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2006年07月06日
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カテゴリ: 家族のこと


月に一度は通院し、発作の時の薬(ニトロ)をいつも携帯していた。

発作が起きるといっても、軽いものが多くて、来たな~と思うとすぐにニトロを舌の下へ入れて
静かにしていると、だんだん良くなってくるようだった。

毎年秋になると発作が増えていたので、寒くなってくる季節は怖かった。
万が一のことを考えるのが辛かったけど、そういう時にすぐに困るのがかえでなので、
もし母が急に倒れたら・・・死んでしまったら・・・お葬式の時はどうすればいいんだろう。
真っ先にそれを考えなくてはいけない。

そのために3年生の時から、お泊りの練習をしておこうと、
かえでの通っている養護学校に隣接した更生施設(入寮制の施設)で、
年に数回のショートステイのお泊りをさせてもらった。


その年の母は、いつもの秋より調子が良くて、発作もほとんどないし、
母の兄弟で旅行に行ったり、家事もけっこうやってくれたりしていて、
私も母にお願いして仕事に行くことも多かった。

仕事先の上司のWさん(トルシエ監督似のオジサン^^)は、
「あんまりお母さんを甘やかさないで、ある程度仕事をしてもらった方が、
 お母さんも張り合いがあっていいんじゃない?」

なんて言ってくれて、それもそうだなと思ったりしたくらい、母は元気だった。


でもある日の夕方、母は急に息苦しさと背中の激痛を訴えて、倒れこんだ。
いつもの発作と違うみたいだった。
とりあえずニトロを入れたけど痛みは治まらないようで、かなり苦しんでいた。

たまたま私は用事があって仕事を休んで、午後は家の中の掃除をしていた。

ドキドキしながら 「救急車呼ぶ?」 と聞くと、苦しそうに頷いた。

父に電話をしてもらう。
でもこういう時って、男はホントに役に立たない。
「救急車って何番だ?」 とか言ってる。
「はぁ?」 って感じ(-_-;)

待っている時間が長かった。

かえではそのままショートステイで泊まれるか、施設に電話をする。
「係りの者がいないのでわからないんですが」 と頼りない返事だった。

午後の4時。

私が一緒に救急車に乗り込みながら、施設の事務職員に
「緊急なので、今夜泊めてください!」 と切羽詰った声を出したせいか、
「折り返し連絡入れますので」 とむこうも慌てていた。

こういう緊急な時のために今まで練習したのに


そう、ついにこの日が来たのだった。


母は、病院に着いてすぐ検査をしてもらうと、動脈の血管が解離しているらしかった。
私もよくわからなかったけど、石原祐次郎と同じ病気だと言われた。
血管の壁の内側がはがれているので、その部分の血管を取り替える手術が必要らしい。
ここの病院ではそういう大きな手術が出来ないので、違う病院に行くしかないという。

すぐに手配されて、救急車で搬送されることになった。
また私が一緒に乗り込んだ。
父は自分の車で追いかける。

高速道路に入ると、途中事故渋滞
救急車は路側帯を思い切り走っていった。

母はずっと苦しそうだったけど、意識はあった。眉間にシワをよせていた。

「もうすぐだからね」 と声を掛けると、 「うんうん」 と言った。

もしかしてこれが最後になるかもしれないと思うと、たまらなかった。
覚悟していなくては・・・
母の手を握り締め、こみ上げて来るのもをグッと飲み込んだ。

とにかく、かえでのことはショートステイや学校の先生に任せよう。
娘達のことは、夫に任せよう。
今は母のことだけを考えよう。

いろんなことが頭の中でいっぱいになっていたけど、私がしっかりしなくちゃ!
押し寄せてくる恐怖と、責任感とで、複雑な思いだった。


夜の7時に手術が始まった。
父と私は、手術の詳しい説明を受けた。
助かる確率は30%だと言った。
大きな手術だから、助かっても後遺症が残る可能性もある。
時間も7~10時間はかかるだろうとのこと。

ただでさえ体力が無い母のことだから、助かる可能性はもっと低いだろうと思った。
諦めてはいけないけど、気休めの手術のような気がした。


待合室のような小さな部屋で、父と二人で手術が終わるのを待っていた。
約束の7時間が過ぎても、何の連絡もなく、だんだんと最悪の事態を考えるようになっていた。

まだ助かるかもしれないのに、
もし今日亡くなったら、お葬式はいつになるんだろう。
友引が入ったら延びるなぁ。
かえではいつまでショートステイを頼めばいいんだろう。
それより家の中の片付けはどうしようか。
洗濯物がたたんでなかったけど、娘達がやってくれるだろうか?

そんなことをボ~ッと考えていた。



手術室の前に行くと、先生が説明してくれて、
「いろいろと手は尽くしましたが、もう・・・」  というようなことを言った。

ドラマのワンシーンのようだった。

「そうですか。ありがとうございました」 と父が頭を下げた。

私が泣き崩れた。
看護師さんが私の背中を擦ってくれて、
あぁ、看護師さんってやさしいんだな~なんてどこか冷静だった。


施設に電話を入れて、
母が亡くなったので、とりあえず葬儀が終わるまでかえでを泊まらせてほしいとお願いした。

かえでは、一泊しかしたことがないから、連泊させることにすごく不安があった。
一泊したら帰れると思っているだろうな。
今日、学校が終わって学童保育に行って、時間になったら私が迎えに来ると思っているだろうな。
でも来ないとわかったら、不安定になって泣いて怒るだろうな。
夜には落ち着いて眠ってくれるかしら?
ただでさえ暴走しているような時期だったので、これ以上不安定にさせたくないけど仕方がない。


ごめんね、かえで。
おばあちゃん、死んじゃったよ・・・
あんな大好きなおばあちゃんなのに、もう会えないんだよ。
かえでは、もうおばあちゃんに触れる事も話すことも出来なくなっちゃったんだよ。
おばあちゃんとお別れくらいさせてあげたいな。

現実的に、死んでしまったおばあちゃんに会ってお別れすることは無理だった。
かえでが混乱することは目に見えているし、
私ももう気持ちがいっぱいで、それどころではなかった。

夫も泣いていた。
自分の親ではないけど、母が亡くなって、一緒に泣いてくれたことは、嬉しかった。



その2日後、バタバタと葬儀がおわり、
3日間寝ていなかったせいか、さすがに疲れて爆睡してしまった。
かえでのことを考える余裕もなかった。

お通夜の時に、ショートステイの受け入れ担当の先生が来て下さって、
かえでは元気に落ち着いて過ごしているから大丈夫です、と言ってくださったので、
それで安心していられたのだと思う。
周りの人達の心遣いがありがたかった。



葬儀の翌日、4泊5日のショートステイを無事に過ごしてかえでが帰宅した。
白と黒の幕が掛かっている部屋や、きらきらする祭壇や、おばあちゃんの遺影を見て、
不思議そうな顔をしていたけど、ひととおり眺めたあとは、普段どおりに、
小さいスナック菓子と納豆を食べて、祭壇の前で、広告をハサミでチョキチョキして、
宇宙との交信の儀式をしながら、宇宙の言葉をゴニョゴニョと言っていた。

何だかホッとしてしまった。
かえでには、人の死を普通に理解することさえ出来ない。
それがかえって良かったように思った。
おばあちゃんがいないのは、旅行か何かで留守にしているだけくらいに思っているようだった。
この先どうなるかわからないけど、とりあえずこのまま落ち着いて過ごしてくれればありがたい。


私の中では一件落着って感じで、これまでの私の人生の中での最大のイベントが終わった。






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最終更新日  2006年07月06日 09時56分36秒
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