つららの戯言

つららの戯言

見てみたら 髑髏城in大阪


  2004年5月22日(土) 昼・夜の部

1輪の蘭
 それが亡き大殿、信長との縁の現れ。

 1人は共に死ぬことも出来ず、ただ自らの殻の中に閉じこもっていた女
 1人は自分の力足らずと思い、今までの過去を全て消し去ろうともがく男
 そしてもう1人は、自らが信長となり天下を取らんとする男

 その3人の思いが重なりあい、絡みあい、もつれあった物語
 それが大阪厚生年金で見た、新しい「髑髏城の七人」

 たった1つの小道具、たった一輪の蘭の花で、こんなに舞台のイメージが変わるとは。

 蘭兵衛が登場する最初のシーンから彼女の帯の根付のように、その花は登場します。クリーム色の着物ではあまり目立たないそれですが、男物の着物姿なのでそれだけで女性だという印象が強くなります。
 蘭兵衛と捨之助がツライ昔話を話すところ、蘭兵衛はその花を帯から抜き、見つめながら語りだします。まるでその花ごしに信長がいるかのように、とても寂しく、悲しい声で。
 そして天魔王に寝返った、蘭兵衛はその蘭を切り捨てた捨之助に向かって投げ捨てます。「もう私には、新しい大殿とならんとする天魔王がいる。だから大殿の思い出は必要ない」という気持ちからなのでしょうか?

 そして全ての戦いを終えた、捨之助の帯にその蘭がありました。
七人の仲間が新たな道に進むそのときに、捨之助もその蘭の花を投げ捨てます。「やっと俺も縁を断ち切れそうだ」という風に。そして捨之助は沙霧に背を向けて歩き出します。
 一人残され、捨之助を追いかけようとする沙霧は、ふとその蘭に目をとめる。彼女は気が付いたのだろうか?それがいつも蘭兵衛が身に付けていた花だということに。沙霧はその蘭の花を、天魔王の仮面に供えます。その仮面は亡き大殿の骨。
 私は思った。これで蘭兵衛はやっと大殿のところにいけると。本能寺で一緒に死ぬことが出来なかった。それから彼女はずっと死に場所を探していたのかもしれない。その心の隙間を利用したのが天魔王。そしてその新たな主人に裏切られ、死んでいった蘭兵衛。一緒に生きてきた仲間を裏切り、外道と自らを蔑みながら死んだ彼女。けれど沙霧のこの行動で、蘭兵衛は蘭丸として愛する大殿のそばにいけた。私はそう感じた。
 東京新国立のままだと蘭兵衛は救われることなく死んでいく。愛する男と一緒に死ぬこともできず、信じた男に裏切られたままで。

 女の蘭兵衛だからできる演出なのだと感じました。主君第一という男の蘭兵衛ではなく、愛する男のためという女の蘭兵衛だから見せることのできる演技。水野さんの表情もいいんだ、蘭を見つめるところ。
 それにしてもなんでこれを新国立でやらないのだよ。仕方がないから脳内で新国立ヴァージョンのラストと大阪厚生年金のラストを融合する私。長い奥行きを歩き出す捨之助。それにじゃれ付くように一緒にあるく沙霧。きっと捨之助は笑っているんだろうな。そして残された舞台上には天魔王の仮面、というよりも大殿の骨に添えられた蘭丸の花。最高じゃない。
 いのうえさんとしては長い奥行きがない舞台で、新国立とは違うラストにするにはどうしたらいいのかと考えた上の苦肉の策かもしれないが、もうちょっと早くにその演出を考え出してくれてれば(泣)
ビデオ撮影は新国立で終わっているので、映像としては残らないのじゃないだろうか・・・非常にもったいない。

 それにしても、役者たちの演技もそうとうヒートアップです。
 古田新太という役者のでかさに隠れて見落としがちですが、橋本じゅんさんも今回非常にいいですよ。7年前に比べて見劣りしない動きのよさにプラスして、今回男気パワーアップです。優しくて逞しくてまっすぐで。馬鹿だけれど、一本筋の通ったいい男なんです。まぁいつものように余裕がでてきたのかお遊びタイムが炸裂し始めましたけれども。まぁそれがじゅんさんの面白さ。
 坂井はね、もう私としては・・・どうなんでしょうか。諦めました。じゅんさんに守られる太夫なのね。って感じです。聖子さんを求めた私が馬鹿でした。

 それにしても古田は凄いなぁと。また少し痩せたみたいです。殺陣の切れは相変わらずよいです。殺陣になれたのか最後の怒涛の3連発の時の表情もとてもいいです。天魔王までの2つは鬼の形相。「俺の前に立ちはだかるヤツはたたっきる!」という感じ。怒り頂点に達しという顔です。相手にしてないんです、敵を。自分の前にくるやつをなぎ倒すという粗荒しさが顔にでていて怖いぐらい。

 私が一番好きなシーンは蘭兵衛を従えて無界屋に火を放つシーン。轟音と共に赤く燃え上がる無界の里。それに照らされながら不敵に笑みをたたえる天魔王。鳥肌が立つほど見入ってしまう。悪役古田新太好きとしてはもう真骨頂です。

 舞台が狭くなったお陰で、無界の里の奥行きがなくなったのは凄く残念でならない。髑髏城に向かう蘭兵衛がみれないのがもったいない。その代わり焼け落ちた無界の里ができました。

 得点 7点/10点満点 水野さんの演技に、じゅんさんの男らしさに そして小道具班のインディーさんに

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