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June 28, 2005
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カテゴリ: 作品
シン・・・シン

 雪は降っている
あたり一面を覆い隠すように降り積もった雪は全てを白銀の世界に変えている

それは二人の上にも容赦なく降り積もっていた。
聞えてくる音と言えば雪の降り積もる音以外には何も無い。
「何をしているのですか?」荒れた口調で千夜は背後の気配に言い放った、振り向かなかったのはそこに殺意を感じなかったからに他ならない。
「迷惑ついでに聞いて欲しい私には生き別れの弟が居る名を・終・と言う頼む弟の事を・・・」
「・・・」長い間沈黙は続いたのち「わかりました」彼女はそれだけ言った。
それを聞くと初は気配を消し去った、そこにはもう二人以外は居なかった。

その波動を知る者が居た桜華学園の制服を着たジュリア=ロールは
「鬼か鬼追いの一族・・・千一夜」そう呟いた。
そこには降る雪よりも白い石が浮遊していたが、石はフッと彼女の胸の辺りまで来て消えてしまった。
「・・・と鬼と」そのうつろな黒い瞳は何を見ているのか我等らには見えないものでも見ているかの様だった。

 花が舞い風が踊る新芽を芽吹いた木々が若緑の葉を陽に照らし風にざわめく声を肌に感じて過ごすのが千草の日課と成っていた。日替わりで着せてくれる浴衣もお気に入りで今日も二つの屋敷を繋ぐ渡り廊下に腰掛て風を感じていた。
「綺麗な桜だったな」千草は一人呟いた、若葉と見たあの時の桜を思い。
「さくら」
「そうこれが桜」
少女は桜を知らなかった。この世界の殆どの事を知らない。

幾度学校の帰りに尋ねてきても相変わらず桜子とは顔を合わせようとしない若葉の質問にもあいまいな答えしか返っては来なかった。困り果て顔を見舞わせた二人だったが、若葉から思い出し笑いが漏れた。
「どうなさいました」

「千草よりはまともそうね」
「桜子さん義理の叔母に当たる人よ口を慎みなさい」
若葉は語尾を強めてたしなめたが内心では桜子に同調していた。千草は本当に幼い子供だった感情をむき出しに表現してくる、千夜の周りの事を考える部分が抜け落ちたようにそっくりなのだ。それで居て高度な術法を使う。
「そう言えば」若葉はジュリアの事を口にしかけてためらった。下手に警戒させては相手の考えが見えなくなる恐れを考えたから、あえて話をそらして言った。
「成績が落ちているそうですが」

安心したように千草は着物のすそに身をゆだねた。
木の人形のように細くて軽いからだからは重みを感じられない、それでいて確かな存在感だけがそこには在った。
いとおしむ様にその身体を抱きしめ夕暮れの空を眺めていた。

 逃げるように仮屋敷に戻って来ると前に千草を連れてきた「竹林の間」に来ていた。
風が竹林を揺らすその音が好きだった。ここに来たばかり頃は良くこの部屋で泣いていたものだ、すると不思議な事に悲しみみがスーと消えていくような気がした。
だから弱々しく頼りないあの子を抱きしめ何も迷わずこの部屋を与えた。だから居なくなった時は何としても連れ戻そうとしたが千草が自分の事を怖がっていると知りそれは断念したかわり帰ったら毎日でも会いに行こうと決めたのだったが今だに嫌われたままの現状が悲しかった。
何かしらの不思議な力を持つ者同士なのだから通じ合うものがあると思えたのだが何の接点も見出してはいない。
「ようブツブツ姉ちゃん」背後で聞きなれた不快な笑い声がした親戚の真坂 悟である。
「何か様でも」ぶっきら棒に言葉を投げ返した。一番会いたくない人物だった彼は本当の家族の親戚だがよく独り言を言っていると今のように言って近付いてくるのだった、本当ならば彼の両親の元に引取られるはずだったが小夜に能力を見出され修行を兼ねて養女となった。
桜子自身は厳しい修行の日々にうんざりしたが真坂家で彼と暮らす位ならば辛い修行の方が楽に思えた。
「ああっお前んとこで引取ったの隠し子と違うのか」
その途端手とうが悟の前に飛び彼は飛びのいた。
「脅かすなよ冗談だ実は気になる事があって来た可愛いんだって」悟は桜子の胸の辺りに目を凝らして言った。いつもの事だったが、それが堪らなく嫌いで仕方ない。
「それで」桜子は腕組をして胸を隠した。
「見たんだってさ桜庭画伯のアトリエにその子がいたって言うのがいる」
いくら情報操作をすると言ってもこう言った噂までは消せないのが現状だった。
「気のせいでしょう」親戚とはいえ部外者に鬼関係の話は出来ない。仕方なく適当にごまかすしかないようだが悟は感が良いのか。
「この家こんだけでかいのに使用人も呼び鈴も無し無用心だよな、しかもここ本家ではないじないか」
確かにおかしな話だろう桜子は養女とは言え跡取りだし、小夜にしても本家には殆ど行った事がない。鬼と戦う能力者はこの仮屋敷に住む事に成っている、三風家などのとの連絡の拠点としてここに居ることが都合が良かった。その為、隣の寺は本来の機能は持っていない事を隠す為に常に開放している実際観光客が寺の収入源なので見学したければ奥に入ても一切騒がない。その代わりに、周りには結界が張られ魔の者が入れないようになっている反面同族の潜入を許す事がある。
「お前うち来ないか眺めがいいもん」
なめるような視線で全身を眺めた。
ボコ
本気で殴ってしまった。真面目な話でどう答えようか迷っていたのに、そんな話に落とされては馬鹿みたいではないか
「ひとめその千草って子も見てみたいな」
殴られた頭を抱えながらまだ言っている。
彼女は手で帰る様に合図して部屋から追い出した。
「もうっ心配してくれていたと思って見直したのに撤回やっぱりあいつは嫌い」

 夕暮れ時若いカップルが渡り廊下で眠っている少女を発見した。
「可愛い」男の方が思わず感想を漏らし、写真を撮ろうとした。
「止めなさい眠っているのよ失礼でしょうお寺の子かしら」
少女の方は多少常識があるようだ。
「でもほんと可愛いお人形みたい」
「だろう起きないかな、それなら写真とっても良いだろう」
「そうね記念になるわね」
二人は寝息を立てて眠る少女を暫く眺めた近くに若葉はいない眠った隙に離れていた彼女も千草にべったりというわけには行かない。
「起きないわね」痺れを切らした少女は長くなった影が薄闇に消えかけているのを気にしながらコンビニで買ってきたタオルをかけ。
「寒くない」幼い少女に呼びかけるように優しく囁いた。
「あらスミマセンね、うちの子眠ってしまったようで」
寺側から現われた和服姿の女性に二人はビックリして硬直した。特にこっそり写真を撮ろうとしていた男の方はカメラを落とした。
「御免なさいこの子カメラ嫌いなの」
若葉が言うとあわてて二人は逃げ出した。
千草を抱きかかえ背を向け茂みに隠れる悟るには。
「早く謝った方が良いですよ」
彼もまたコッソリ写真を撮ろうとした一人であった。

 うっそうと生い茂る木々の森、陽の光の届かない薄暗い世界で光を見失った影がうごめく、ある者は天を仰ぎある者は地にうずくまり闇そのものに飲まれて行くもはや抗う意思等存在しないが如く何の抵抗も無く同化していく。その中に初の姿があった、彼もまた闇に飲まれようとしていた。
「雨?」声に力は無かったがハッキリと呟き天を仰いだ、ここに雨など降るはずが無いが確かに細かな水の粒が落ちている。
それが彼に闇との同化をわずかに遅らせた。そこでは先に行った者が手を振って早く来いと促しているようだ。遠くで誰かの歌声が神楽の音に乗せて幽かに記憶を手繰らせた。
「これは・・・」
だが彼の思考はそこまでだった、黒い世界に覆われ何も見えず何も聞こえなくなった。

 お寺から逃げるように走ってきた二人は近くの公園で一休みしていた。
「あービックリした」
「写真なんか撮ろうとするから」
荒れた息を整えベンチに腰を下ろした。緑の若葉をつけた木々が夜風に優しくそよいでいる。
よく見渡すと辺りには似たようなアベックが転々と隠れるように薄闇に身を寄せている。
しだいに引かれ合い縺れ込む男女の姿が二人の視界にあった。
ゴクッと男はつばを飲み震える手を少女の方に伸ばした、少女も身体を固めてはいたが拒む事は無くその手のなすままにしている。やがて向かい合い互いの唇を寄せ合った。
もはや言葉など要らない自然と身体が何をすべきかを知っているようだ。
彼の手が洋服の上から胸をさすりやがて下半身に向かったとき一瞬拒むように身を放そうとしたがそれも一瞬の戸惑いに過ぎなかった。その優しい指使いに酔いしれていた。
ザワ
わずかに空間が揺れる
だが春の陽気と闇の魔力に互いの感情に支配された者には感じることも出来ないわずかな揺らめき
そしてその揺らめき自体が意思を持つ存在であるかのように慎重に獲物を狙うハンターの様に辺りを警戒しつつも近付いていた。

 桜子は走っていた、又叱られるかもでも今は急がないと、そんな思いが過っていたが一方で喜んでもいた。
「お願い助けて」突然千草の声がした、初めて聞いた気がしたが懐かしい声の様な気がした。
不思議な気もしたが今は気にしている時ではない様だ、鈴も頻りに鳴っていた。
彼女はとにかく外に飛び出した何が起きているのかは相変わらず解らなかったがあの時と同じで身体の中から音は響いた。
「これは鬼の気じゃない」公園について感じたのは前に感じた気配とは別のものだった。
あの時感じた悲しい感覚とは違う美味しい物を食べる時の嬉しそうな感覚が桜子の心を刺激した。
人々は眠っているようだ外傷は無くただ眠っているようだった。
「姉御も見学かいみんな寝てるんだよ一体今日は何だか」
背後でまくし立てたのは悟だった、最初驚いたが不謹慎な態度に怒りがこみ上げてきた。
「チェ今回は空振りか」
「貴方は何時もこんな事を・・・」
そう言いかけた言葉を飲み込んだ・・・
「眠っていた」心の中で呟くとあの気配も消えていた。
「悟みんな寝てたの貴方が来た時」
「そうだよ何時もならイチャイチャしてるのに今日は何だかな」と桜子が話を聞かなくなっても彼はしゃべり続けている。
彼女は一人の肩をつかみゆすってみたが眠りが覚める事はなかった。
「止めとけよ目が覚めたとき人が居たら気まずいだろ」と悟は場慣れした口調で言った。
反論しかけた桜子の目の前にジュリアが居た。
「どうしたの千一夜さんこれは」
桜子は見た通りを話した。
「警察と病院に電話しましょう貴方も手伝って」近くに居た悟に言った。
悟は仕方なく従う事にした相手が先生と聞いては逆らえなかったのか手伝ってくれた。
警察の調書等でスッカリ暗くなってから帰ると仮屋敷の入り口に若葉と千草の二人が立っていた。
如何しても待つと言って聞かなかったらしく若葉は仕方なく言う通にしたらしい。
さすがに疲れたのか桜子の姿を確認すると眠ってしまった。
「この子なりの気持ちの表現ね」若葉が桜子に言って聞かせた。
「ありがとうお陰で無事に済んだよ」可愛い寝顔を撫でてやった。
暗い闇夜の出来事だった。





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Last updated  June 28, 2005 06:13:13 PM
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