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2004年02月02日
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テーマ: 復職ライフ(5130)
カテゴリ: カテゴリ未分類
 久し振りに、本の感想である。
 著者のことは、一切知らない。初めてお目にかかる名前である。本書についても、事前情報は一切なし。本屋で、新刊のコーナーの隅っこにあったのを見つけて、買ってきたのである。面白いかつまらないか、読んでみてのお楽しみ、というやつである。
 本書は、「草にすわる」「砂の城」の二編が入っている。表題作「草にすわる」は、主人公の洪治と、高校の時の二年先輩だった曜子との交流が語られる。
 洪治は、大学卒業後、バブル崩壊後の大手不動産業に就職し、営業に配属されるが、冷え切った市況で売れるわけがない。それでも売れ、と言われ、業績が上がらなければ転勤させられ、早い話が嫌気がさして、会社を辞めた。そして5年間、蓄えだけで、「待ち設ける」事にしたのだった。その間、入院・手術があって、体調も回復せず、鬱々とした生活になる。
 曜子の持っていた八木重吉の詩集に、このようなフレーズがあった。「わたしのまちがいだった/わたしの まちがいだった/こうして 草にすわれば それがわかる」このフレーズに引っかかるものを感じる洪治。そして、曜子との付き合い。紆余曲折を経て、勤めていたスーパーを辞めることになり、発作的に、あるいはこういう時のためにいつでも自暴自棄になれるように、心が傾いていたのだろう。洪治と二人で、睡眠薬心中を図る。酒の勢いもあって、睡眠薬をより多くむさぼり食った洪治は……、という話。
 「砂の城」は、小説家・矢田が、妻や息子の問題を抱え、再婚してもなお金をせびりに来る息子が覚醒剤事件を起こしたり……文学者という仮面を付けた内面は、非常に鬱屈した状態になっている。現実の鬱屈を思うに、己が築いてきた文学者、小説家という社会的名声は、砂の城のごとくもろいもの。こちらも、人の心の弱さを描いている。
 どちらも、キーワードは『覚醒』である。作品の最後に、主人公は覚醒する。覚醒して、精神の安寧を得る。
 作風が、持って回ったような筆致なので、作品世界に入るのに時間がかかるが、後味の悪い作品ではない。でも、この作者を好きになれるかどうかは、別の話。





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最終更新日  2004年02月02日 19時00分52秒
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