リタイヤ 0
廃墟 0
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彼岸すぎて暖かくなってきたのは良いのですが、日曜日は大雨でした。お馬さんもお休みにしましたが、農作業もできませんでした。さて、今日はサヴァンの一郎君の近況というか、変なお話です。一郎君、仕事も老後ものんびりとした未来を予知したため、その通りに生き、64歳になった今、めぐりあわせで20歳の馬に乗ることになりました。その馬、元は某競馬場のチャンピオンホースだったのですが、確かに能力は凄いのですが、気位が高く、少々自信過剰なのです。20歳の分、既に体のいろんなところがガタ来ていて、一郎君はそのリハビリで引き受けたのですが、走路を走っている馬を見ると、「わしの方が速いきい、勝負させえや。」とぶっ飛んでいこうとするのです。ぶっ飛ばせたら確かに速いのですが、年寄ですからパンクします。ですから、一郎君がっちり抑えます。この辺は、64歳ですが、天性のバランスとともに怪力の持ち主でもありますから、爺馬には負けません。一郎君、馬の動きをコントロールすることで、狂っているリズムを整えてあげるのです。それがリハビリなのですが、困ったことが一つありました。この馬、気位が高いくせに、意外に怖がりなんです。馬って、信じられないぐらい細かいものを見分けるんです。遠くでいつもはそこにない何かが動いていても、見慣れないものが置いてあったりしても、怖がってプープー鳴くんです。馬と言えばブヒヒと鳴くと思われがちですが、この馬の場合は、プーに近いんです。鳴くだけなら良いのですが、本当に怖がると、物凄い勢いでぶっ飛んで逃げるんです。この辺りは、元チャンピオンの面目躍如の切れ味のある逃げ方で、普通の乗り手なら絶対落馬するぶっ飛び方なんです。それでも、そう簡単には落ちないのが、キャリア50年の一郎君なのですが、そんな彼ですら落ちる時は落ちます。最初に落ちたのは、預かって1か月目で、その3日前にもよくぞこんな跳ね方できるなと感心するほど見事に跳ねて、一瞬目の前に馬のお尻が見えるほどだったのですが、それでも落ちませんでしたから、まず何が起きても落ちないとの自信を深めました。その点は、馬同様彼も自信過剰だったと言えます。その3日後、馬場に設置されている鏡にカラスが3羽喧嘩売っていたんです。鏡の観念が理解できる動物は大変少なく、カラスにしてみれば、鏡の向うに敵が居るとしか考えられないから攻撃するんです。ところが、それを見たお馬さん、「怖いよー。」と左に猛烈な勢いで反転したんです。一郎君の左足が地面に着くかと思うほど傾いての反転だったのですが、それぐらいでは落ちないのが彼の特技です。ところが、次の瞬間、爺馬、信じられないような動きをしたのです。左に大きく傾いた状態から、右に跳ね起きたのです。彼、こりゃ掟破りだよと思いましたが、慣性の法則には勝てず、右に吹っ飛ばされました。それでも簡単には落ちないのが彼で、左足をひっかけて、馬の首の右側にぶらさがったのです。しかし、這い上がるためには、何かを引っ張らないといけません。両手で手綱は離さずに持っていたのですが、この体勢では、その手綱を引っ張れば、頭絡が外れる可能性が高く、そうなると、馬がどこかに行ってしまいかねません。一郎君、3秒考えて降りました。幸い、馬はおとなしくしていましたから、また乗って、運動を続けましたが、物凄い勢いで振り回されたことになったためか、馬の体にひっかけた左足のふくらはぎを軽く肉離れしたようでした。落ちたと言うか降りたと言うか微妙なところでしたが、意図せずに降りることになったわけですから、落馬したことにしましたが、彼としては、30年ぶりの落馬でした。一郎君、健康のためと定期的に鍼灸医にかかっているのですが、鍼灸師の先生、「そんな勢いで振り回されたんだとすると、あなた63キロあるんですから、普通なら大怪我していても不思議はありませんよ。肉離れしたかもと言いましたが、もう治っているようだし、ほぼ無傷で居られるとは、信じられない強靭な体ですね。」と呆れていました。そんなこともありましたから、用心して乗っていたのですが、その4か月後、更に物凄い落ち方をしました。この時は、馬場が全て整備中だったので、唯一空いていた坂路走路を使ったのです。簡単に言うとウッドチップの坂道なのですが、一郎君、本当は毎日ここでリハビリさせたかったのです。それが何故しなかったかと言うと、競走馬の血が騒ぐのか、坂路でも走路に出たら突っ走ろうとするからでした。当然、がっちり抑えて速歩しかさせなかったのですが、1回登って帰ってきて2回目、大丈夫かなと思いつつ登って行くと、丁度中間点あたりで、突然右によれたのです。坂路走路、幅員が6メートルぐらいしかなく、両側は崖ですから、下手すると埒を突き破るか飛び越えるかして転落しかねません。当然のようにすっと体を起こして抑えたのですが、次の瞬間、彼が体を起こす動きに合わせて馬が左にぶっ飛びつつ、思いっきり首を振ったのです。偶然の一致と言いたいところですが、柔道の達人に背負い投げされたようなもので、0.3秒の早業で、見事に地面に叩きつけられていました。大学生の時には、馬とともに20メートル空を飛んだこともある彼ですが、これほどの早業で落とされたのは初めてでした。これこそ、普通の人間だったら死んでもおかしくなかったのだと思いますが、彼、40年前に柔道空手の黒帯のやーさんをびびらせたほどの格闘技の天才だったせいか、きれいに受け身を取って足から落ちました。馬場自体がウッドチップで柔らかかったことも幸いしたのだと思いますが、奇跡的に無傷だったのです。そして、また両手はしっかり手綱を握っていましたし、馬もおとなしく止まってくれましたから、その場で乗ってリベンジマッチでもう1回坂路を上がってから帰ってきました。1週間後に鍼灸師の先生に診てもらったのですが、首を軽くねん挫したようだが、他はどこも悪くないと不思議がられました。それでもめげずに乗るのが、彼のプライドなのですが、次は笑える落馬でした。今度は物凄い強風が吹き荒れていましたから、インドア馬場で乗ったのですが、後から考えると、屋外の方が良かったのかも知れません。インドア馬場、テント構造のため、強い風が吹き込むと、天井のシート全体が持ち上がってきしむのです。で、風が吹く度に、ギシギシミシミシ音がして、びびりの馬れすから、暴れまわりました。でも、逆に暴れるのが予想がついたため、暴れる度にぎっちり抑え込んで乗ったのです。それで、少し短めでしたが、運動させて、さあ、帰ろうかと出入り口に向かったところ、彼、何時も最後はクーリングダウンのために手綱を伸ばして流してやっていますから、それまでと違って楽に、馬から見れば自由に動けるようになっていたのです。終わった終わったと安心していたところで、出入り口の10メートル手前まで来たら、突然右にぶっ飛んだのです。これ、普段の彼だったら、何ということもないぐらいの暴れ方だったのですが、あっさり落ちました。53年のキャリアで一番つまらない落ち方でしたから、油断大敵とは本当だと肝に銘じました。その後も乗り続けていますが、彼、不思議なことに気付きました。3回目の落馬の後、体の何か所かが痛くなったのですが、痛い所が、馬の体の悪い所とシンクロしているのです。この馬、右前足の腱に古傷があり、右後肢から腰にかけても異常があるのですが、彼も右手の中指と薬指、右の太ももから腰が痛くなったのです。彼の体の痛みとシンクロして馬の歩様も悪くなりましたから、その後は馬に無理をさせないように乗っています。考えてみると、怖がりを除くと自分とよく似たところがある馬ですから、64歳は無理ですが、せいぜい長生きさせよう。それを目標にすることにしました。画像は、可愛い可愛い爺馬です。
Mar 22, 2021
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急に寒くなった那須です。私、この一月ばかり馬を1頭任されて乗っているのですが、その馬が20歳のアングロアラブ、元福山のチャンピオンホースのスイグンなのです。4年前に初めて乗った時は、割とおとなしい馬とのイメージがありましたし、この4年、初心者の乗馬に使っていましたから、もうすぐ64歳の私に預けてくれたのだと思いますが、まともに乗ってみたら大分印象が変わりました。私、馬を預かると、まずリズムを整えることから始めるのですが、跛行までは行かないまでも、何となくギクシャクしているのです。うーん、これだと20歳という年齢もあるし、無理はさせられないなと考え、本当なら一昨年リハビリを請け負った23歳のダブリンライオンのように速歩での坂路馬場の登坂を繰り返して調整したいところなのですが、普通に馬場で軽めに乗って調整することにしたのです。すると、時々大暴れをするのです。まあ、53年の経験というよりも、単純に小学生の時に暴れ馬に乗りまくっていた経験からなのでしょうが、私、何となく馬の動きについていけるのです。事実、小学生の時には、馬があちらに見えても落ちませんでしたし、いまだにそれに近いことができるのです。この一月間で、6回ぐらい普通なら絶対落ちたよなあと思う暴れ方をされましたが、落ちなかったのは動きについていけるからだったと思います。ですから、50年以上乗っていても数えられるほどしか落馬したことが無いのですが、先週、三十何年かぶりに落ちました。原因はカラスで、カラスが馬場に設置されている鏡に映った自分と喧嘩していたのです。それを見て驚いたスイグン君、まず左に反転したのですが、そのまま転倒すると思ったぐらいに傾いたのです。恐らく45度ぐらいは傾いたと思いますし、左足が地面に着くと思ったほどだったのですが、そこからが元チャンピオンのアングロアラブのバランスの凄いところで、こけなかったどころか、右向きに起き上がりつつ反転したのです。正直信じられないような動きでしたし、落ちないのが特技の私でもその動きにはついていけませんでした。それでも、左足がひっかりましたし、そのままは落ちず、馬の首の右側に手綱で宙ぶらりんになった状態で止まりました。冷静に考えた結果、この位置から這い上がるには手綱を引っ張るしかなく、そうなると頭絡が外れる危険性が大きかったので、諦めて降りました。ですから、落馬とは言えないような落ち方ではあったのですが、まあ、意図せずに降りることになったことに変わりはありませんから、三十数年ぶりの落馬としました。スイグン君、悪いと思ったのかおとなしく止まっていましたので、最近は無理せず踏み段のある所でしか乗らなかった私ですが、何も使わずに左足を鐙にひっかけてさっと乗りました。そして、まず「カーカー」と大声を出してカラスを追っ払い、安全を確保してから運動させました。今回、怪我をしないのも特技の私でしたが、反転した時に左足がひっかかったため、左足のふくらはぎを肉離れしました。2日間跛行し、腰や背中にも痛みが出ましたが、1週間たって走り回れるまで回復しましたから、年齢の割には強健なのだと思います。その後スイグン君、休日も休みなしに運動させていますが、そのせいか、大分おとなしくなりました。候補生だと何かあると直ぐ手綱を引っ張るため、背中を張って首を上げる癖がついていましたから、手綱は極力引っ張らずに脚で推進して首を前下方に伸ばさせて背中をほぐしてやるようにして動きを整えています。馬の20歳、普通そこまで生かしておくことが少ないため、一概に人間だと何歳とは言えないのですが、63歳の私よりも年寄りである可能性大です。ホースセラピーという療法がありますが、人間、普通に乗馬しているだけで、自然に体のバランスを取りますから、体幹を鍛える効果があります。爺が爺に乗ってお互い健康に生きて行くことを目標にすることにします。画像はスイグン君ですが、この馬、小さい頃にケガしたとかで、しっぽがないのです。見栄えが悪いので、現役の競走馬時代はしっぽに付け毛をつけて出走していました。ハエタタキの役目も果たすしっぽがないせいか、ハエを異常に嫌いますが、ピコピコと振るしっぽも可愛い馬です。
Nov 9, 2020
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