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雅彦が選んだ老舗醤油店の特製セットは、彼の長年の友人であり、地元の食堂を営む村田浩一のもとに届けられた。浩一は、雅彦とは高校時代からの友人でありながら、近年はお互い忙しく、年に一度会えるかどうかという関係になっていた。
年末の営業で多忙を極める浩一の店に、その贈り物が届いたのは昼過ぎだった。
「なんだこれは?」
店の裏口に置かれた包みを見つけた浩一が開封すると、中から香り高い醤油の詰め合わせが現れた。丁寧に書かれた雅彦の手紙が添えられていた。
「村田さんへ
今年も美味しい料理でたくさんの人を笑顔にしてくれてありがとう。僕も時々、君の店で食べるラーメンに元気をもらっているよ。この醤油は僕のお気に入りの一品だ。来年もお互い頑張ろう。
山田雅彦」
浩一は手紙を読み終えたあと、思わず笑顔になった。
「アイツもまだまだ粋なことをするじゃないか。」
浩一はすぐに店の厨房へと向かい、その醤油を使って試作を始めた。彼が作る料理は地元の食材を活かした家庭的な味が特徴だったが、この醤油はその風味をさらに引き立ててくれるようだった。
「これはいいな……よし、明日からの限定メニューに使ってみよう。」
浩一はその夜、厨房で黙々と醤油の味を研究し、新しいラーメンのスープを完成させた。そして翌日、「特製醤油ラーメン」をランチタイム限定で提供することに決めた。
そのラーメンを食べた地元の常連客たちは、口々に「これ、いつもの味よりさらに美味しい!」と声を上げた。浩一の店はさらに賑わいを見せ、笑顔が広がっていった。
その中の一人、常連客の佐々木洋子は、ラーメンのスープの深い味わいに感動し、食べ終わった後に浩一に声をかけた。
「村田さん、今日は特別に美味しかったわね。これ、何か特別な材料を使ったの?」
浩一は雅彦から贈られた醤油の話を少し恥ずかしそうに語った。すると洋子はにっこり笑いながら言った。
「その醤油をくれた方も、村田さんに感謝してたんでしょうね。それにしても、こうして感謝が巡っていくのは素敵なことだわ。」
その言葉に浩一はふと考えた。雅彦から受け取った気持ちを、さらに自分から誰かに届けてみるのもいいのではないかと。
その夜、浩一は自分の店を支えてくれる常連客や、地元の農家に感謝を伝えるための贈り物を準備した。浩一が選んだのは、自分の店で評判の高い自家製ラー油と、今回の醤油を使った特製タレのセットだった。
「これを渡して、いつもありがとうって言おう。」
浩一が考えた贈り物は、次の日には地元のあちこちに届けられた。その贈り物を受け取った人々は、浩一の心遣いに感謝し、自分たちもまた誰かに感謝を伝えることを考え始めたのだった。
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