むらきぃの司法試験受験勉強記

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シニア層@ Re:大村敦志『新基本民法7 家族編』[第2版](04/07) シニア層の知りたいことは、0896244450 …
もきち@ Re[1]:はじめまして(10/04) むらきぃさんへ 返信ありがとうございま…
むらきぃ @ Re:はじめまして(10/04) もきちさんへ はじめまして。 コメント…
もきち@ はじめまして はじめまして。 基本書を検索していて、た…
葵新伍@ 伊藤靖史・大杉謙一・田中 亘・松井秀征『会社法(LEGAL QUEST)』(04/24) 三版は誤記誤植が沢山ありとても読みにく…

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2018.08.01
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カテゴリ: 刑法の教材
前田雅英『刑法総論講義』[第6版](東京大学出版会,2015)
498頁(実際は456頁)
※​ 第7版 は2019年5月発売​
※最新版は2024年5月発売の​ 第8版

前田雅英『刑法各論講義』[第6版](東京大学出版会,2015)
564頁
※​ 第7版
※最新版は2025年10月発売の​ 第8版

​​

元首都大学東京法科大学院教授で,現在は日本大学法科大学院教授の著者による基本書。

著者は,長年,旧司法試験の考査委員を務めていました。

結果無価値論の立場を採っています。

総論は,平成25年の刑の一部執行猶予の新設に対応しています。

各論は,平成29年の性犯罪規定の改正には対応していません。

総論には,大判明治36・5・21刑録9輯14号874頁から最決平成26・11・25刑集68巻9号1053頁までの判例が収録されています。

各論には,大判明治35・6・12刑録8輯6号93頁から東京高判平成27・1・29東高刑裁速報3538までの判例が収録されています。

※追記

総論の 第7版

各論の 第7版 ​には,大判明治35・6・12刑録8輯6号93頁から最判令和元・9・27刑集73巻4号47頁までの判例が収録されています。


私は,本書を基本書として使用しています。

黒と青の2色刷りで,図表も多用されており,重要な箇所はゴシック体で強調されています。

条文も,全てではありませんが,基本的には四角の囲みで引用されて載っています。



今回の改訂の意図について,著者は以下のように述べています。

「5版の『研究者からは,理想的にはここまで読んで欲しい』という内容から,6版では,『学生にとってどれだけ読めば十分なのか示してほしい』という,ニーズに答えたつもりである.具体的には,『現在検討する必要のある論点に絞り込むとともに,議論の筋道を骨太に示すこと』を徹底した.もとより,いかにスリム化しても『行間を読まなければならない書』は,むしろ難解なものとなってしまう.本書ではそのようなことを回避し,さらに,独習者の便宜も考え『注』を充実させたつもりである.」(総論はしがき)


著者は,結果無価値論を採る平野龍一博士の弟子なので,一応,結果無価値論に立脚しているとされています。

ただ,この点について,本書では以下のように述べられています。

「行為無価値・結果無価値の概念は,議論を整理するための『モデル論』に過ぎない.その対立軸は複雑に分かれる.ここで何より大切なのは,行為・結果無価値論のいずれか正しいものを選んで,それを徹底することは許されないということである.結果無価値を徹底すれば,『『結果』のない未遂』は処罰し得ないことになる.行為無価値を徹底すれば,既遂と未遂を同じように処罰しなければならなくなる.それに近い結論を主張する学説は存在するが,現実の解釈論は,それぞれの座標軸に関し,徹底した両極端の中間に妥当な点を見つける作業なのである.そして,『妥当な点』は時代により動く.現時点で,具体的な事例に関する国民の意識に適った結論を,最もうまく説明できるように,下記の対立点の調和点を求めていくのが,違法論なのである.」(総論32頁)

すなわち,少なくとも本書のような基本書あるいは概説書レベルにおいては,著者は極端な結果無価値論は採っておらず,むしろ判例・実務に近い見解に立脚しているものと思われます。

また,本書では,最高裁判例の結論に明確に反対しているところはありません(見落としがあったらすみません)。

私は第3版以降しか読んだことがないので,初版および第2版においてどのような見解が採られていたのかについては詳らかには把握していませんが,版を重ねるごとに改説して徐々に判例の結論と軌を一にしてきたことは確かです。

唯一,著者が本書において判例変更の可能性を指摘していた強制わいせつ罪における性的意図必要説を採る判例(​ 最判昭和45・1・29刑集24巻1号1頁 ​)は,​ 最大判平成29・11・29刑集71巻9号467頁 ​によって判例変更されたので,これで最高裁判例と結論を異にする箇所はなくなったのではないでしょうか。


さらに,著者は,

「法曹実務家は,裁判員への直接的説明,説得という作業が加わったことにより,学説の理念的説明からの距離を拡げざるを得なくなった面がある.一方,『法理論と実務の架橋』を目指す法科大学院は,これまでの法学部教育よりは判例に引き寄せられる.刑法学者は『法曹教育の場』で,『確立した判例に反する理論』の空虚さを痛いほど思い知らされたのである.」(各論はしがき)

とも述べています。

すなわち,著者は,法科大学院の教壇に立ち続けてきたからこそ得られた法曹教育の経験を,判例中心主義を徹底した基本書を著すという形で受験生に還元しているのだと思います。

そして,そのような観点から,本書における司法試験への意識は徹底されており,その一端が今回の改訂にも見られました。

2014年(平成26年)司法試験短答式試験刑事系第8問では,

1.甲は,電磁的記録部分を偽造したキャッシュカードを使って現金を得ようと考え,これを乙銀行に設置された現金自動預払機に挿入して作動させ,これに保管されていた現金を引き出した。

2.甲は,消費者金融会社の無人契約機を使い,同無人契約機とオンラインで結ばれているオンラインセンターにいたオペレーター乙に対し,Xに成り済まして会員契約を締結した上,同無人契約機を操作して金銭の借入れを申し込み,甲をXと誤信した乙に同社の電子計算機を操作させ,同社名義の預金口座から甲の管理するX名義の預金口座に50万円を振り込ませた。

という2つの選択肢が出題されました。

これを受けて,各論第6版では第5版の記述を以下のように改めています。

「電磁的記録部分を偽造したキャッシュカードを現金自動預払機に挿入して作動させ現金を引き出す行為は窃盗であり,消費者金融の無人契約機を使い,そのオペレーターAに対し,別人になりすまして会員契約を締結した上で無人契約機を操作して金銭の借入れを申し込み,オペレーターBに電子計算機を操作させて現金を振り込ませるのは詐欺罪(246条)を構成する.」(各論251頁 脚注35)


本書に対しては内容面で何かと批判も多いようですし,時代遅れやオワコンなどと揶揄する声も聞こえてきます。

また,判例中心主義を謳う基本書は本書以外にも刊行されています。

しかし,私は,現役の法科大学院の教員である前田教授の司法試験への熱意は信頼に足るものだと考えています。

それに,刑法の単著の基本書の中で本書ほど司法試験を意識したものは他にはないのではないでしょうか。

本書は定期的に改訂されており,その度に法改正や新判例に関するアップツーデイトも図られているので,今もなお受験勉強に対応できる教材として有用だと思います。

さらに,著者は,単著ではないにしろ,刑事訴訟法,刑事実務基礎の教材も刊行しており,刑法と刑事訴訟法については判例集も出しています。

したがって,刑事系科目に関しては前田教授の著書で揃えることが可能です。

以上の理由から,私は本書を刑法の基本書に選びました。


刑法の教材の紹介は1回お休みします。


次回は,演習書について。


それでは。





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Last updated  2025.10.06 22:55:04
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