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神坂俊一郎

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Jul 1, 2023
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今日は、幸せのお話です。
引き続き神坂夫妻に話してもらいましょう。

美奈子は、常々夫が何が楽しくて生きているのか不思議なのですが、以前聞いた時には、「前世の課題の解決」とか、「神様から与えられた課題の解決」とか、ブルーハーツの歌みたいに「君が生きている今日」とか、訳の分からない回答でしたから、もう一度聞いてみることにしました。
「あなた、前にも聞いたけど、何が楽しくて生きてるの。」
すると、サヴァンらしい質問が返ってきました。
「どんな意味の、どんな段階の、何を対象とした「楽しみ」かによって、回答は変わるな。」
「もう。また難しいこと言う。」
「いや、難しくはないと思うが。」
サヴァンの彼ですから、論理的な質問でないと回答できないのです。

妻に言っても仕方ないので、現実で回答することにした一郎でした。
「神坂一郎という人間と考えると、66歳を迎えた今でも、こうやって、妻の美奈子と平穏無事に、いや、余裕を持って生きていられること、それが幸せだな。」
それでも十分抽象的です。
「うー、あなたの幸福論はそうかもしれないけど、具体的には何が幸せなの。」
「先ほどの何が楽しいかの問題に加えて、幸せの定義の問題も生じる。」
言われてみるとその通りなのですが、これでは堂々巡りになりそうです。
「だから、あなたにとって幸せってなあに。」
彼、少し首を傾げながら答えました。
「生命維持の根源から答えると、食べるものがあること。」
まあ、間違ってはいませんし、彼、10歳の時にだったか、食べるものがない経験をしていますから、食べるものがある、それだけで本当に幸せだと思っているのです。
美奈子としては、1週間同じ献立の食事を出しても文句ひとつ言わないどころか感謝しているような夫ですから、助かっているのが実情で、逆に自分の幸せとしては、食事に文句を言わない夫と結婚できたことと言えることに気付きました。

すると、一郎少し付け加えました。
「子供たちが巣立って、二人だけになって、平穏無事に暮らせていること、それ以上の幸せはない。」
それも、夫にそう言ってもらえること以上に、それが真実であること、そのことは、自分にとっての幸せでもあるのですが、問題は、夫が全然幸せそうに見えないことでした。
「そうね。そのとおりだわ。でも、あなたって、幸せっていうか、楽しさっていうか、快感というか、満足感というかの感じ方と表現が普通じゃない気がするの。」
これまた、一郎には理解不能の意見です。

「そうね。欲望の問題かもしれないけど、例えば、優佳ちゃんみたいなナイスバディーの女の子と、山の中で二人っきりになったら、普通やりたくなるものじゃないの。そして、やることやって満足するものだと思うけど。」
美奈子は、もし自分が男だったら、彼女を押し倒すとまでは行かなくても、抱きしめてキスぐらいはすると思いました。
「それは、前にも答えたが、彼女には何故か欲望を感じなかった。それだけだ。」
「何故かしら。」
そちらの方が問題だと思って、聞き返すと、一郎は首を傾げながら答えました。
「まず、サヴァンの予知では、彼女と結ばれることはない結果だった。だから、セックスして捨てることになったら彼女がかわいそうだし、結婚までプラトニックラブの約束を破ることにもなる。それが、彼女とセックスしなかった理由だ。」
美奈子は、結ばれることがない、それなのに、結婚前提、結婚まではプラトニックラブでお付き合いお願いしますという事実上のプロポーズを受けるという矛盾した行動をとる夫も問題だと思いました。
「あなた、事実上彼女のプロポーズを受けたのでしょう。」
「そうだな。」
悪びれずに肯定するところが、また、彼に腹の立つところです。
「予知できないことを、いや、これもっと始末に悪いわ、そうならないことを知っていてプロポーズ受けるなんて、最低と思わない。」
その過去があるからこそ、自分の幸せな今があることは否定できないのですが、何を思って優佳ちゃんと付き合ったのか、それがどうも不思議だし、いくらキスさえしなかったとはいえ、女の立場からすると許せない面がありました。
「ああ、彼女が僕を受け入れるような未来に変化するなら結婚してもいいかなとは思ったし、それ以上に、僕と9か月過ごすことが彼女のためになると思った。だからこそ、それ以上になることはないと予知しながらも付き合った。今説明すると、そんな答えになるかな。」
美奈子、夫は、行き当たりばったりのような感じで、自分なら絶対できないような思い切った決断をし、実行してしまうことを、この43年の結婚生活で実感していましたし、その決断が間違ったことはありませんでした。
なにしろ、自分との結婚こそ、客観的に見れば最も思い切った決断であり、それを予知し、実行することの方がはるかに困難だと思われましたから。
「優佳ちゃんとの9か月の交際が、私との結婚の前提ともなった。そうも言えるのかしら。」
一郎は、あっさり認めました。
「そう。彼女との過去がなければ、また、美紀子さんとの過去もなければ、今の美奈子との平穏な結婚生活もなかったということだ。」
その結果、優佳ちゃんは何とか幸せになったようでしたが、美紀子さんは死んでしまったわけで、運命と言えばそれまでですが、その選択は大変厳しいものだったのではないかと思うのに、彼は、思い切ってではなく、むしろ何も考えていないのではないかとおもうぐらいあっさりと選択したのです。
「ほんとにもう。私は幸いなことに幸せになったんだろうけど、あなたとかかわった人たちを考えると、恐ろしいものがあるわ。」
「ああ、それはその通りだろう。」
あっさりと認めるところが、夫の恐ろしいところでもあります。
「そうよね。あなたの悪口言うと呪われるものね。」
最初の恋人でありながら、何にもなしに終わった聖護院真智さんが見抜いたように、彼の悪口を言うと例外なく呪われるのです。
「そう。僕のいないところで悪口を言うと呪われる。良くてちょっとした不運、怪我、悪いと大事故や重病、何人か死んでいる。」
しかもその呪い、本当に、彼自身は全く関与しないところで起こるのです。
「本当にあなたには関係ないの。」
「僕の悪口だから、関係ないとは言えないけど、真智さんが見抜くまで、そんなことがあること自体、僕自身は全く関知していなかった。まして、僕はそんなこと望まない。」
確かに彼は人の不幸を望みませんし、そんな彼の悪口で呪われるのはいまだに信じられないことでもありますから、美奈子は再度確かめました。
「本当に本当なの。」
「彼女が発見して、大学の学部の後輩たちに注意して、間接的に僕の耳に入ったから検証してみたのだが、本当だ。そして、彼女が知らないところでも、我が家の土地の処分にかかわった、事件屋、不動産ブローカー、暴力団組長と若頭、とその段階で既に4人死者が出ていた。当然ながら、僕は全く関与していない。」
そのことは、以前にも聞いたことがありました。
「ちょっとした怪我ぐらいなら偶然と考えることもできるけど、それほど重なると偶然とは言えないし、死人まで出るのは穏やかならないわ。大体、どうして死んだのよ。」
「事件屋と不動産ブローカーは病死、暴力団組長と若頭は、抗争事件による暗殺。」
これは穏やかならない問題ですから、彼女が気付いたきっかけをたずねました。
「じゃあ、真智さんが気づいたのはどんな事件だったの。」
「あはは、凄くありふれた事件だったから、真智さんでなければ気付かなかったかも知れない。」
「つまりは、ちょっとしたことでしかなかったのね。」
「うーん、ちょっとしたことと言うには結構大したこともあったがね。」
「そもそも、何故悪口言われたのよ。」
夫には、悪意と嫉妬の心自体が欠けているのですから、そんな人の悪口を言うのが不思議でした。
「ああ、遠因としては、僕は、恐ろしく要領がいいんだよ。」
それは、結婚してみてわかりました。のんびりしている、いや、むしろぐずぐずしているようにさえ見えるのですが、実際は、彼が一番仕事が速いのです。
「それは、わかったわ。あなたが本当にぐずぐずしていることは、やらない方がいい結果になることでもあることはこの43年でよくわかったし。それより、なんで他人があなたの悪口言うのよ。いや、なんでそんな人たちにあなたが悪口言われないといけないのよ。」
夫は、人付き合いの悪さは天下一品、友達も皆無。いや、友人というものを全く必要としない人間なのですから、何を好き好んでそんな彼の悪口を言うかなと、美奈子は疑問でした。
「真智嬢が気づいたのは、僕があまりにも実験を早く片付けるものだから、「あいつずるしてるんやないか。」とか、「世の中不公平じゃ。」とか文句を垂れていた学生が、ことごとく不運な目にあったからなんだよ。」
「どんな不運よ。」
「一番最初は、自転車でこけて顔面負傷だったかな。それから、白衣をひっかけて実験試料をパーにするとか、洗浄したビーカーやフラスコが入った入れ物をひっくり返してうん万円単位の損害を研究室に与えたとか、車や自転車の鍵を無くしたとか、本当に大したことではなくても、妙に続いて起こったから、彼女がふと疑問に思って共通点を探ったら、僕の悪口だったというわけ。それで、「神坂先輩の悪口を言うことと、言った人が不運に見舞われることは、高度に有意な関係にあります。」と、分析結果を披露しつつみんなに注意してくれたんだ。大変優秀な彼女が、科学的と言うか数学的と言うかの分析をした結果だったし、事実、ちょっとした事件事故が頻発していたことは皆も認識していたものだから、その後は誰も僕の悪口は言わなくなったし、不運としか言いようがない事故の連鎖は、そこでぱったり途切れた。だから、彼女の言ったことが正しかったことも証明された。大学の方は、それでめでたしめでたしで終わったんだが、僕自身の私生活では、その後も、付き合わざるを得なくなった組関係の人たちや、就職してからの会社の先輩後輩にも犠牲者が出た。その中で一番かわいそうだったのは、親代わりを務めてくれた佐々木氏とその息子さんだ。」
組関係や会社の人たちなら、彼は無用に嫉妬されていましたからわかるのですが、佐々木氏と息子さんは考えられません。
「えっ、何故。あの人私のことをすごく気に入ってくれてたのに。それに、息子さんってまだ小学生だったでしょう。」
「佐々木さんには、僕は面と向かって注意したんだ。「僕の悪口は言わないでください。言うなら、面と向かって言ってください。そうしないと、呪われます。」と。」
「それなのに何故。」
誠実であり、信用があり、予言者でもある夫の言葉を信用しなかったとしたら、それはそれで不思議です。
「元は、彼の夫婦喧嘩だったんだ。それで、明らかに奥さんの方が悪いから、あなたが言っても聞き入れないなら、僕がお話をしましょうかと持ち掛けた。しかし彼は、「かあちゃんのことは、俺が何とかする。お前は出ないでくれ。」と断った。」
他人のことには首を突っ込まない主義の夫ですから、そこまで言ったのは余程のことだったのだと思いました。
「それで、どうなったの。」
「当然、夫婦仲は更に悪くなった。ここで、大きな誤算が生じた。」
美奈子、ピンときました。
「あっ、息子さんがあなたの悪口言ったのね。」
「そう。「お父さんとお母さんの仲が悪くなったのは、神坂さんと会ってからだ。神坂さんて悪い人だ。」って言ってしまったんだな。佐々木氏は大慌てで息子の口をふさごうとしたのだが、遅かった。」
「で、どうなったの。」
「息子さん本人と奥さんの不注意だったとしか言いようがないのだが、3日後に、当時まだ8歳だったと思ったが、彼の息子さんは、家の前で車に轢かれて死んでしまった。」
ある面、物凄く因果応報的な結果になったことになります。
「佐々木さんは。」
もろヤクザの強面の人でしたが、子煩悩で優しい人でしたから、美奈子はそのことを知って悲しくなりました。
「まあ、ショックだったんだと思うし、更に息子の死をめぐってのどうしようもない夫婦げんかも続いて、つい僕の悪口も出てしまったんだ。悪い時には悪いことが重なるもので、不動産業の方もうまく行かなくなって、最後は、副業で経営していたスナックのホステスと心中したことになっている。」
夫が、「したことになっている。」と断ったからには、真相は違うはずです。
「本当はどうだったのよ。」
「佐々木氏、いくら奥さんともめていても、浮気をするタイプではなかったから、組関係でやばいことやって、恐らくそのホステスも恐らくヤクだったんだろうけど、やばいことやって、二人して消されたというのが真相だと思う。」
全てを見通すような夫が言うからには、それが真相です。
「怖い世界ね。」
「そう。極道の世界、ヤクザの世界は、甘いもんやあらへん。」
でも、夫は無事です。
「あなたは、何故無事だったの。」
「それは簡単だ。僕はヤクザを利用しようとはしなかった。両親は彼に正当な手数料を払って利用したが、僕は、友人としては付き合ったが、彼を利用しようとはしなかった。」
でも、佐々木さんは、私のことを痛く気に入ってくれて、自分のマスタングを私のために貸してくれたり、夫の親代わりを務めてくれたり、親切にしてくれたのです。
「親切にしてもらえたし、大分関わったような気もするけど。」
「結婚して、仕事の関係で栃木に来てからは、佐々木さんとは切れてしまっただろう。」
確かにそのとおりでした。
「そうだったわね。私もそれ以降会っていない。」
「おかしくなったのは、それからだったし、何といってもさげまんチャンピオンの母と関わったのが運の尽きよ。僕は、母と付き合うとロクな目に遭わないと注意していたのだが。」
言われてみると、彼の母ですから、私にとっては義母なのですが、義父母が離婚した後、義母とかかわった男たち、離婚した義父だけは長生きしましたが、彼女と再婚しようとした男3人が3人とも、彼女にプロポーズして3年以内に皆病死してしまったということなのです。
「お母さんと再婚しようとした男の人たち、皆死んだって言ってたわね。そうなると、あなたよりも、お母さんの呪いの方が強かったんじゃないの。」
それは、彼も認めていました。
「そうだよなあ。僕は全然付き合いなくなっていたしな。その可能性の方が大だ。でも、佐々木氏親子だけでなく、母にプロポーズした人間3人が立て続けに死んだんだから、週刊誌がかぎつけたら記事にされそうな内容だったな。」
言われてみると、次々と婚約者を毒殺した女の記事が週刊誌を賑わしたこともありました。
「毒殺したわけじゃないわよね。」
「あはは、違うよ。3人とも病死だし、ただ単に運が悪かっただけだ。」
でも、3人も続くと、偶然とは言えなくなります。
「あなたの悪口と同じで、聖護院真智さんに、相関関係があると言われちゃうレベルなんじゃない。」
「いや、彼女は自分で現認した結果だったし、母に絡んだ男たち、一人は当時既に73歳の爺だったし、他の二人は若かったが、母よりは少し年上だったし、三人ともガンだったと聞いているし、相関関係は否定できるだろう。逆に言えば、うちの母にかかわったらろくなことがない、そっちの相関関係の方がはっきりしている。」
美奈子、もうどうでもよくなったので話を戻しました。
「お母様のことは放っておいて、元に戻ると、何故あなたの悪口言うのかしらね。」
元々、悪意、妬み嫉みとは無縁の夫なのですから、彼の悪口を言う人の気が知れません。
「ああ。美奈子みたいに純真無垢なら、僕の悪口を言おうなんて考えないだろう。」
純真無垢と言われると面映いものがありましたが、彼が私と結婚した理由の一つに、私が純真無垢であることを挙げていましたし、確かに私は、他人の悪口を言う気はしません。
「悪口は嫌いよ。」
「だから、美奈子はいい人なんだよ。」
「元々、何故人の悪口言うのかしらね。言って得するものじゃないと思うんだけど。」
美奈子は、むしろ損得の方を考えました。
「心の貧しさかな。」
余計わけがわからなくなったので、聞き返しました。
「へ、何故。」
「心の貧しい人ほど、正しいことを言われると、カチンと来るものなんだ。それで、反発して、「あいつは生意気だ。」「仕事する気がない。」「屁理屈こねる。」「言うこときかん。」なんて言うんだな。遠因としては、僕が飲みニケーションをしないこと、お世辞を全く言わないことと、無用な言い訳はしないこともあるかな。」
「損したんじゃないの。」
「いや、別に損したとは思わないな。むしろ、出世せずに助かったし、最後まで現場で仕事できた。」
美奈子、悪口の例は、夫が陰で言われているものであろうことがわかりましたし、彼と結婚したら、自分も嫉妬されて「どうせ色仕掛けでひっかけたのよ。」とか、「田舎者のくせに。」とか、「高卒のくせに。」とか、「家柄もないくせに、不釣り合いよ。」とかめちゃくちゃ悪口言われたことがありました。
「あなた、確かに上司に堂々と逆らうけど、屁理屈じゃなく、反論できないように理路整然と主張するものね。だから相手は反論のしようがなかったんじゃないの。」
「確かにそうだな。面と向かって反論されたことはほとんどない。」
「だから陰口叩かれるんだろうけど、所詮、悪意による嫉妬としか言いようがないわ。」
「そうだな。つまりは、ここでも僕の鏡のスタンドが発動したと考えればわかりやすい。」
そう言われると、美奈子も理解できました。
彼は、悪意を鏡のように反射させますし、聞いたところによると、暴力も見事に返すそうで、彼を傷つけようとした人間は、偶然のように自分が傷つくのだそうです。
「なるほど、鏡と考えるとわかりやすいわ。それでなくとも、あなたは物理学を無視した現象起こすし、肉体もあり得ないほど強靭だもんね。あなた殴ったら、自分の方が怪我するわ。」
幼稚園の時にタクシーが足を轢いて行っても無傷でしたし、高校の時にはサッカーのゴールキーパーやって、手で軽く触れただけで、時間が止まったかのように強烈なシュートをぴたっと止めたし、強風にあおられた鉄の扉に指2本を挟まれても全く無傷でしたし、馬を扱い始めてからは、馬に蹴られても、踏まれても、倒れた馬に巻き込まれて腕を馬と鉄柱の間に挟まれても、馬の下敷きになっても無傷でしたし、確かにあり得ないほど強靭な肉体の持ち主なのです。
「そう。おそらく、母に殺されかけた臨死体験の時に、神様のイギギ様がプレゼントしてくれた「普通の人間よりも丈夫な肉体」のお陰だろう。」
彼、2歳の時に臨死体験をしているのですが、その時に転生を司るというイギギ様に、「このまま帰したら、虐待されて直ぐにまた舞い戻ってくることになるから、少し丈夫な体にしてあげよう。」と言われてその通りに超人的な肉体を授かっていたのです。
それを思えば、彼の悪口は、神様を冒涜するようなものかもしれません。
「そうか。あなたの悪口の呪いって、神様の怒りでもあるのかしら。」
一郎美奈子夫婦の子供たちもかなり霊感があり、幽霊だけでなくいろいろなものが見える長男は、「お父さんって、普通の人と違って、背後霊じゃなく、光を背負っているんだよ。だから、もの凄く強力な守護霊か神様がついているよ。」と言いましたし、本当に神様がついているのかも知れません。
「そんなことはどうでもいいし、会社とも縁が切れたから今更どうなろうが知ったことではない。」
彼、一応親切なのですが、本当は、他人がどうなろうが知ったことではないというのが本質なのです。
「そうね。会社と切れて気楽になったわね。でも、あなたってほかの会社の人たちや地元の人たちからは好かれていたし、絶大な信用があるんだから、不思議なものね。」
確かに彼は、他の会社の人たちや地元では人気があり、今は地元自治会のボランティアを務めているのです。
「ちゃんと僕を見て評価してくれる人には、親切にして返す。それだけだ。」
これも鏡かなと思った美奈子でした。
でも、美奈子は、そんな彼でしたから、会社の人たちと付き合いをしないで済んで大変ラッキーだったのです。
彼女、東北の田舎出身だったせいか、両親や兄弟姉妹に酒乱が多く、酔っぱらいが大嫌いで、酒癖の悪くない人が理想でしたから、彼との結婚は、願ったり叶ったりだったのです。
一郎、酒癖が悪くないというよりは全く酔いませんから、逆にばかばかしいと、会社の飲み会はほとんどパスし、仕事関係で酔っぱらいが家に押しかけて来ることが皆無だったことも美奈子には幸せだったのです。
「まあ、何よりもあなたは家では全く飲まないし、我が家に酔っぱらいが全く来ないで済んだから、私もラッキーだったわ。」
「僕がお金を使ったのは、車と家ぐらいか。」
面白い話で、一郎は仕事でメンタルトレーニングの教官を務めることになった時に、自分自身の目標として、「いい家と車を手に入れること」を設定したのです。
そして、1年後にはどちらも手に入れていましたから、彼の講義の裏付けともなり、信用の元にもなっていました。

収拾つかなくなってきたから、続くかな。

画像は、娘の母の日プレゼントを庭に植えたら大きくなったアジサイの花です。









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Last updated  Jul 1, 2023 10:24:37 PM
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