する場所と内容なので、短編ごとに色々な世界をのぞけるという楽しみもあります。犯行の手がかりや動機なども職業世界としっかりと結びついています。その職業ゆえにできたこと、その職業ゆえに残ってしまった手がかりなど、1話1話にそれぞれの世界が詰まっています。コロンボの場合も服装や台詞回しに個性がありますが、この福家警部補も、よく調査時に警部補だと認識されなかったり、バッジをなくしていたりというコミカルな特徴があります。なお、本作品はトリックに凝ったものではないと思います。やりとりや手がかりなど倒叙の本流が見どころです。本作の中で私のおすすめは「月の雫」。タイトルもさることながら、犯行場面が映像のように記憶に残ります。福家警部補の挨拶 (創元推理文庫) [ 大倉崇裕 ]福家警部補の挨拶【電子書籍】[ 大倉崇裕 ]
2022.07.30
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今回は、遠藤周作のミステリ的な短編を集めた「怪奇小説集 恐怖の窓」を紹介したく思います。遠藤周作というと「沈黙」や「キリストの誕生」などにおいて私達とともに歩む、ともにある存在としてのイエス(神)の姿を見出そうとした作家というイメージがあり、ミステリとは結びつかないかもしれません。しかし、彼のミステリ的な作品は実は結構あるのです。今回はそれらの中の1冊です。ミステリ「的」と書いているように、必ずしも犯人探しやトリックや論理の小説ということではありません。犯罪や謎をテーマにした「奇妙な味」の広い意味でのミステリと考えられます。ホラーであったり、ユーモアであったりします。「詐欺師」は謎とユーモアの一品。ドストエフスキーに詳しいを松平氏の正体とは?「姉の秘密」では、謎の手紙を導入に、優しく哀しい人生の一幕を切り取る。「悪魔」は、展開を気にして読んでいくと、印象に残るオチが待っています。そのほか、ホラーと思いきや・・・な作品も。いろいろな味のものが混ざっているからこそ、この作品はどんなタイプ?とわくわくする楽しみもあります。遠藤氏の一般的なイメージに合った人間の弱さに目を向ける作品も多く、謎解きだけに終わらない楽しみを提供してくれる1冊です。怪奇小説集 恐怖の窓(3) (角川文庫) [ 遠藤 周作 ]怪奇小説集 恐怖の窓【電子書籍】[ 遠藤 周作 ]
2022.05.28
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今回は小説ではなく映画ですが、名探偵コナン「ハロウィンの花嫁」みてきました。名探偵コナンは漫画等は多少読むくらいでずっと追いかけていたわけでもないのですが、それでも楽しめる内容の作品となっていました。いわゆる「犯人当て」や「トリックの解明」といった要素は薄かったように思えます。しかしその分、キャラクターたちのドラマやアクション、ちょっとした(メタなものも含む)ギャグなどが随所に散りばめられ、スピーディーな展開も相まって、2時間あっという間に楽しめます。ちょっと感動的なところもありました。ミステリ系なので内容にはあまり触れられませんが、私は登場するある組織のボスとコナンのやり取りが好きでした。犯人の過去のシーンの超人感も印象的でした。そういえば、映画の予告編で「バスカヴィル家の犬」が登場していました。
2022.05.05
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今日は、前に少し言及した「誰かのぬくもり」(新津きよみ)を紹介しようと思います。ミステリ、とは言い切れない部分もありますが、広い意味ではミステリと言って良いのではないかと思います。タイトルはなんだかあたたかみがありますが、ここで紡がれるストーリー(短編集です)はどちらかというと人間の昏い面が多いように思えます。それだからこそ極上のドラマがある、とも言えるのですが。「お守り」は不思議な話。祖母のお守りはいつも自分を守ってくれた。それを捨てるタイミングは?捨てるべきか捨てざるべきか、それが問題だ。「誰かのぬくもり」はラストが、意外というより印象的。重い。「罪を認めてください」「思い出さずにはいられない」は最もミステリ的な作品群。絡み合う思惑や利害が話を濃厚なものにしています。「骨になるまで」には、なんとマジシャンが登場。カード当てや10円玉を消すマジックを演じている。マジシャンが意外と話に印象深さを与えている。それがどういった点でかは読んでのお楽しみでしょう。多くの話において何かを抱え、何かを背負っている人々が主人公となっています。人生をやり直したいという思いを抱えている人も現実にいるかも知れません。読者はそのような主人公とともに、新津きよみさんが描く作品世界を生きてみることになるでしょう。楽しく読める、というタイプの作品ではないかと思いますが。色々な人生とミステリに触れられる好著だと思います。【中古】 誰かのぬくもり 光文社文庫/新津きよみ(著者) 【中古】afb誰かのぬくもり【電子書籍】[ 新津きよみ ]
2022.05.04
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先日「彼女たちの事情」という本を紹介しました。その作者が新津きよみさんという方です。その作品世界に最近とても惹きつけられているので、ちょっと書いてみたいと思います。一番最初に読んだ彼女の作品は「イブの原罪」という作品でした。予備知識は全く無く、本屋さんで見かけてタイトルが気になたっため購入した作品でした。読んでみて、タイトルから想像したのとは全く違う話で、色々な意味で鮮明に記憶に残るシーンの多い作品ではありました。この作品で少し彼女の作品世界に興味を持ち、「彼女たちの事情」でぐーんと引き込まれ、もっと読んでみたいと思っている今です。好きな作品のどこが好きかを説明するのは案外難しいものです。彼女の作品の魅力の1つ目には結末の意外性があります。とはいえ、多くのミステリはその長所を持っています。そこに加えて、様々な人間模様、人生模様が描かれていることが大きな魅力かなと思っています。例えば星新一氏のショートショートではエヌ氏やエス氏等といった命名を使うことで、人物像よりもプロットやオチに集中することができ意外なオチに鮮やかに斬られます。新津さんの場合は、固有名詞を持った人物がそれぞれのドラマを背負って出てきます。そのドラマに思わず引き込まれてしまうのです。今は彼女の「誰かのぬくもり」という短編集を読んでいます。沢山の作品を書いているということなので、今後も楽しみです。偶然に素敵な作品に出会えるのも読書の楽しみです。イヴの原罪【電子書籍】[ 新津きよみ ] 【中古】 彼女たちの事情 傑作ミステリー・ホラー / 新津 きよみ / 光文社 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】誰かのぬくもり (光文社文庫) [ 新津きよみ ]
2022.05.02
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今日は、うまく説明できないのですが、非常に素敵だと感じた本「彼女たちの事情」(新津きよみ)をご紹介しようと思います。【中古】 彼女たちの事情 /新津きよみ(著者) 【中古】afbこの本は、色々な女性たちが出会う事件や奇妙な出来事を巡る短編集です。ショートショートっぽく落ちがどれも鮮烈なのですが、単に意外な、というだけではないのが本書の魅力の1つです。驚かされるオチはもちろん、くすっと言うユーモアも含んだ落ち、ゾッとする落ち、本格推理的な結末など、色々な結末が楽しめます。もう一つの大きな魅力は、どの話にも人生のドラマが入っていることである。決して落ちのアイデアだけで書かれた作品ではないということです。人間の悪意、偶然の出会い、狂気にも至る強い思い、疑心暗鬼・・・さまざまな心情と人生が描かれています。どの作品もキラッと光るも所があり、ドラマにせよ落ちにせよ隅々まで味わえます。突然かかってきた謎の電話から、二人の女性の人生が交錯し、お互いに思いもよらぬ新しい道を歩き出す「花火」、本格推理と人間の狂気にも似た振る舞いを描く「紫陽花」など、どの作品もおすすめです。【中古】 彼女たちの事情 /新津きよみ(著者) 【中古】afb彼女たちの事情 決定版【電子書籍】[ 新津きよみ ]
2022.04.17
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時刻表を見ながら、旅の計画を立てたり、空想旅行をしたりするのは楽しいことです。しかし、時刻表を見ながら殺人計画を立てるのは・・・。今回は、「線路上の殺意」という短編集を紹介します。この作品には、昭和の鉄道ミステリとして4作品が掲載されています。鮎川哲也氏の「早春に死す」、西村京太郎氏の「あずさ3号殺人事件」・夏樹静子氏の「特急夕月」、山村美紗氏の「新幹線ジャック」です。そうそうたるメンバーですね。少しかいつまんで紹介します。「あずさ3号殺人事件」は、クイズ番組で当たった京都旅行を、別のクイズ番組で当たったという人の長野旅行と交換するというやや奇妙な設定から始まります。長野〜京都をまたいで鉄壁のアリバイを巡る捜査が始まります。推理をしては行き詰まり、行けたかと思えば強固なアリバイが出てくる、という謎の追求過程が楽しめます。トリックの意外性よりプロセス重視かと思います。タイトルから想像されるとおり、名曲「あずさ2号」に関する雑学?も入っていたりします。「特急夕月」は、実際に時刻表やフローチャートが挿絵として挿入されており、頭で追うのが苦手でもついていけます。とはいえ、この作品は時刻表トリックよりむしろ犯人のパーソナリティーや行動のやや奇矯な面が面白みかなと感じました。犯人はうじうじしてみたり、強気になったり。その描写とともに、なぜそう振る舞ったのかが興味深い。「新幹線ジャック」は、緊迫の展開とともに、犯人の行動や要求の不自然なところを探っていく話。実際に出くわしたらとても怖い話です。線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編〉 (双葉文庫) [ 鮎川 哲也 ]
2022.01.03
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今日は、最近読んだミステリを紹介したいと思います。タイトルだけ聞くと、ミステリを想像できないかもしれませんが、れっきとしたミステリです。作者はマイケル=イネス。創元推理文庫のシャーロック・ホームズのライヴァルたちシリーズの1冊「アプルビイの事件簿」の作者です。スコットランドのアルカニー城というお城が舞台。そこに住んでいるガスリー氏という人物が奇矯な人物で、変にケチだったかと思えば旧に気前が良くなったり、死を連想させる詩を口ずさんでいたり。そんなガスリー氏が「墜落死」を遂げた。事故か?自殺か?殺人か?この謎を探っていく話ですが、色々な人の見方、様々な推理が出てくるところが本作品の面白みです。叙述は、複数の人の手紙や記録という形式によって進められます。語り手によって味方や見えているものが違いますし、人の捉え方も異なってきます。そういった差異を含みにして推理が展開されますが・・・果たして?城の構成などじっくり読まないと分かりづらいところもあると個人的には思いました。しかし、それを補って余りある推理と結末が待ち受けていることでしょう。※ 左が紙の書籍、右が電子書籍です。 ある詩人への挽歌 (創元推理文庫) [ マイケル・イネス ]ある詩人への挽歌【電子書籍】[ マイクル・イネス ]
2022.01.02
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先日、「ねらわれた街」という作品を紹介しました。講談社青い鳥文庫文庫に収録されている「テレパシー少女蘭」シリーズの1巻目で、主人公たちが出会い事件を解決するところです。なにか前評判を聞いていたわけではなく、たまたま古書店で手にとったのですが、非常に面白い作品でした。そのため、シリーズの第2巻目も購入し、読んでみました。第2巻目は、「闇からのささやき」という題名です。イーデン=フィルポッツを思い浮かべます。この作品は、謎のエマヒクサという植物が鍵になっています。主人公蘭のちちは漬物マスターとも言うべき人物です(こういう設定も面白いのです)。その父のもとに旧知の人物から謎のエマヒクサという植物があり、それを漬物にできないか調査してほしいという少し奇妙な依頼が来ます。その依頼を受け父は、主人公蘭と友達の翠、ボーイフレンドの留衣とともに調査にでかけます。エマヒクサには、もう絶滅したはずの植物だとか、戦争前によく食べられたとか、いわくつきの伝承があるのでした。調査先では、いくつかの小さい謎が登場します。例えば、彼女たちが止まった家にはコーヒーがない。理由はその家の女性がコーヒーがあまり好きでないから。しかし、女性はコーヒーに詳しい(好きでないのに)。父の友人の心に霧がかかっている(主人公蘭はテレパシーを使えるという人物です)。何故か揚げ物が弁当のメニューにない。こういった謎が最後につながってくる・・・というのがミステリ的な面白さです。一体エマヒクサとは何なのか。いくつかの謎が導く答えは?それを探っていくのが第2巻です。第一巻でも印象的であった主人公蘭と翠の掛け合いも健在です。延喜式を演技のやり方と勘違いしたりとか。実は続きも注文してしまいました。気になるシリーズです。【中古】 闇からのささやき テレパシー少女「蘭」事件ノート 2 講談社青い鳥文庫/あさのあつこ(著者),塚越文雄 【中古】afb闇からのささやき テレパシー少女「蘭」事件ノート2【電子書籍】[ あさのあつこ ]
2021.08.21
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【中古】 ねらわれた街 テレパシー少女「蘭」事件ノート 講談社青い鳥文庫/あさのあつこ(著者),塚越文雄(その他) 【中古】afb古書店で何気なく手にとってみたら、とても面白そうで。読んでみたらやっぱり面白かった・・・。ちょっと本格ミステリというわけではありませんが、ミステリっぽくて面白い本に巡り合ったので紹介したく思います。講談社青い鳥文庫という児童向けのシリーズがあるのですが、その中に「テレパシー少女蘭事件ノート」というシリーズがあります。これはマジックのお話ではなく、テレパシー能力を持っている少女と仲間たちが、怪奇に満ちた謎を解くというSFミステリです。8巻くらいまであるようですが、その一巻目が「ねらわれた街」です。フィニイの作品を連想するタイトルです。主人公の蘭は、自分が超能力の持ち主だとは気づいていません。そんな彼女の前に翠という転校生が現れるところから話は始まります。どうも彼女の住んでいる街には、近頃よくわからない事件が起こっている。くまと間違えて人を撃った、火炎瓶が投げ込まれた・・・共通点はある???このような謎に超能力少女は挑みます。事件の真相は本格ミステリ的なガチガチの論理による解決というわけでもないですが、筋は通っており意外性もあるものです。とはいえ、このシリーズの最大の魅力は登場人物の掛け合いかなと思います。結構怖い雰囲気なのに、やりとりがとても笑えるという作品です。憎めない口の悪さがあります。子供向けに思えますが、そうでない人にも読んで楽しめるかと思います。
2021.08.19
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先日、『罪灯』(佐々木丸美)というミステリを紹介しました。今回は、同じ作者の『崖の館』という作品を紹介したいと思います。「館」というと、いわくありげな人物たちが館に閉じ込められて、連続殺人が発生する、などを思い浮かべるかもしれません。館と聞いただけで、ぞくぞくするかもしれません。本作では、かつて館で起こった出来事(女性(千波)の「事件」or「事故」死)への疑惑からストーリーが始まります。その館にすむおばのいとこたちが集まり、「事故」ということに疑惑がもたれます。千波(亡くなった女性)は日記帳を残していた?それはどこにあるのか?探そう。そんなところへ、飾ってあった絵の消失、さらには人間の消失といった事件が起こり始め・・・。という館にふさわしいストーリーが展開していきます。前にも書きましたが、ミステリの仕掛けだけでなく、情景や信条の描写もこの作者の魅力です。始まりはこのような文からです。「目もくらむ断崖。切りたつ岩にうちよせる波。散ってくだけてまたうちよせてくる。冬の波濤は非情に人を拒み隔離された世界を構築してゆく。沖の海は銀盤にゆらめき流れる潮の花を浮かべていた」(7ページ)。いきなり物語の世界に心を飛ばせそうです。また、所々で出てくるミケランジェロ、リルケ、パステルナークなど詩人や画家に関する語りもあり、情景と相まって作品のロマンを形成しています。確かにストーリー的には王道的な館の事件ですが、様々な描写が館を恐ろしいものとしてよりどこか美しく見せている、そのような雰囲気もまた魅力でした。崖の館 (創元推理文庫) [ 佐々木丸美 ]崖の館佐々木丸美コレクション16【電子書籍】[ 佐々木丸美 ]
2021.01.17
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ミステリといえば、殺人をイメージする方も多いともいます。私も実はそうです。そのトリックを読み解き謎を解く興味がある一方、殺伐とした印象がないでもないかもしれません。今日紹介する本『あなたに謎と幸福を』は、基本的にはそういった印象から離れた作品のアンソロジーです。日常生活で発生した謎や事件を解き明かす作品が中心で、読み終わった後にいやな後味が残らない作品を集めています。いくつか収録作品を紹介したいと思います。あなたに謎と幸福を ハートフル・ミステリー傑作選 (PHP文芸文庫) [ 宮部 みゆき ]「割り切れないチョコレート」(近藤史恵)なぜか、19個入りとか23個入とか、割り切れない数のチョコレートが売られている。それはなぜか、という謎。この作品は『タルト・タタンの夢』に収録されています。私はこちらも購入しました。ちょっと料理に詳しくなれる、というおまけもある作品です。タルト・タタンの夢 (創元推理文庫) [ 近藤史恵 ]「次の日」(矢崎存美)これはびっくりするので、多くは語りません。事件としては立てこもりを扱っています。あなたはいったい・・・?「ドルシネアへようこそ」(宮部みゆき)ドルシネアという高級らしいディスコがあるという。速記の勉強をしている青年は、伝言板に「ドルシネアで待っている」と、誰にも当てもなく書いた。まさかそれに返事があるとは…。その返事の理由と正体は?「謎と幸福」にふさわしい宮部みゆきの一品。『返事はいらない』に収録。ミステリに求めるものはいろいろあるでしょうし、いろいろな楽しみもあります。もし、求めるものが謎と、読み終わった後の温かい読後感ならば、この作品集はぴったりだと思います。
2021.01.16
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2020年の創元推理文庫復刊フェアで復刊した『罪灯』を読みました。作者は佐々木丸美という方です。この本は、いわゆるプロバビリティの犯罪を扱った4つの短編からなっています。プロバビリティの犯罪とは、例えば「毎日料理に余分に塩をかける」とか「道を聞かれたとき、事故に合う確率が高そうな道をあえて教える」などのように、それ自体では罪に問われないような行為によって、あわよくば殺しを実行するというような犯罪です。江戸川乱歩の短編「赤い部屋」や谷崎潤一郎の「途上」などが有名です。今日紹介する『罪灯』は、そのような「犯罪」を扱った4つの短編が収録されています。4つは連作で、いずれも春夏秋冬を名前に持つ女性と謎を解く男性が登場します。プロバビリティの犯罪とその発想、どのようにほころびるかということはもちろん興味の中心で、その興味に十分こたえてくれる作品でした。しかし、それだけでなく、「犯人」の女性の感じ方や情景描写も独特で、味わい深いところがこの作品の魅力となっています。例えば「水死体が引き上げられた。彼女の十七年間も彼女を取り巻く憎しみも、やわらかな黄昏に溶けていく。高慢と咲いた大輪は散った。その姿に一抹の憐憫」(16ページ)「私は冬の娘。厚い雲の中、冷たい水の中、寒さに凍結した青春」(22ページ)などのような表現が随所に見られます。トリックだけでなく、描写も味わえます。罪灯 (創元推理文庫) [ 佐々木丸美 ] 谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫) [ 谷崎潤一郎 ]「途上」はこの作品集に収録されています。また、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/cards/001383/card56849.html)にも収録されているので、そちらを使えば無料で読めます。江戸川乱歩全集(第1巻) 屋根裏の散歩者 (光文社文庫) [ 江戸川乱歩 ]「赤い部屋」はこちらに収録されています。また、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/card57181.html)にも収録されているので、そちらを使えば無料で読めます。
2021.01.11
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今日は久しぶりに、ミステリの紹介をしたいと思います。今日紹介するのは宮部みゆきさんの『長い長い殺人』という本です。夜の9時ころ読み始めたのですが、一気に真夜中までかけて読んでしまった、それくらいに引き込まれた本でした。宮部みゆきさんの作品に触れたのはあるアンソロジーにあった「ドルシネアへようこそ」という短編でした。温かみがあり意外性もある作品に引き付けられ、その後いくつか彼女の作品を購入し、読んでいるという次第です。今回の『長い長い殺人』は、財布が語り手をつとめるというところに意外性があります。いろいろな財布が語り手になるので、語り口にバラエティがあって表現的に面白いです。また、明るい作品ではないですが、財布の語りにはユーモアが感じられて、救いになっている面もあります。逆に、動けない財布であるが故のもどかしさもあります。事件の始まりはひき逃げらしき事件なのですが、どうもその事件には裏があるようで、いろいろな人の財布の語りを通して、その事件の全体像が少しずつ見えてくるという構成をとっています。一見関係ない財布が事件にかかわってくるので、続きをどんどん読みたくなってしまうのです。財布だけでなく、デカ長、探偵、少年などキャラクターとそれぞれの心情も印象深いです。長い長い殺人 (光文社文庫) [ 宮部みゆき ]
2021.01.02
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ハヤカワ・ミステリ文庫の『隅の老人』を読みました。一般に、「ホームズのライヴァルたち」と呼ばれる系譜に分類されます。この作品は、女性新聞記者のポリーさんが、コーヒーショップで「隅の老人」から事件の話を聞くという形で話が進んでいきます。その、隅の老人とは奇妙な人物で、少し傲慢っぽく、いつも奇術師よろしく奇妙な結び目を作っている老人です。彼は、時に裁判を傍聴し、事件の情報を仕入れています。彼が話す事件は、どれも奇妙な謎に満ちた事件ばかりです。裁判では、一見すると解決したように見えますが、弁護士の主張や新たな証拠によって、その事件が覆るのが常です。そうして迷宮入りするかに思えた事件を、隅の老人が推理によって解きほぐす。というのがおおよそ各話の共通する骨組みです。隅の老人が虫眼鏡などを使って証拠あつめをするという話ではないので、ぐうの音も出ないほど物的証拠で証明する、というタイプではありません。むしろ、読者もポリー記者とともに、老人の話す真相に驚くといったタイプの作品です。すごくトリッキー、というものではありませんが、意外な真相が驚かしてくれることは確かです。たとえば、カーショーという男が、スメザーストという人に恐喝らしき手紙を送った事件があります。その事件では、カーショーが殺されたらしく、カーショーと会ったスメザーストに容疑がかかります。あった時に、恐喝を逃れるために殺したと考えられます。これで一件落着かと思いきや、カーショーとスメザーストの面会後にカーショーがまだ元気に生きていたという目撃証言が登場し、事態は一転して謎に・・・。という始まりです。明らかな第一容疑者が、どうもそうでないような雲行きに。隅の老人はどういう答えを出すのか???こういった謎の事件が短編で、いくつも収録されています。がちがちの謎解きではありませんが、意外な語りに驚きたい人に勧めます。【中古】 隅の老人 ハヤカワ・ミステリ文庫/バロネス・オルツィ(著者),山田辰夫(著者) 【中古】afb
2020.07.13
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今日は、読書ノートより、『恐怖のヒッチハイカー』(R,L,スタイン)を紹介します。作者のスタインは、「グースバンプス」シリーズという、児童書怪奇物語が知られる人物です。グースバンプスシリーズは、怪奇ものですが、本作『恐怖のヒッチハイカー』はミステリというか、スリラーというか、サスペンスというか、といった作品です。物語は、ヒッチハイクをしているジェームズという男の場面から始まる。彼はカッとしやすい性格で、彼の心には「お願いだから、わたしを傷つけないで…」という声が聞こえている…。そして、二人で自動車に乗っているクリスティーナとテリーが登場する。彼女たちは、ジェームズを自動車に乗せていくのだが・・・。なぜかジェームズは、二人についていくらしい。ラジオでは、老人が高速道路で死んでいたというニュースが流れる。この作品は、読み始めるとノンストップで最後まで行けます。というより、いかないではいられません。最後の最後まで目を離せない展開が続きます。後になって読み返してみると、セリフ回しや人物のやり取りなど、計算されて書かれていることが伝わってきます。一回目は彼女らの「ドライブ」のように駆け抜けるごとく読むことになるでしょう。2回目は、ミスディレクションに注意して、セリフの本当の意味や作者の視点の置き方などを読んでいくと、ひざを打って2度面白いと思います。若干回収しきれていない伏線っぽいものもありますが、2回目で、「だからこういう書き方なのか」と思えるところがたくさん発見できると思います。恐怖のヒッチハイカー/ス6-1【中古】 恐怖のヒッチハイカー/ス6-1 (4087603202 / 9784087603200)
2015.01.12
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ミステリ、でしょうか?本日はポール・オースターの『ガラスの街』を紹介します。発端は間違い電話から。「あなたは、探偵のポール・オースターさんですか?」という深夜の電話。この電話に乗っかって「素人探偵」が乗り出すのだが・・・?どうも依頼は、身を守ってほしいというもののようだ。主人公は、疑いのかかっている人物を尾行、監視していく・・・。読み終わって、あまり読んだことのないような不思議な話という印象が第一に残り、読み終わってなお謎が「バベルの塔」のごとく高くつみあがっている。このバベルの塔は作品中に出てくる一つのモチーフです。そのほか、ドン・キホーテ(本作品自身と重ね合わせられる)や地図など、意味深そうなモチーフが大量に出てきます。しかし、抽象性だけでなく、読み終わってみると、歩き回っている「素人探偵の主人公」や、彼の張り込みの姿、街、図書館、など様々な具体的な場面さえ浮かび上がってくる。「これまでの生涯に自分が行ってきた歩みをすべて図にしたらどんな地図ができるか。その地図には何という言葉をつづるか」(234ページ)【楽天ブックスならいつでも送料無料】ガラスの街 [ ポール・オースター ]
2015.01.11
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今日は、モーリス・ルブランの『水晶の栓』をご紹介します。ルブランの作品は、これまであまり読んだことがなかったのですが、古本屋さんで何気なく手に取って買ってみました。読んでみたら、なかなか面白い。この作品は、ルパンが水晶の栓を探す話なのだが、初めはだれが敵なのかすらわからない状態で、ルパンが苦闘する話なのです。ルパンはカリスマ的怪盗のイメージが強かった自分にとっては、ルパンの苦闘は新鮮です。敵との虚々実々の駆け引きも面白い。ルパンもやられます。それでもあきらめないルパンはまたかっこいい。敵に出し抜かれても、こけにされても、正体がばれても、絶対にあきらめない男ルパン!ミステリであり、かつ、勇気の書でもある。ある面では泥臭い、ルパンのイメージが変わった、そんな作品です。もちろん、隠された水晶の栓がどこにあるのか、という謎も楽しめます。【楽天ブックスならいつでも送料無料】水晶の栓 [ モーリス・ルブラン ]価格:561円(税込、送料込)
2015.01.10
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本日は読書ノートから。フレデリック・ブラウンの『まっ白な嘘』をご紹介。フレデリック・ブラウンはSFからミステリまで幅広い執筆を行った人物です。短編の名手と紹介されていますが、長編もなかなか面白いものが多いですよ。今回は短編集、『まっ白な嘘』です。論理で謎を解いていくタイプとは異なりますが、意外な結末で楽しませてくれるミステリの宝箱です。収録作品を挙げます。「笑う肉屋」は、雪と足跡に関する殺人事件?です。一ひねりされています。「世界がおしまいになった夜」は、世界がおしまいになる、という嘘で人を担ごうとするのですが、思わぬ展開が・・・という話。「叫べ、沈黙よ」は続きが気になる作品。どうなんだろう?「人がいないところに音はあるか」、という哲学の議論が登場。「闇の女」女が暗闇の部屋にいる理由がナイス。「自分の声」は、マジックと一脈通ずるトリックが光る。「史上で最も偉大な詩」は、落ちよりも無人島の描写に引き込まれた。個人的には。どことなくアイリッシュを感じさせる作品かも、と。ところで、さいごのさくひ・・・【楽天ブックスならいつでも送料無料】【夏文庫14】【今年はポイント&海外旅行Wチャンス!】まっ白な嘘 [ フレドリック・ブラウン ]
2014.08.18
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バサバサバサ・・・鳥が急に襲ってきたら、それも群れを成して。どうするだろうか?ダフネ=デュ・モーリアの短編集『鳥』を読みました。デュ=モーリアは格式高い屋敷を舞台に、愛と過去の因縁譚を描いた『レイチェル』や『レベッカ』などを書いた作家です。短編集『鳥』には、ヒッチコックの映画化で知られる表題作のほか、「恋人」「写真家」「モンテ・ヴェリタ」「林檎の木」「番(つがい)」「裂けた時間」「動機」が入っています。「恋人」は、たまたま映画館で出会った男女を描くが、女性には不思議さが漂っている。女性と男性はバスに乗って、墓地のあるところまでいき・・・?「鳥」は、映画版も観ているが、比べても甲乙つけがたい。映画は映画で映像の迫力があるが、こちらは家に閉じ込められての緊迫感や、創造させる怖さがある。「林檎の木」は主人公が庭に生えた林檎の木によってとんでもない目にあう、怪奇テイストの作品。個人的にはかわいそうな主人公ではある、と思う。「番」は、一読?再読してなるほどという作品。「裂けた時間」は、何を言ってもわかってもらえない女性がもどかしい。だが結末は・・・。500ページ近く、いろいろな味の短編があり、物語の面白さを堪能できる一冊です。【送料無料】鳥 [ ダフネ・デュ・モーリアー ]価格:1,050円(税込、送料込)
2014.01.13
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最近、西村京太郎のミステリを何冊か読んでいます。とはいっても、時刻表シリーズではありません。どうも私はその系統が苦手なようです。面白かったが、クロフツの『樽』も決して得意なタイプではありません。西村さんは、初期の頃は鉄道ミステリではない作品を多く残しています。公害や差別など、社会問題をテーマにした作品(『汚染海域』など)『、『怒れる12人の男』のように、証言の矛盾を明かしていく作品(『7人の証人」)、オカルト的な雰囲気のもの(『幻奇島』『鬼女面殺人事件』)、まさに本格ミステリといった作品(『殺しの双曲線』)などなどとあります。なぜこれほどはまったかというと、最初の問題の設定がすばらしかったからだと思います。結構早く事件が起こり、読者を引き込んでいくということもあります。それだけでなく、「誰も乗っていない船が海を漂っていた」というところから始まったり、「警部がいきなり襲われて、なぞの島につれてこられた」というところから始まったりと、読者をいきなりがっしりとつかんでしまいます。あまり犯人当てや、証拠探しといった本格の面を見せてくれることは少ないような気がします。非常に読みやすく、バリエーションに富んでいることも魅力です。ただし、私は時刻表が得意ではないので、後期の作品は苦手かもしれません。個別の作品はまた紹介していきます。
2012.05.17
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『「探偵クラブ」傑作選』という本を読みました。これは、過去の雑誌から作品を選んで編まれた、光文社文庫シリーズの1冊です。もちろん、これ以外にも『「新青年」傑作選』や『「宝石」傑作選』などあるのですが、『「探偵クラブ」傑作選』はそれらの中でも、ちょっと趣が異なっています。な座なら、収録作品が変わっているからです。はじめに「殺人迷路」という作品が収録されています。これは、「完全犯罪は可能か?」という喫茶店での会話に端を発する、連作探偵小説です。話自体もどうなるのかわくわくするものですが、執筆陣の豪華さもわくわくさせます。森下雨村、大下宇陀児、横溝正史、水谷準、江戸川乱歩・・・ワオ!!次には、城昌幸らをはじめとする、数ページの短い「探偵コント」がのっています。水谷準の『僕の「日本探偵小説史」』が特に、著者のうきうき感も伝わってきて面白い。最後は、また風変わりですが、雑誌への投稿作品とそれに対する乱歩の評価が載せられています。短いですが、トリックを使った作品、幻想的な作品、コメディタッチの作品など、いろいろ読めます。乱歩の『黄金仮面』などに題材をとった作品もありました。この異色の短編集、おすすめです。
2011.08.14
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今回も昔の読書メモから。Austin FreemanのMr Polton Explains(『ポルトン氏説明す』)をご紹介します。この作品はもちろんソーンダイク博士シリーズなのですが、な、な、なんと今回の主役はポルトンです。ポルトンは、ソーンダイクの助手にして時計技師。メカニックにたけた人物です。作品の前半はポルトンの伝記です。ポルトンが盗人に間違えられてしまう話や、子どものころから時計を治す技術があったエピソードなどが紹介されています。後半は事件編。モックスデールさんという人らしき焼死体が発見されます。しかも死体の周りにはフィルムが散乱している。くびの骨が折れているが、生前の傷か否かは分からない。ソーンダイクは、その死体を歯や持ち物などの特徴から本当にモックスデールのものかを検討します。この辺りはさすがソーンダイクシリーズです。後にポルトンの時計の知識も生かされてきます。事件自体はそこまで驚愕のものではありませんが、ポルトンにも興味があるソーンダイクファンは読んでもそんのない一冊です。Mr Polton Explains【電子書籍】[ R. Austin Freeman ]
2011.07.29
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今回も昔の読書メモから、Arthur Reeve(アーサー・リーヴ)のThe Silent Bullet(音なしの弾丸)という短編集を紹介したいと思います。本作品のレギュラーメンバーは、科学者探偵のクレイグ・ケネディ、ワトソン役のウォルター・ジェイムソン、警部のオコナーです。ほとんどが、当時最新の科学知識や技術をトリックとして用い、そのトリックを科学に基づきケネディが解き明かすというものです。これはたぶん最初の短編集で、後のもののほうがあもしろさがアップしているような気もしますが、記念すべき初作ということで、まず紹介します。The silent Bullet(音なしの弾丸)銃で撃たれた死体があるが、そのとき銃の音を聞いた人もいなければ、銃の煙を見た人もいない、という事件。The Scientific Cracksman(科学的な金庫破り)鉄壁を誇るはずの金庫が破られた。ケネディは、なんと、一見関係なさそうな電気の使用量の変化に目をつけます。The Bacteriological Detective(細菌学探偵)チフスで死んだ男がいた。たしかに病死なのだが、遺言に引っかかる点があった。筆跡と心臓という意外な組み合わせが面白い。The Deadly tube(死に到るチューブ)グレゴリー医師の放射線治療が失敗し、クローズさんは怪我をした。しかし、ケネディは本当に事故なのかと疑問を持ち、調査に乗り出す。The Seismogroph Mystery(地震計の冒険)『シャーロック・ホームズのライヴァルたち3』(ハヤカワ文庫)に翻訳あり。The Diamond Maker(ダイヤモンド製造者)金庫破りによる宝石盗難事件。しかも、宝石の作り方を知る男までが登場して・・・。The Azure Ringワインライトさんとテンプルトン氏が窒息死体で発見された。しかし、どのようにしてそうなったかははっきりと分からなかった。"Spontaneous Conbustion"(「自然発火」)ラングリーさんの、上半身がこげた死体が発見された。これは、自然発火元璋のなせる業なのだろうか?The Terror in the Air(空中の恐怖)ノートンさんのジャイロスコープをつけた飛行機が2台ともなぞの墜落を起こした。ノートン自身もフライトを試みるが・・・。The Black Hand(黒い手)毒物を使いこなすという秘密組織「黒い手」にゲナーロ氏の娘が誘拐された。ケネディは秘密道具を駆使して「黒い手」に立ち向かう。The Artificial Paradice(人工の天国)行方不明のゲレロ氏の捜索に乗り出したケネディたちは、その過程で「人工の天国」という怪しい店を発見する。ケネディも客に成りすまして突入。The Steel Door(鋼鉄のドア)カジノにいた負け続ける男のなぞ。コメントどの作品に関しても、なぞの設定はとてもよいと思われます。科学的な地恣意を使っているのも面白いが、どちらかというと道具を使ってなぞを解くタイプであり、論理的な推理の積み重ねというタイプではない。言語連想による心理テストや、心臓病と筆跡の関連、薬品発火による金庫破壊など、面白いトリックが満載。毒物も実辞するものを使いながら、よくもここまで多種多様なものを使って作品を書くものだと思います。
2011.02.11
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最近読んだ本ではありませんが、昔まとめたノートが見つかったので、そこに記録されたミステリ洋書を何冊か紹介していきたいと思います。最初は、オースティン=フリーマンの作品The Mystery of 31, New Innを紹介したいと思います。これは科学者探偵ソーンダイク博士が登場する長編で、1912年の作品です。1912年というと『オシリスの眼』(後日紹介)と『静かな目撃者』(未読)の間に位置する作品です。代表作と見る向きは多くないかもしれませんが、冒険の要素、奇怪な発端、手がかりなど十分な骨格を備えた作品です。物語は、ジャーヴィス(ソーンダイク物語のワトソン役)医師のところに、奇妙な患者が来たことから始まります。その患者は、外を見えないようにした車でジャーヴィスをぐるぐる連れまわして「病人」のところまで連れて行きます(ホームズで言えば、「技師の親指」ですね)。どうも、彼の見立てでは(瞳孔の散大などから)モルヒネ中毒ではないかと考えるのですが・・・。ソーンダイク博士もその病人を不審に思い調査を企てるが、場所が分かりません。その場所を突き止める方法も、実にソーンダイクらしい方法です。そのほか、逆さにかけられた絵の手がかりや、割れた硝子からめがねを復元し、その度数から人物を割り出すという彼の本領を十二分に発揮した手がかりもあります。また、ジャーヴィスが犯人に襲撃されるというスリラー的なくだりもあります(ちなみに『赤い拇指紋』では、ソーンダイクが狙われた)。ソーンダイクは秘密の?アイテムを駆使して館に着き、いろいろな手がかりを見つけて何が起こっていたのかを推理していきます。「もう手がかりはそろったのだから、君にも分かるはずだ」とソーンダイクがジャーヴィスに言った言葉が示すように、フェアプレイを目指した本格作品であります。
2011.02.06
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甲賀三郎の『恐ろしい凝視』を読みました。復刻版で、ある古書店にて1000円で購入しました。甲賀三郎というと本格(謎解き、論理)ミステリというイメージが強いですが、本作品ではその枠には収まりきらない作品も多く取り上げられていました。収録作品は 「従弟の死」「大下君の武勇伝」「急行十三時間」「記憶術」「恐ろしき凝視」「錬金術」「嵐と砂金の因果律」「魔の池事件」「戀を拾つた話」「青春への嫉妬」「見えざる敵」「黒衣を纏ふ人」です。私にとって特に面白かったものを紹介します。「急行十三時間」・・・けちな父からお金を出させるために、狂言脅迫事件を演じるものの、そこに本当の事件が交わって・・・?主人公たちは列車でお金を運ぶが、怪しい客が乗り合わせて・・。怪しい客が何人かいるので、誰が犯人かという「フーダニット」の楽しみもある。「錬金術」・・・・小さな禁を生み出すというデモンストレーションは真実なのか、という問題と、高利貸し殺人事件のかかわりは?題名から最後のオチと主人公の職業まで、上手く計算されつくした作品。「嵐と砂金の因果律」・・・嵐の岬の家に二人の男が来て、それぞれが昔の話を物語る。その二人の関係は・・・?雨の夜一人で読むにはちょっと怖いかも。「戀を拾つた話」・・・・主人公はある屋で「瀕死の人」から、他人に成りすましてくれとの依頼を受ける。その目的は?ハッピーエンドかバッドエンドか?自分にとっていまいちだったのは、「大下君の武勇伝」「記憶術」。どちらもユーモラスな作品なのですが、ほかに比べて見所やストーリーの錯綜感にかける。全体的に、いくつかの別の事件が絡まりあっている作品が多く、手がかりに基づいて推理するというよりは作者のストーリーを楽しむとよい。楽しく読める作品集です。【送料無料】恐ろしき凝視復刻版
2011.02.05
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ミステリー文学資料館編『江戸川乱歩と13人の新青年(文学派編)』を読みました。トリックよりも、雰囲気や、怪奇味などを重視した作品を集めたのが「文学派編」です。収録作品一部紹介「レテーロ・エン・ラ・カーヴォ」橋本五郎愛する人に対してつづられた手紙によって構成された作品。最後でひっくり返されます。「柘榴病」瀬下耽水不足に困った船がたどり着いた島には・・・?という話。人間の欲望を見せ付けられる。「レビウガール殺し」延原謙シャーロック・ホームズシリーズの翻訳者としても有名な延原氏による作品。ホームズ作品はにも似た、畑に停められた車と瀕死?の運転手と、後のその消失という奇妙な発端から始まります。「胡桃園の青白き番人」水谷準水谷氏の本領、恋愛的幻想です。「胡桃園」といわれるところに住む人から、友人をそこに招く手紙がかかれます。そして友人が来るのですが・・・。その手紙からしてすでにロマンティックな香りがします。「ジャマイカ氏の実験」城昌幸ある外国人が空中を歩いているのを目撃した。その秘密を聞こうとするが・・・。がんばれジャマイカ氏。【中古】afb【古本】江戸川乱歩と13人の新青年 文学派編/ミステリー文学資料館
2011.01.05
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昔、大学の図書館で借りたという記事を書いたことがあったように思いますが、その本The Shadow of the Wolf (Austin Freeman)を購入して、現在読んでいます。これは、ソーンダイクものの長編ミステリで、おそらく倒叙です。(おそらく、というのはまだ途中までしか読んでいないからです)。二人で船に乗り、その上で一人がもう一人を殺す。死体は水中へ・・・。という話から始まります。大学時代に読んでいた部分もほとんど忘れてしまっているので、意識的にはまっさらな状態からの読書です。この事件にどうやってソーンダイク博士がかかわってくるのか、どうやって死体が見つかるのか、ヒントはどこか、と興味深いところです。ちなみに、「狼の影」というのは、船の航路の途中にあった狼の形をした岩の影のこと。これも手がかりでしょうか?
2010.12.28
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アガサ=クリスティの戯曲『アクナーテン』を読みました。アクナーテンとは古代エジプトのファラオです。高校の世界史ではアメンホテプ4世という名で登場しています、多分。ツタンカーメンの親であり、クフ王などのピラミッドが作られた時代より、いくらか後の時代の王です。彼は、今までエジプトで信仰されていたアモン(アメン)神の信仰を廃止し、アトン(アテン)神の信仰を行うという宗教改革を行おうとした人です。理想と真理に生きようとする彼と、あくまで現実に生きようとする軍人、その二人の危うい信頼、政治的画策をする神官、といろいろな人の思惑・信念が交錯して物語はカタストロフィーへと進んでいきます。たしかに、トリックが生きるミステリではなさそうです。しかし、最後の「殺人」に至る過程を描いたものととらえれば、やはりそれはクリスティ的でもあります。誰が最後の手を下すのか、といった点で。歴史ファン、クリスティファン、そしてミステリファンも楽しめる作品になっていると思います。アクナーテン
2010.12.27
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「読むのに何ヶ月もかかる長い小説」をよみました。その小説は何かって?もちろん、その名のとおり、ウィルキー=コリンズの『月長石』です。厚い厚い小説です。本当に、読むのに何ヶ月もかかりました。必ずしもぐいぐい読ませるというタイプの作品ではないと思うのですが、徐々になぞが明らかになっていく魅力があり、最後まであきさせません。さすがです。人物とそのやり取りも、なかなか個性的に描かれています。多分、登場人物のほとんどが語り手となってもいるので、それが親近感を持たせているのかもしれません。ぜひ、じっくりと味わってみてください。月長石価格:1,260円(税込、送料別)
2010.10.01
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今日ある古本屋で、読みたいと思っていた本に出会うことができました。その本は2冊です。その本はウイリアム・アイリッシュの短編集です。『死の第三ラウンド』と『シルエット』です。どちらも創元推理文庫です。もちろん出会えたことはラッキーでしたが、もうちょっとラッキーだったことがありました。それは、店主様が少し値引きしてくれたことです。背の部分が色あせているからとのことです。私はあまりそのあたりは気にしていなかったので、値引きでラッキーだと思ってしまいました。パラぱらっとめくった限り、中身は読めそうで下ので。読み終わったら、何か書きたいと思います。
2010.07.10
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ウイリアム=アイリッシュの『夜は千の目を持つ』を読みました。情景がありありと思い浮かび、時間がたつのを忘れて読みふけってしまう、そんな点では素敵な作品でした。予言者に死を予言された人を、警察は守りきれるか?予言は当たるのか?といった内容の話が展開されます。その人を守るボディーガード、警察の活動、が交差して描かれ、時間が予言された一転へ向かって進んでいきます。死への恐怖から逃れるためのルーレット遊びの場面や、パーティーのシーン、予言者を見張る場面など、いくつもの場面が頭に残ります。もちろん最初のシーンも。結末は人によっては?という気もしますが、それぞれに考えてくださればよいでしょう。本筋とは関係なさそうですが「モロイ・ドブズ・ソコルスキー」という三人の刑事の名前もなかなか忘れがたい名前に思われるのですが、いかがでしょう。また、予言者は「獅子(ライオン)による死」という予言をしたのですが、どうしてそのような予言の仕方をしたのか、を考えるのも面白いかと思いました。
2010.04.28
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今回はウイリアム・アイリッシュの短編集『裏窓』を紹介します。『幻の女』もよかったですが、『裏窓』を読んでいっそうアイリッシュが好きになりました。謎解き作品、感動作品、いろいろ詰まっています。表題作の「裏窓」は、ヒッチコック監督の映画の原作らしい。映画のほうは見たことがないけれど・・・。そもそも事件なのか?というところから始まります。スリルに満ちた作品。「死体をかつぐ若者」は、倒叙作品?ですが、何よりオチが秀逸。ソーンダイクとは違う路線ですが、これもいい。「じっとみている目」はいちおしの作品。アイディアもさることながら、人物のやり取り、結末までgood。話すことのできない女性が、犯行の計画を聞いた。その犯行を食い止めることはできるのか・・・?「ただならぬ部屋」は、フィルポッツの『灰色の部屋』のように、ある部屋で人が自殺するという出来事が続く(なお、フィルポッツの場合は死因不明)。それを単なる偶然とみなす警察と、それに疑問をもつ一人の男。真相は?トリックが使われており、3人の怪しい人物が登場する本格もの。事件解明の方法がいろいろ工夫されており、読ませます。どれも楽しめる短編ぞろい。ぜひ一読を。
2010.02.11
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ウイリアム=アイリッシュの『黒いアリバイ』を読みました。舞台はラテン・アメリカに存在する架空の都市。そこに、ヒョウが連れられてきます。そのヒョウは逃げだし、のちに、ヒョウが「犯人」と思われる殺人事件が起こります。警察はヒョウの仕業とみなしますが、ヒョウを連れてきた男は、それはヒョウではなく人間の仕業と推理します。真相はどちらか?男が真相を見抜くために取った作戦とその顛末は?この作品の注目は、やはりまず、被害者たちの描写といってよいでしょう。被害者たちの生活がまず描かれ、破滅に向かっていく様子がじわじわと描かれていきます。被害者はそれぞれ基本的に接点のない人ですが、それぞれ夜の墓地やトンネルを抜けた暗い道などの場所で事件に出会います(ぞっとしますね)。それぞれの人は、お買い物に行かされる女子や、愛する人と会いに行く女性など、まさに様々です。また、ところどころに見られる言葉遣いも雰囲気を出しています。「セニョール」とか。また、時折顔を出す「それが都会というものである。お互いに知りもしない人間たちが螺旋の相を描いているのが、そのありようなのだ」などの地の文も魅力的です。タイトルの「アリバイ」というわりには・・・・ですね。ちなみに、登場人物リストにあるセヴァーンさんが見つからない。
2010.01.05
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たまたま古本屋でであった『江川蘭子』というミステリを読み終えました。江川蘭子って何かに似ていますね。そう、江戸川乱歩です。といっても江戸川乱歩(だけの)小説ではありません。これは、何人かの作者によって書かれた合作です。 そのメンバーがまたごうか。横溝正史、甲賀三郎、大下宇陀児、夢野久作、森下雨森、ですよ。江戸川乱歩はまず、両親を殺された江川蘭子という女性の生い立ちを描きます。ちと戯れる蘭子の姿がまさに彼の執筆を物語っています。それからは、蘭子の奇妙な『遊戯』そして、謎の病気の流行などが描かれます。それらをつないでいるのはさすがですが、少し回収し生きれていない部分や、しっくりつながっていないところがあるのも事実です。ただし、前の作家が残したものをどう生かしているかを考え推理しながら読むという、本格推理小説的な楽しみ方もできます。個人的には、謎の「黄死病』がなぜ発生イしたかという解決と、それを防ぐというアザミの花の話がうまいと思いました。ただ、途中で出てきた刑事などの人物が生かしきれなかったところが残念に思います。『江川蘭子』(春陽堂)は品切れのようなので、以下の本へのリンクをはっておきます。江戸川乱歩全集(第7巻)
2009.09.20
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アガサ、クリスティーの『運命の裏木戸』を読みました。この作品は、夫婦の探偵であるトミーとタペンスが活躍するシリーズです。彼らはほかに、『秘密機関』、『NかMか 』などの作品において活躍しています。 本作品は、高齢になり、新たな家を見つけ、そこにすむことになったタペンスたちを待ち受けていた奇妙な本から始まる物語です。タペンスらは、引越し先の前の住民が所有していた本の整理をしています。すると、本の奇妙な箇所にアンダーラインが引かれています。それは暗号らしく、ある死に関するメッセージが浮かび上がってきたのです。特にとミーは最初は半信半疑(もしくはほぼ疑い)だったのですが・・・。トミーとタペンスのシリーズらしく、スパイの絡んだ展開になっています。本作途中で『NかMか』に何度か言及がなされるところもファンとしてはうれしい限りです。 なお、この作品には、犯人に関して、クリスティー作としては変わったところがあると思われます。そのほか、二人の会話のユーモアも魅力。これは『NかMか』 『運命の裏木戸』
2009.03.24
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『毒薬ミステリ傑作選』を読みました。最近復刊されましたが、私が読んだのは古本で買ったものです。値段は700円と決して安くはなかった。ただし内容から考えると安い値段だが。 傑作選と名乗るだけあって、ほかのところで読んだくらい有名な作品も多かったです。私が気に入ったいくつかをコメントをつけて紹介いたしましょう。「夾竹桃」・・・推理モノというよりは復讐劇。私はこの現象を某テレビ番組で見た記憶があ る。「事故」・・・・クリスティ大先生の作品。ある女性の身辺では「事故死」がよく起こってい る。エヴァンズ(謎の、ではないですよ)は、次なる事故を防ぐため乗りこむが・・・。意外な被害者の作品?でしょうか?「バーナビー事件」・・・・ソーンダイク博士が活躍する作品。アトロピンという薬品に弱い被害者が、何が元なのか不明にもかかわらずアトロピン中毒にかかってしまうというお話。知識なくしてこの謎は解けません。「かわいい」凶器です。 そのほか、バークリーの「偶然の審判」、セイヤーズの「疑惑」などなど合計13作品を楽しめます。さらにボンドによる毒に関するエッセイ付き。なんと豪華な!!でも豪華な「料理」に注意。きっと毒が入っていますよ・・・ミステリ中毒にかかってしまうような・・・。(参考までに、古本の写真)
2009.03.04
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春陽文庫の『清風荘事件』(松本泰)を読みました。 確かに謎が提示されて、解決される(実は一部解決されないのだが)という点で、確かに推理小説的なのですが、どうも推理小説らしくない作品です。(広い意味での「探偵小説」ではあるだろうが)。たとえば、「毒杯」では、ひとつの杯から何人かの人がカクテルを飲んだにもかかわらず、最後に飲んだ人だけが変死を遂げます。これは確かに不可能な状況に見えます。さらに、カクテルを作った人が逃走したり、近所の店で毒薬が盗まれていたことが判明したりと、ミステリらしい展開が見られます。しかし、それらの謎は、証拠と推理の積み重ねというよりは、スリラーのようにあちこち探索した結果たまたま解決されるといったほうが近いと思います。もちろんそれはそれでいいのですが、サスペンスの味にはかけている気もします。結末は、ちょっと肩透かしを食らったようなトリックです。 また、ほかの作品「赤行嚢(あかこうのう)の謎」も、夫のしたい家にあり妻は失踪、凶器はあったがそこについているのは殺された夫の血ではないという謎あふれる状況設定から始まっています。しかし、犯行の謎は推理によってではなく、ほかの方法で明かされます。 推理や証拠の積み上げでもなく、かといってスリルに満ちているわけでもないといったところはやや不満ではありますが、なかなかいい味を出しているところも多いです。たとえば、上述したように、状況の設定は推理小説としても不足ありません。さらに、例外はあるもののさっぱりした、ハッピーエンドで終わっている作品が多いのもよいところだと思います。殺人というものを扱っていつつも、肯定的なものとして描きうる人間のドラマを表現したかったのではないかなと思わせます。ただし、末尾を飾る作品「謎の町」は、オチがよくわからず「謎のオチ」になっています。気のせいか、今日の日記もそうなってしまいました。松本泰(1887~1939)解説によると、日本探偵小説のスタートを切り開いた一人とのこと。英国文化の影響を強く受けているそうだ。エドガー=ウォーレスの『血染めの鍵』の翻訳者。個人的には翻訳者だったということよりも、結構ウォーレスが日本に紹介されていたんだなぁと言うところに関心有。
2009.03.02
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木々高太郎の『網膜脈視症』を読了しました。タイトルは奇妙です。表題作は、妙な状態になった患者が大心池(おおころち)先生のところにくる、という話です。大心池先生は患者の症状に精神分析的検討を加え、その背後にある事件を見抜きます。症状は動物恐怖症や父親への嫌悪と愛好という両者の出現などです。エディプス・コンプレックスなどの概念を用い、フロイト流の(まさにそのものだが)推理を行います。 「就眠儀式」もそれに似た話です。寝る前に刃物をすべてしまったり、時計を止めたり、扉を開けたりしないと眠れないという症状の患者です。ここに犯罪がどうつながるのか?時計とは何の象徴なのか?性還元的に見られがちなフロイトの説を乗り越えているところも興味深い。 「妄想の原理」は、てんかんの発作中に犯罪を起こしても無罪になるということをテーマにした話。容疑者の病はまことか否か、大心池はライヴァルの学者と対決します。 そのほか、「胆嚢」というさらに奇妙なタイトルの話もあります。これは戯曲で、推理でもありますが、どちらかというと犯罪ストーリーです。ここにも精神分析的な伏流が流れています。
2009.02.25
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この前古書店で購入したと書いた『小酒井不木全集』を読み終えました。SF(変格探偵小説)、スリラー的小説、推理モノ、とバラエティにとんだ作品が収録されています。 代表作の人工心臓や時代物の龍門党異聞など、面白い作品が多かったですが、私はここでは少年探偵物を取り上げます。なぜかというに、そこにはソーンダイクそっくりの俊夫少年探偵が登場するからです。 俊夫君は少年ですが、実験室を持ち、紫外線から指紋検出方までさまざまな科学探偵技術を駆使し、警察にも信頼される存在です。彼の活躍を扱った作品がいくつか載っていますが、その内容がソーンダイクシリーズに大いに似ています。ほこりを探ってそのほこりのあった場所を推定する姿はまさにソーンダイク博士そのもの。また、倒叙をあつかった作品もあり、まさにソーンダイクです。 近頃ソーンダイクシリーズを読んでいないので、どことなく懐かしい気分になりました。
2009.02.14
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現在『現代大衆文学全集 7 小酒井不木集』(平凡社)を読んでいます。ある古書店で100円で売っていたのですぐに買ったものです。1000ページほどある作品で、今半分くらいのところを読んでいます。疑問の黒枠という長編が収録されていますが、なぞが積み重なっている点、犯人の意外性などは面白い作品でした。ただ、犯人を追う推理の展開としては(尼t利こつこつと証拠を追うものではなく)不十分かもしれません。しかし、生きている人の死亡広告や、模擬葬式、なぞの遺言や、誰も彼も怪しく見える人々、など、聞いただけでも興味を引く内容が詰まっています。そのほかは恋愛曲線などの短編を多く含んでいます。「メデューサの首」などは、以前紹介した『大雷雨夜の殺人』にも収録されている作品がいくつかありました。読み終わったら詳しく紹介します。 なお、最近マジック関係の紹介をあまりしていませんでしたが、今読もうとしている洋書がいくつかあるので予告します。Walter GibsonThe New Magician's Manual同じくギブソンのProfessional Magic for Amateurs
2009.02.01
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結構先の話ですが、ミステリに関する新刊があるそうなので紹介します。『英文学の地下水脈 古典ミステリ研究―黒岩涙香翻案原典からクイーンまで』という本です。小森健太朗の著作です。大学時代に「英文学の地下水脈」という同氏のファーガス・ヒュームを論じた論文を読んだ記憶があり、とても興味深かったように覚えています。そのため、この本も期待でき、大いに楽しみにしているところです。 この本で紹介されるらしいメアリー・ブラッドンは洋書で途中まで読みましたが、ミステリ史にどのように位置づけられるか詳しく知らないのでそのあたりも読みたいと思います。また、知らない作家も多く取り上げられた洋書の参考文献・読書案内のような役割をも持つ本だったらなぁと個人的に期待しています。購入したらまた紹介します。
2009.01.26
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お久しぶりです。今回は、ミステリを一冊紹介いたします。水谷準の『殺人狂想曲』という作品です。表題作ほか、「闇に呼ぶ声」「瀕死の白鳥」が収録されています。表題作は、『ファントマ』という作品の翻案だそうで、確かに飜倒馬(フアントウマ)という名前が出てきます。殺人狂想曲という名のとおり大量の殺人事件が発生します。犯人を追う什武(ジュウブ)がなかなかの切れ者なので、探偵がへまばっかりやっているようなルパン的な作品とは異なり、怪人と探偵との追っかけっこです。どちらが勝つかは最後になるまで、もしくは最後になってもわからないかもしれません。 ほかの2作も推理というよりは犯罪物・スリラー物という様子です。個人的には雰囲気など乱歩のほうが好きですが、これはこれでいいのかもしれません。ただ、なぜかはわからないのですが、読んでいていまいちわくわく感にかけるような思いがぬぐえませんでした。これは作品のせいか私のせいか不明です。
2009.01.19
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最近もしくはちょっと前にポプラ文庫から江戸川乱歩の『サーカスの怪人』が発売されていたので、読んでみました。トリックそのものはどことなく少年向けで、想像のつきやすいものでした。でも大人向けのスリラー作品に見られるわくわく感はそのままで、怪人との知恵比べや怪人に捕まると言うピンチなどは十分に見所があります。そんな馬鹿な!と言うところもかえって楽しんでしまえばよいのではないでしょうか。この作品は今までに詠んだことがなかったので、てっきり道化師の軍団が襲ってくるのかと思いましたがそうではないようです。ただ空中ブランコや動物使いのシーンなどは登場します。小学校のころには『透明怪人』や『怪奇四十面相』などを楽しんだ記憶があるので、そういったものも再出版されればと思っています。
2008.12.27
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ついに、アガサクリスティの作品、そしてポアロ最後の事件『カーテン』を読んでしまいました。ポアロに何かが起こるようで、読もうか読むまいかと長く迷った挙句、ついに読んでしまったのです。内容は明かしませんが、読んだ後しばらくボーっと立ち尽くしてしまう作品です。「犯人」が意外なのはもちろんのこと事件の結末までが驚かされるものでした。(紹介文から推測はしていたものの)。 事件の舞台はスタイルズ荘。前にスタイルズ荘の怪事件があった場所ですね。へースティングスやポアロの従者ジョージなどは出てきますが、他になつかしの人物は出てきませんし、(これは時の流れのせいか)回想のようなものもあまりありません。そういう雰囲気の作品でないからかもしれませんが、なつかしの人物に会いたかった。あるいは単に作成年代のせい(最終作とは言うが実際に書かれたのは中期)なのかもしれません。 初期の段階で読むべき作品とは思えませんが、煮詰まってきたころにぜひ。犯人、意外性なども楽しめます。
2008.10.04
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ミステリとは少し違うかもしれませんが、コナン・ドイルの陸の海賊を読み終えました。『クルンバーの謎』に続いてドイルのホームズものではない作品が読めるのは大変喜ばしいことです。 内容は、ボクシングの話、クリケットという球技の話、海賊の話、などまさにスポーツ・冒険の物語集です。医学生が学資金を得るためにボクシングの試合に登場する「クロックスリーの王者」屋、意外な相手とボクシングの試合をする「ブローカスの暴れん坊」、推理小説の面影がある「シャーキー船長行状記」、ユーモアにあふれたクリケット物語の「スペティグの魔球」などの作品を含んでいます。 わたしが最も面白いと思ったのは「スペティグの魔球」です。主人公が一見してたいしたことなさそうに見える青年であるにもかかわらず、(時には見たところのままであるが)謎の魔球を投げて活躍するのです。その落差は面白いです。それだけでなく、青年が選手になる家庭や人々の反応もユーモアたっぷりに描かれています。 解説については、ドイルの伝記やスポーツのルールなどいろいろなことに言及しています。その中で「英国的公正」というのがあったのですが、その解説がもっと長かったらなsと思いました。このような小説には、今・こことは違ったものに触れることを味わい楽しむという面があると思います。文化を知ることも楽しみでしょう。それなので、イギリスの伝統的考え方を収めておけばますます異世界を楽しめると思うのです。 作品の内容については、バラエティーに富んでいるところが魅力的です。もちろんドイルのことですからどの作品においても楽しませてくれます。しかし作品によって、ユーモアに触れる部分が多いもの、スリルのあるもの、謎を含んだもの、意外な展開を含むものなどいろいろな面を堪能することができるようになっています。まさに「多面体としてのドイル」なのです。
2008.07.06
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