2004年07月07日
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フィリピンはとてつもなく貧富の差がある、と聞いていた。
しかしあれほどまでにひどいとは思ってもみなかった。
マニラは首都だからきっと大都会なのだろうと思っていた自分が甘かった。もちろん金持ちの住む地域では日本と変わらないくらいの高層ビルが林立し、街も整備されていてきれいだったが、一歩そこから出ると、今までに見たこともない廃墟のような家で何十人も住んでいる人々がいた。
いや、家があるだけならまだマシなのだろう。家もなく外で野宿のように暮らしている子供たちを見ると何とも言えない気持ちになってしまった。そして俺たち日本人をみると片言の日本語で「私、可愛そう」といってお金を要求してくる。たったの5歳かそこらの子供がだ。

夜ホテルのベランダから空を見上げると星なんて見えなかった。あんなに晴れていたのに。きっと空気が汚染されていて見れないのだろう。フィリピンに行くつい数日前にはエアーズロックで散りばめられた星を見て感動していたから尚更だ。この街に希望なんて言葉はあるのだろうか。

ボランティアでは主に抜歯をする歯医者の手伝いをしていたのだが(貧困のため歯医者に行って痛む歯すら抜けない人が多いので)、初めて見る光景に最初はゾッとした。
抜歯するために歯茎をえぐり口の中に広がる出血、抜歯された歯を見て最初は気分が悪くなった。しかし慣れてくると、そんなことよりも、どの人も歯がほとんどないってことに気づいた。ただでさえ歯がほとんどないのにまだ抜くのだろうか?
そう、入れ歯を作るにも大金がかかる。しかし虫歯のままほっておいても痛むだけ。ならいっそのこと抜いてしまえ。それが彼らの考えなのである。それに彼らの栄養状態は非常に悪く、歯ももろい。だから簡単に抜け落ちてしまうのだろう。
それでも治療を終えると幸せそうにありがとうって言ってくれる。何百人もの抜歯光景を見た。何度も目を逸らしたくなったが、この現実をしっかり見ておかないとと思い、患者たちの口元をライトで照らし続けていた。


彼は日本に行くことが夢らしく、いつか日本で暮らしたいと言っていた。でも俺が「日本なんて疲れるだけでろくなことないよ、俺は日本で一生暮らしたいとは思わない」と言ったら、「何となくその気持ちはわかる、でもお金があるだけ幸せじゃない?」言われた。

彼らにとっては心の余裕なんてものよりもお金がまず一番大切なのだろう。彼は大学に行って、日本に留学したいと言っていたが、そんなお金もない。携帯やパソコンで連絡とろうと思っても彼には買うお金もない。だから当然俺が日本に帰ってからも手紙でやり取りだ。手紙ですら彼らにとっては高いのだから、おそらく俺が一方的に手紙を送るっていうことになるのかもしれない。しかしそれも仕方がない。

フィリピンでは物価はぶったまげるほど安い。
デパートの服を見ていても、Tシャツがたったの200円くらいで売っていたり、ミネラルウォーターなんてたったの10円である。金持ちエリアの高級ブランド店ですら、日本の半額程度で売っている。しかしフィリピンの人々にとってはそれは大金なのは言うまでもない。彼らの平均日給はたったの400円程度なのだから。

フィリピン滞在最終日にクレコドール島という場所へ観光しに行った。そこは戦時中、日本軍が大量に攻めてきた場所であり、また日本兵が大量に命を落とした場所でもある。
大自然が残るそのなかに、土に帰ることもなく大量の大砲や戦車、破壊された建物の残骸が安らかに眠るように残っていた。
石碑には命を落とした人の名前や年齢、出身地が書かれていた。一番年少で17歳。俺よりもはるかに若い子が国のために命を落とした。それを見て何も言えず呆然と立ち尽くしていた。いったい何人の人が戦争に殺されたんだろう。日本だけじゃなくフィリピン人だって戦争なんかしたくはなかったはずだ。でもそれでも。。。

俺の父方のじいちゃんも戦争で命を落とした。うちの親父も顔を見たことがない。おそらく今の俺と同じくらいの年齢だったのだろう。
島のガイドが、九州からも多くの日本兵が連れて来られて死んだと言っていた。もしや、と思いうちのじいちゃんの事をガイドに聞いたら、
「あなたのおじいちゃん生きていたら何歳くらい?」と聞かれたんで
「80後半から90前半だと思う。」と答えたら、

それを聞いて、ますます島の兵器や防空壕を見る度に胸が苦しくなった。彼らの苦痛に耐え切れない叫びや、無念な声が聞こえてきそうな気がしたから。
俺はこの世で一番尊敬するのはやはり爺ちゃん婆ちゃんかな。2番目は親で。彼らの犠牲の上に俺らの今の幸せは成り立っているんだってことを忘れたくはない。

フィリピンはもう一度是非訪れてみたいと思った。
今度はもっと時間をかけてもう一度ゆっくりと自分の目でいろんなものを見たいと思った。
今の自分の環境がどれほど現地の人々にとって幸せなものなのか、改めて感じることができた5日間だった。





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最終更新日  2004年07月07日 14時56分16秒
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