Atelier Mashenka

Atelier Mashenka

2006.02.18
XML
カテゴリ: 思索・読書
病気療養中のKちゃん から電話があった。
彼女は最近やっと認知も広まってきた「低髄液圧症候群」の
かなり重い症状を抱えている。

いろいろあった。
生と死の境にいるような時期も。
病院側の無理解やひどい仕打ちには私も驚愕し、憤ったし、泣いた。
Kちゃんのお母さんのこれ以上ないような強さ、
お父さんの泣きたくなるような優しさ、を目の当たりにし感動もした。
無理やり追い出されるように退院してから1年とちょっと。
大きな波がありながらも、自宅で療養している。


まずしゃべるスピードがやっと昔のKちゃん並みになってたのが
驚いて、嬉しくて、そう伝えた。
歩くのもしゃべるのも、どんな動作をするにも
何倍もの時間がかかっていた。
本人もどんなにもどかしい思いをしてきたことだろう。
普通にしゃべること、普通に歩けること、普通に食べられること、
それができることが驚きで喜びで幸せなことなのだと
私はKちゃんからいまさらのように教わった。

しかし、電話でしゃべるのも、携帯でメールをするのも
Kちゃんはしんどくてできない状態が多いので、
ついこちらから電話するのも憚られて、たまにしかしてなかった。

だから数ヶ月ぶりにKちゃんの調子がよくて
電話できるのはとても貴重な時間。
なのに、どうしてだろう。
そういうときには、普段言いたかったこと、
伝えたかったこと、聞いてみたかったこと、
いっぱいいっぱいあるのに、なかなか出てこない。

Sくんの結婚式に出たこと、
Kちゃんがつくってる俳句や手編み帽子のこと、
飲んでる薬のこと、少しずつあっちこっち飛びながらも
お互いの近況を話すけど、

「・・・・・」
「・・・・・」

と沈黙がはさまれてしまう。
本当はもっと話したいこと、いっぱいあるのに。
感じてること、考えてること、とっても大事なことがあるのに。


Kちゃんと私の間では
大学のクラスで出会ったときからいつでも
思索的な話を多くしてきて(そうじゃない話ももちろんあるけど)
膨大な時間が堆積している。

だから日常のこともほとんどすべて深い話に結びついていく。
また、お互いの過去や成長過程のあれこれに話が結びついていく。
ひとつ言おうとするととても長く深くなってしまうので
どれから話していいか、わからなくなるのだ。

濃密な沈黙がKちゃんと私の間に横たわる。
ちょっと苦しいような切なさにのどがしめつけられる。
そうこうしているうちにKちゃんの携帯の電池が、切れる。

今回もまたじゅうぶん話せなかった。
Kちゃんもそう思っていることだろう。
その思いが、同じ認識が、
逆にお互いの結びつきの深さと比例して感じられる。


Kちゃんと思い切り話せるようになるのはいつだろう。

すべて胸のうちを話しきって、もう話すこともなくなって
ただあはははは!とバカみたいに笑い合ってみたい。

ゆったり午後の日差しをあびながら
お茶でも飲んで、一緒にぼーっとしたい。
生きててよかったね、ここまで一緒に来れてよかったね、
と無言の了解を感じたい。

そこではもはや、苦しいような濃密な沈黙ではなくて、
さらりとした満ち足りた沈黙が私たちを包むことだろう。


 「生きること ただ生きること 冬木立」


Kちゃんが先日送ってくれた100編の俳句の中で
シンプルだけど私の一番好きな句。
この句を墨と筆で書けるといい。
もし作品に仕上げることができたら、
ささやかながらKちゃんに贈りたい。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2017.02.18 00:33:52
コメント(8) | コメントを書く
[思索・読書] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


心に響きますね  
山ぶき*  さん
いい句ですね。
ただ生きること、、生きている奇跡に感謝しなければと思います。
娘が病気の時、生きることを深く考えました、
弱い私は死にたいと苦しんだこともありました。
病気の娘が生きようとする姿をみて、人は生きるということをインプットされて生まれてきたと思いました。
ひたすら生きていくことが人の使命だと。
(2006.02.22 06:23:27)

Re:心に響きますね(02/18)  
mashenka  さん
山ぶき*さん、こんにちは。

>娘が病気の時、生きることを深く考えました、
>弱い私は死にたいと苦しんだこともありました。

いつもほんわかな山ぶきさんにも、
またとっても元気そうな娘さんにも
そんな時期があったんですね・・
病はつらいけど、いろんなことを教えてくれますね。

>病気の娘が生きようとする姿をみて、人は生きるということをインプットされて生まれてきたと思いました。
>ひたすら生きていくことが人の使命だと。

私は生きることが使命とまでは思わないんですけど、
本能、って感じかな?
そしてせっかく生きるなら「よく生きる」「自分を生きる」ことが、
私にとって使命といえば使命かな?
(2006.02.22 22:21:37)

泣いた。  
SHIHO★ さん
>「生きること ただ生きること 冬木立」

涙出た。心にグッときた。
生きること、生かしてもらってること、
ありがたいよね・・・
生きてる上に、好きなことやらせてもらってる。
これまたすごく恵まれてるんだろうね。

濃厚な沈黙・・・苦しいけど、深い意味を感じ取るね。
普通じゃないことだから。 (2006.02.22 22:41:00)

Re:濃厚な沈黙・・(02/18)  
M Saito  さん
「低髄液圧症候群」は、よくあるムチウチと混同され易い症状ですよね。
どうか、早く良くなりますように祈っています。 (2006.02.23 00:26:23)

Re:泣いた。(02/18)  
mashenka  さん
SHIHO★さん、こんにちは。

>>「生きること ただ生きること 冬木立」

>涙出た。心にグッときた。

そう?ぐっときた?
Kちゃんに伝えとこう・・(^-^)

>生きること、生かしてもらってること、
>ありがたいよね・・・
>生きてる上に、好きなことやらせてもらってる。
>これまたすごく恵まれてるんだろうね。

うん、五体満足だし、すてきな仲間もいるし、家族もいるし、
ほんと、ありがたい!

>濃厚な沈黙・・・苦しいけど、深い意味を感じ取るね。
>普通じゃないことだから。

そう、言葉も大事だけど、沈黙にも重みがあって。
次回はもっとしゃべれるといいんだけど。

(2006.02.23 01:02:47)

Re[1]:濃厚な沈黙・・(02/18)  
mashenka  さん
M Saitoさん、こんにちは。

>「低髄液圧症候群」は、よくあるムチウチと混同され易い症状ですよね。
>どうか、早く良くなりますように祈っています。

ありがとうございます。
さすがサイトウさんはご存知でしたね。
ほんとに、早くよくなって欲しいです!
(2006.02.23 01:06:55)

Re:濃厚な沈黙・・(02/18)  
胸のキューンとなるお話ですね。
そして、冬木立の句…
洗われるような感覚です。

お友達との間にほんとうに濃密なものが、横たわって
いるのですね。

いつか思いっきり話して笑いあえる日が来るのを
陰ながらお祈りします。
(2006.02.23 02:41:52)

Re[1]:濃厚な沈黙・・(02/18)  
mashenka  さん
れおなるど21さん、こんにちは。

>胸のキューンとなるお話ですね。
>そして、冬木立の句…
>洗われるような感覚です。

そうですか?冬木立の句、私だけがいいと思うんじゃなくて
ほかにもいいと思える方がいて下さってよかった!!

>いつか思いっきり話して笑いあえる日が来るのを
>陰ながらお祈りします。

ありがとうございます。
ほんとに、早くそうなるといいなあ。
(2006.02.24 00:08:45)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Profile

mashenka

mashenka

Favorite Blog

ブログは移動しまし… コヨーテ3377さん
happy-happy happy-tamachanさん
take it easy!! 【masashi】さん
松峰な世界 松峰さん
ロルファーサイトウ… M Saitoさん
reichel!の美味しい… reichel!さん
地方暮らしが変える1… かじけいこさん
お気楽! 幸せの種… れおなるど21さん
つまずく石も縁の端… 一村雨さん
クサノタヨリ すもも5970さん

Comments

mashenka @ Re[1]:生誕120年 棟方志功展(11/12) 一村雨さんへ お久しぶりです! 私もうな…
一村雨 @ Re:生誕120年 棟方志功展(11/12) お久しぶりです。 この展覧会、棟方志功の…
mashenka @ Re[1]:サントリー美術館「京都・智積院の名宝」(01/21) 一村雨さんへ 素晴らしい障壁画でしたね…
一村雨 @ Re:サントリー美術館「京都・智積院の名宝」(01/21) 安部龍太郎の「等伯」を読んで、この親子…
mashenka @ Re[1]:横山操「ウォール街」(10/31) 一村雨さんへ 横山操の手にかかるとNYの…

Freepage List

Calendar

Archives

2026.06
2026.05
2026.04
2026.03
2026.02

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: