★Latin Dance Night★

★Latin Dance Night★

2004.06.20
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カテゴリ: カテゴリ未分類
大使館員F氏宅でのホームパーティが始まった。

ダンス教えてあげるよ、と白いTシャツとジーパンを着た
手足のひょろ長い褐色の肌の青年が誘ってくれた。
ペアでユムリ・イ・スス・エルマノスという
バンドの曲で踊った。

・・・・え~、なんで、君は踊れるんだ、
ブラボー、日本人なのにすごいすごい、
信じられないよ~、ねぇ、見て見て、ほら!

ほとんど見せ物のような状態になっている。

目が回りそうになる。

じゃあ次はボクボク、と、白人のカーリーヘアー君に
バトンタッチ。
この子は、ステップとターンさばきは完璧なのだが、
曲のテンポと踊りのテンポが違うので、
踊っているうちに、どんどんずれてきて混乱する。
一緒にデュエットで歌おうと思ったら、一人だけ勝手に
歌い進めていってしまう感じ。あれっ?今、どこ?
取り残された気分を味わう。
キューバには、踊り上手のリズム音痴がいることを、
初めて知る。



「ごめーん、ボク、ネグロ(黒人)なんだけど、
 踊りが下手なんだ。
 女の人を回せない。ステップだけしかできない」

つまり、彼は普通に手をつないでペアで踊れるけど、
女性をくるくる回す回転ワザができない、という意味だ。

キューバでも黒人=ダンスの天才、と思われているが、
やっぱり例外はいるんだな。しかし腰つきは
相当アフロが入っている。

しかも、このふとっちょの黒人君がすごいところは、
どんな歌でも全部、ペラペラと空で歌ってしまうことだ。
自分の好きな歌謡曲なら当たり前なのかもしれないが、
カラオケに毒された私には、歌詞も見ないで歌ってることに
かなり驚いた。

特にさびの部分になると、絶叫して歌いながら踊っている。

君、歌うの好きなんだね。じゃ~これ一緒に歌ってくれない?

私は、NGラバンダの『魔女』というタイトルの
アルバムを自分のカバンから取り出した。
空で歌う自信がないのでCDをかけながらでいいかな、
と、デッキに入っていたCDを取り出し、
新しい1枚をセットする。

アルバムと同タイトルのメインナンバー『魔女』は、
まるでラップのようにしゃべって歌うティンバの曲だ。
意味もろくにわからないけど、早口言葉の感覚で日本で
覚えてきた。黒人キューバ人と一緒に叫んで歌った、いかれた曲。

きっと2人とも、ラム酒をちょっと飲み過ぎていたんだ。



『魔女』La Bruja----------NG La Banda

退屈な気分でイライラしながら家を出る
君の影を探しに 失望しながら
俺はつくづく孤独で疲れている

所詮 人生はサーカス 俺たちはみんなピエロ
なにもかも魔術師のせいなんだ
君がいないから俺はこんなふうになっちゃうんだ

君は自分が一番だと思ってるんだろう
アーチストかなんかだと思ってるんだ
ブエナ・ビスタの街を 
君がツーリストタクシーで行くのを見たよ
不可能なことを求めてね
君には俺が必要なはずなのに

君は俺の愛を安っぽい娯楽と交換してしまった。
心の値段は競売にはかけられないというのに
だから君を魔女にたとえてやる・・・

君は魔女・・・感情のない魔女 
いかれた女・・・君は魔女



舌がもつれそうになりながら、やっと歌い終わって、
見つめていた歌詞カードから目を離し、
彼の顔を見上げたら、うっひょ~、と、まん丸な目になってわっはっはと天を向いて笑い、手をパチパチたたいていた。

あれ、一瞬、相当変な歌い方だったのかな?と思ったけど
あまり深く考えないようにした。
とにかく今はパーティなんだから。

人生なんてサーカス 僕たちはみんな踊り狂うピエロなのさ
すべてはみんな魔術師のせいなんだ
そう こうやってキューバに来たのも
こんなところで キューバ男たちと手をつないで
腰をくねらせているのも・・・

まるで魔法がかかったような、わけのわからない
熱帯の夜だった。

ホスト役の大使館員F氏は、白い上下のスーツ姿で、
さっそうと現れた。顔つきが昼間と全然違う。
どこか焦点の合ってない、怪しい視線を泳がせている。

「サルサはまだ習ってないけど、
 タンゴならやったことありますよ」と
自信たっぷりに近くにいた女の子の手を取り、
狂ったように踊り始めた。
かつて見たことのない、はっきりいってかなり妙で
卑わいなステップだった。
自己流だけど、狂い方は堂々キューバ人並みである。

会場には、ホルヘ・ペルゴリアという
キューバのヒット映画『苺とチョコレート』で
ゲイの役で登場した、屈指の有名俳優が来ていた。
キューバ人の女の子たちと私は、
キャーっ、本物よ~と叫びながら彼に群がり、
ちゃっかり誰かが撮った集団写真に収まった。
「映画の時とはちょっと雰囲気が違いますね」
といったら
「新しい役作りのために、今、イメージを変えているところなんだ」
といっていた。
さすがにもうゲイっぽいしゃべり方ではなかった。
なのに彼と踊ろうとする、果敢な女の子は
一人もいなかった。

ラムやビールをさんざん飲むわ、
へんな日本語とスペイン語でしゃべるわ、
CDかけてサルサ踊るわで
みんなのバカ騒ぎがピークに達していた頃、
キューバ人嫌いのF氏の奥さんが
もうやんなっちゃう、という露骨に迷惑そうな顔をしながら
キッチンに姿を現し、みんなの前で大声で何かを言った。

「今日は、なんのおかまいもできませんけど、
 みなさん、どーぞ楽しんでいってくださーい。
 私はホントになーんにもしませんのでー」

そして、本当になんのおかまいもせずに、
さっさとどこかに消えてしまった。



君とはもうごめんだ 消え失せろ
俺の前から消え失せろ
魔女は ほうきを持って どこかへ消えてしまえ
ほうきを持って 月にでも行ってしまえ



その後私は、一緒に踊った白人カーリー君や
黒人ふとっちょ君たちと、
日本語とスペイン語チャンポンで、いろんなことを話した。
社会主義や資本主義について、アメリカが好きか嫌いかについて、
日本語やスペイン語の文法、エッチなスラングについて。
月と海が見える夜の庭で、ラムやコーラを飲みながら、
熱に浮かされたように、夢中で話した。

魔女が消えた後の饗宴は、いつまでも続いた。

~つづく~





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Last updated  2004.07.08 00:49:54
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ケイコ@ Re:<第1話>Latin Dance Night(02/01) ラテンの曲が好きで、スペイン語をもっと…
Mine@ Re:<第86話>キューバの日本語クラスに潜入(06/17) こんにちは。この夏にキューバへ一人旅し…
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