その正体が”欠落”だと
気付くまでにはしばしの時間が必要だった
坂上の町を走る電車の音
森の向こうの幹線道路から届くトラックの音
家の前の道を通る人や自転車や車の音
そんな普段であれば深夜まで耳に届くはずの諸々のノイズ
それが今夜は聴こえてこない
不審に思って窓を開ければ
そこに広がるのは白い闇
ぽつりぽつりと間遠に立つ街灯のせいで
普段は黒々とした闇に沈むはずの
町が、家並みが、道が、畑が
白く薄いヴェールに覆われて
わずかばかりの灯りに、ふうわりと浮かび上がっている
白い細片は今も空の高みから降り続き
空の闇を仄かな蒼に塗り替える
町から音を吸い取っているのは
落ちては積もるその細片
開けた窓から流れ込む冷気
しん、とした静かな薄闇
美しいけれど、明日の朝には消えてしまうだろう儚さ
雪の夜の風情はまるで
白く細く楚々とした
儚げな麗人のかんばせ