つららの戯言

つららの戯言

見てみたらさぁ『TRUTH』


作・演出:成井豊+真柴あずき

出演:岡田達也・上川隆也・大内厚雄・小川江利子・細見大輔・岡田さつき
篠田剛・川原和久他

 感想


 やっぱり物語が薄っぺらい印象はぬぐい消れない。幕末という切羽詰った時期に自分にとっての『TRUTH』を指針に生きていくというのがこの芝居の主旨らしいのだけれど、その6人それぞれの『TRUTH』が非常に薄い、軽い。
 2時間ちょいぐらいの芝居で6人すべての心理状態を描くのは困難なのかもしれないが、それが命題ならばきっちりと描くべき。『TRUTH』という言葉がぜんぜん意味がなく、重くもない。生かされてない。

 20年間芸風(劇団風)がちっとも変わらないというのはある意味、すごいことだと思うけれど、それは個性がないということなんじゃないのだろうかと思えてしまう。はっきりと言ってしまえば、6人の中で個性が目立つのは上川さん以外にない。しかし彼の『TRUTH』の源のである劣等感や屈折した思いでさえも2階席の後ろまでは届きはしない。あれほど帝国劇場では締め付けられるほどの演技だったのに・・・。

 女性陣はその最たるもので、3人なので皆どれもかれも同じような印象。岡田さんが笑い担当なので違うがわかるぐらい。立ち居振る舞いも武家の娘と師範代の妹のキャラが同じというのはいかがなものか。

 必要なのは、あの「死ぬより辛い道を選ぶ」と言い放った最後であるべきで、死んだ友人を出して「許す」というような台詞を言わせるのは卑怯で、安直だ。そんなに簡単に物語を終わらせてよいのだろうか??『えぇぇ!!』って純粋に思ったわ。かつて好き合っていた二人とは言え、許婚を殺された相手に、疑いが晴れたからといって「一緒に生きていきましょう」ってすぐにいうか?それを彼にだけは見える親友が「許す」というか?なんかご都合主義だなぁ・・・。仲間を裏切ってまで「父の汚名を晴らす」という『TRUTH』を持っていた上川の物語は終わりですか?
「初の悲劇」といううたい文句なら、すっぱりと思い切ったものにして欲しい。


 殺陣は・・・これは私が「新感線病」に侵されるいるので、もうなんともいいようがありません。エンターテイメントとしての『殺陣』という技術は型をきっちりとつけるというのとは別なんじゃないかなぁと思った。それは基本としてそれに「面白み」をつけるのって結構大変で、贅沢に、お腹いっぱいってぐらいまでに仕立ててくれている劇団を見続けている身としては、そこまで興奮もしなかったなぁ。


 殺陣のスピードが川原さんと上川さん、それ以外の方とでは明らかに違う。もうそれは明白な事実で、演技の上でもそうだ。
 それでも彼が自分の劇団を大切にするのは、素敵なことだとは思う。ならばその思いに答えられるような劇団であって欲しい。10年ぶりに見た一観客が偉そうなことをいうのはどうかと思うけど、歴然と隔たるその差はかなりある。
そこをどう克服するんだろう・・・なぁ・・・。劇団を長く続けるというのは本当に大変なんだろうなぁと思った。変わらないこと、変わり続けること。


 点数3点(上川さんと、川原さんへ) 当分、キャラメルには行きません。



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