そんなテルアビブ★イスラエル★

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2015年02月06日
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たったひとりの聖戦(1)
たったひとりの聖戦(2)
たったひとりの聖戦(3)
たったひとりの聖戦(4)
たったひとりの聖戦(5)


たったひとりの聖戦(6)



ロバート・フィスク著      
安濃一樹訳
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 モハメッドがついてくるように合図してきた。小川に沿って歩き、水を飛び越えた。虫の羽音に満たされた闇の向こうに、石油ランプの火が揺れている。ランプのそばに、サウジのローブに身をくるんだ背の高い髭の男が座っていた。立ち上がったオサマ・ビンラディンの傍らには二人の息子がいた。オマルとサアド。まだ十代だった。
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 「アフガニスタンへようこそ」 と少年たちの父親がいった。
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 彼は四〇才になっていたが、二年半前にスーダンの砂漠で会ったときよりもずっと老けていた。近くで見ると、オサマは群を抜いて背が高く、ほっそりとした体をしている。あの細い眼のまわりに新しい皺が刻まれていた。また少し痩せた。長くなった髭には白いものが混じっている。白いローブの上に黒い袖無しを着て、チェッカー模様の頭巾クーフィーヤをかぶっていた。オサマは疲れているようだった。


 健康をねぎらう彼の言葉を聞いて、ここまでずいぶん遠い道のりだったと伝えると、オサマは「私も遠い道のりを来ました」とつぶやいた。この男には孤独が潜んでいる。以前には感じられなかった。彼は心を閉ざしたまま、自分の怒りを探り、恨みの深さを計っていた。
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 笑うたびに、オマルに目を移した(丸い目をした一六才の少年。お揃いのクーフィーヤ)。オサマの眼は漂い、暑い闇を見つめる。闇の向こうの荒野には、男たちが武器を手に巡回していた。手の空いた者たちが私たちの会話を聞きに集まってきた。
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 ちょうど十日前、サウジアラビアでは、ダーランの隣町アルコバールにある米空軍施設が攻撃されていた。爆弾を積んだトラックが兵士の集合住宅に突っ込み、その一角を吹き飛ばした。だから私たちの会話には、殺された一九人の兵士が影を落としていたことになる。
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 ウォーレン・クリストファー米国務長官が破壊された施設を訪れ、アメリカは決して「暴力には屈しない」こと、犯人を必ず捜し出し捕獲することを約束した。一九九〇年に、米軍がサウジアラビアを「防衛する」ためにやってきたとき、ファハド国王は暴力行為が起こることを予見していた。この事件が起きてから、国王は痴呆性の麻痺状態に陥ったようで、何もできなくなってしまう。


 恐れていたからこそ、ファハド国王は先のジョージ・ブッシュ大統領から約束を取りつけていた。イラクの脅威がなくなれば、アメリカはサウジアラビアから撤退するという約束である。しかし、米軍は居座った。サダム政権がある限り湾岸の危機は去らない、とアメリカは主張した。サダム政権は潰さないと決めたのがブッシュだったにしても、なにも問題にならない。
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 オサマ・ビンラディンは話したいことがあった。「ついこの前、サウジアラビアから撤退するようにアメリカに忠告しました。いま、フランスとイギリスの政府にも同じ忠告をしましょう。軍隊を引き上げなさい。リヤドとアルコバールで起きたことを見ると、攻撃を行った人びとが標的をよく選んでいたのがわかります。いちばんの敵を狙った。アメリカです。他の敵は狙わず、アメリカ人だけを殺している。軍隊や警察にいたアラブの兄弟たちも殺さなかった。・・・この忠告をイギリスに伝えてください」


 アメリカはサウジアラビアから撤退し、湾岸からも去れ。中東に巣くう「悪」はアメリカがもたらした。この地域を我がものにすることを企て、イスラエルを支援する。そこからすべての悪が生まれる。サウジアラビアは「アメリカの植民地」となった・・・。
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 ビンラディンはゆっくりと正確に話していた。ランプの明かりを頼りに、エジプト人が大きなノートに指導者の言葉を書きつけている。まるで中世の王室に仕える筆記官のようだった。
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 「西洋の国や人びとに向かって戦争を宣言しているのではありません。あくまでも敵はアメリカです。自国の民さえも踏みにじるアメリカ政権に戦いを挑みます」
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 私は割って入った。アラブ諸国とアメリカは違う。アメリカ政府はアメリカ市民が選んでいる。だから政府は自分たちの代表だと考えているだろう。オサマは私の意見に関心を示さなかった。ほんとうに無視してくれたらよかった。それからの長い月日に、彼の戦争はアメリカ政府を選んだアメリカ市民を巻きこみ、数千人の命を奪ったからだ。
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 「 アルコバールの爆弾攻撃 は、アメリカによる占領が直接の原因ではない」と彼は主張した。「アメリカはイスラム教徒にひどい仕打ちを繰り返してきました。それが原因です。パレスチナを蹂躙するユダヤ人を助け、パレスチナやレバノンでの虐殺を許した。 サブラやシャティーラ カナの虐殺 に目をつむった。 シャルム・エル・シェイク会議 で私たちの権利を奪った」
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岩波『世界』誌、〇五年一二月号掲載。
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Extracted from The Great War for Civilisation: the Conquest of the Middle East by Robert Fisk.
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ロバート・フィスク 。英『インディペンデント』紙中東特派員。ベイルート在住。北アイルランド紛争、イスラエルのレバノン侵攻、イラン革命、イラン・イラク戦争、ソ連のアフガン侵攻、湾岸戦争、ボスニア戦争、アルジェリア内戦、NATO軍のユーゴ空爆、イラク戦争などを取材。著書にPity the Nation: Lebanon at War (1990.1992)など。最新刊にThe Great War for Civilization: The Conquest of the Middle East がある。
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最終更新日  2015年02月22日 20時56分49秒
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