料理研究家・宮成なみの【 夢叶 】~胸に希望を 台所から愛を~

料理研究家・宮成なみの【 夢叶 】~胸に希望を 台所から愛を~

2007年06月21日
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カテゴリ: なみちん入院記
[ 携帯から更新 ] / 2006年11月13日





『気持ちいいねぇ!!すっごいきれいだねぇ!』

翌日、
夕飯を食べ終えた後、母を連れて行った近所の温泉は
露天風呂になっていて、

ちょっと熱めの湯に浸り、
頬にあたるひやりとした夜風と
満点の星空がとても心地よかった。

『こんなになみとゆっくり話せたの何年ぶりだろうね。』




見舞いにいかなくてもいい久しぶりの休日に
旦那は朝から車屋さんに行ったり、自分の用事を済ませたりして
家を空けた。

私は母と一緒におしゃべりをしながらふたりで
部屋の掃除をしたり、洗濯物を畳んだり
食事を作ったりして過ごした。

家事をしながら
母は休むことなく動き、
今までの時間を取り戻すかのようにしゃべった。


料理研究家の仕事をするようになってすぐは
まだ食の仕事だけでは食べることができなかったから、


その頃、
あまりにも忙しく盆正月でさえ、実家に帰ることができずに
母とのんびり話す機会なんて持てずにいたから

まるでその間の交わされることのなかった親子の会話を
時間を取り戻すかのように母はしゃべった。



お母さんね、正直今は透析になってよかったと思ってるの。

お母さん、正直安心したの。


だってね、
今のなみ、すごく顔色いいよ。

動きだってずっとずっと楽そうだし、
きつくなさそうだもの。

透析さえすれば、もう、なみ身体だるいのに無理しなくていいんでしょう。
苦しまなくていいんでしょう。

なみがきついのに我慢してると思わなくて済むと思ったら嬉しいよ。

日に日に、なみの身体が楽になってるんだなって
見ていて思うからお母さん安心するの。

週3回透析に通わなきゃならないのは大変だけど、
本当に病気になる前と同じくらい元気になれるんだなぁって思ったら
お母さん本当に嬉しいよ。

あんたが無理して毎日きつい思いして働かなきゃいけない1週間より、
3日間はなにもできなくても、
3日間身体の負担がなくて思いっきり働ける1週間のほうがお母さんは何倍も安心よ。

これからは思いっきり仕事できるね。


お母さん、本当は手術の日も
入院してる間も
ずっとずっとそばにいてあげたかったんだけど、
もうなみを守るのはお母さんの役目じゃなくなったんやねぇって思ったよ。

今日透析しないと死んじゃうってなったときに、
病院から一番に連絡がいくのはもう、お母さんじゃあなくて
旦那さんなんよね。

毎日、なみの看病に病院に通うのも
そばにいて、相談に乗る相手も
お母さんじゃなくて旦那さんになったんやね。

本当になみはお嫁に行っちゃったんやねぇ。

もうこれから先、冬になっても
ひとり暮らしの家で風邪引いて寝込んでるんじゃないかとか

ごはんはちゃんと食べてるのかなとか
誰も気付かずに家で倒れてるんじゃないかとか心配しなくていいんやね。

なみのそばにいて
なみの心配するのはお母さんの仕事じゃなくなったんやね。

そう思うと少し寂しい気もするけど、
お母さん安心したよ。


なみが本当にしたい仕事を思いっきりできる日がきたんやね。
身体がきつくなくて仕事ができる日がまた来たんやね。

お母さん、
本当に嬉しいよ。

ずっとずっとね、
お母さん、自分のこと本当は鬼なのかなって思ってたの。

病気のなみさん、福岡にひとりで出したりして
援助もしないで
お母さん、自分のことね、
鬼なのかなと思ってたの。

いろんなひとに
なんで病気のなみさん、福岡に出すの?って言われるたびに
本当はお母さんはひどい母親じゃないのかなって思ってたの。

あんたが透析になったって電話があったときも
実家に置いていたらこんなことにならなかったんじゃないかって最初は後悔したの。

でも、本当によかった。

夢叶えられたし、
生きる道も見つけて
一緒にいてくれる旦那さんも見つかった。


あんたを福岡に出してからのこの七年間、
お母さん、本当、ホント心配もしたし、苦しかったけど、
あんたを信じて出してよかったと思ってるよ。

透析になっちゃったけど、
福岡に出してよかったって思ったよ。

お母さん、安心して死ねるよ。
お母さん、本当安心したよ。

旦那くん大切にするんよ。
これからふたりでちゃんと生活作っていくんよ。』


母は終始、安心した、よかったと言葉を繰り返し、
何度も何度も湯船のお湯を汲み上げて顔を洗い、
潤んだ瞳を誤魔化した。


あたしも泣き出しそうになったけど、
何言ってんの。まだ死なれたら困るしと
笑いながら言って、
顔を洗って誤魔化した。


久しぶりに母と並んで温泉に浸かり
いろんなことをたくさん話した。


父は私が福岡にでることは大反対だったから、
あたしが出て行った後も、ずっとずっと防波堤になってくれていたことは知っていた。


母は詳しく言わなかったけど、
あたしが福岡にでたことで、
他にもいろんなひとから、
いろんなことを言われていたんだろうな。

今まで、
母はそのことを一言も私に言ったことはなかった。


今まで見たことのないくらい嬉しそうな顔をして
その苦労が報われたと
感極まった喜びの顔になっていた。


相手を信じるってことは、
なにか保障があるわけでもないし、

どうなるかなんてわからない。
結果はそのときにならないとわからない。

例え信じていても、
自分の望む結果になるとは限らない。


母はどんな気持ちでいたんだろう。

遠く離れた田舎で、
夢を叶えたいだなんて無謀なことを言って
ひとり街に出て行った病気の娘のことを思って
どれだけ心痛めたんだろう。

信じて待つのって
結構、辛い。

それでも信じ貫くって
どれだけつらかったことだろう。

信じ貫く愛。
なにも手を差し伸ず、
見守るだけの愛があるんだなぁって思った。


母と並んで浸かる
久しぶりの温泉は

ぽかぽかと
芯まで温まって
リラックスして

とてもとても気持ちがよかった。






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最終更新日  2007年07月26日 18時52分20秒
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