りらっくママの日々

りらっくママの日々

2010年01月03日
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今日の日記




「ある女の話:カリナ62(男性の同僚)」




イシタニくんは隣の課にいて私の二年先輩にあたるけど、
童顔と専門卒で周りの同期と同じ歳か年下なことから、
みんなに「くん」づけで呼ばれていた。

それを知ったのは最近私の課と合併してから。
話をしてたら同じ歳だってことがわかった。
同級生って聞いてから、私たちの仲で少し打ち解けた気分があった。

いっしょにする仕事が時々あって、
ポツリポツリと当たり障りの無い世間話をする。
だからかもしれない。
今日はいきなりこんなことを聞いてきた。

「ミゾグチさんてさ~、彼氏いるんだよね?」

いつもの穏やかな何でも無い世間話の延長のようだった。

「うん。いるけど。」

いつも通り愛想が悪く無く、あたり障りない程度の短い返事をした。
イシタニくんは、誰にでも人当たりが良くて、
ちょっと青山くんと似た雰囲気をもっていたから、
別に隠すことも無いだろうと、その時は思った。

職場で変な噂を立てられたこともあって、
私は職場の人たちに警戒心が強くなっていた。

今までイシタニくんがプライベートを聞いてきた事は無い。
私は何か聞かれれば、それが明日には職場に広がっているような、
そんな疑心暗鬼にかられていた。

でも、それよりも、
自分に何かを話しかけてきてくれる人がいることの方が嬉しかったりした。
末期かもしれない。

私は淋しかったんだと思う。

「そっか~、付き合ってどれくらい?長いの?」

でも何でこんなこと聞いてくるんだろう?
正直この前いいたい放題なことを言ってきた同期のベップのことを思い出した。

ベップ=B子。

あんたなんかと付き合う男いるの?だの、友達いるの?
って言ってきた女。
いるって答えたから、それがイシタニくんに伝わったとか?

人って不思議だ。
どうして自分に味方がいるって思うと、あんなに強くなれるんだろ。
どうして誰かが誰かを嫌いになると、
その人の短所をほじくり出して、
自分も嫌っていいって思えるんだろ。

何だか学生時代の繰り返しをしている気がした。
今度は外堀を埋める無視に加えて攻撃系。
コレが私が思ってた大人なの?
まるで子供返りだよ。

大人は子供より性質が悪い。
問題があるような人間とは、わざわざ関わりたくないから、
いっしょにいる人と無難に合わせておく。

一人で行動すると攻撃を受けることがあまりにも多いから、
みんな集団で行動するんだろう。
これが社会的協調性。

大人になったのに一人でいられないなんて変。
でも大人になったからなのか。
自分と波長が合う人なんて早々いないことがわかる。

でもとりあえず、今回のことで私はベップのことが嫌いになった。

まるで全員彼女の仲間かのように、みんなを連呼する彼女。
みんなって誰?
ちゃんと個人名を言って。
あなたは、みんなにそんなに好かれてるの?

みんなが私を嫌いって言うなら、
私は、そんなこと言うアンタが大嫌い。

そうキチンと言える自分になりたい。

…ため息。


またベップのことを思い出して、
そんな自分にゲンナリして、
つい聞かれたことに返事が遅れたのを、
イシタニくんは私が不愉快に感じたと思ったらしい。

「あ、ゴメン。
いや、俺さ、今付き合ってる子がいるんだけどさ、
何て言うか、
最近彼女、
俺の携帯勝手に見たり、手帳見たりするんだよね。
彼女だからってさ、そこまでするのどうなんだろ…って、
最近思ってて…」

「え?そんなことするの?」

意外な話に、つい思ったままの声が出た。

「うん…。
ミゾグチさんは彼氏にそういうことしたことある?」

「ううん…。無いなぁ。
でも、どうしてそんなことするの?
イシタニくん何か隠し事でもあるの?」

「別に無いけどさ、そりゃあ男だから、
それなりにいろいろ彼女に言えない付き合いもあるけど…。
彼女、俺の行動が気になるんだって。
見たって付き合ってるんだから当たり前みたいに言われると強気に出れなくてさ。」

確かにイシタニくんは真面目でムキになるし、童顔だからか、
よく女の子にからかわれていた。
男女問わず可愛がられるタイプだと思ってたけど、
彼女は、かなり独占欲が強い人なのかもしれない。

「好きだからするんじゃないかな。」

何でそんな話をされたからわからなくて、
彼女に愛されてるノロケかと思って適当に答えた。

「好きだとそういう行動するの?
じゃあミゾグチさんは彼にそんなことする?」

「ううん…しないけど。」

「好きじゃないからってワケじゃないよね?」

「うん…
だって、そんなの知っても仕方無いじゃない。
疑ってるワケじゃないけど、知らぬが仏って言うし。」

「俺もそう思う。」

それからお互い黙々と作業を進めた。

手を動かしながら、私は過去の自分を思い出した。
束縛される自分、する自分。
知りたくも無いことを沢山知ってしまった時の嫌な感じ。
でも、知らないのが良しとも思わないけど。

今青山くんとの穏やかで優しい付き合いとはエライ違いだ。
そう思うとイシタニくんが何だか気の毒に思える。

カタログのファイリングが一冊終わったらしくて、
ドサッと一冊、机の上に置いたイシタニくんは、
ちょっと疲れたように見えた。

会議室の向こう側にみんなが働いてるのが少し離れて見えた。
だからなのか、
イシタニくんは警戒心無くこんな話をしてきたようだった。

何でそんな話をするのに私を選んだんだろう?
って思ったけど、
すぐに、私なら誰にも話さないだろうからだと思った。
話さないじゃなくて、話せない。
私には会社で話す相手がいない。

私がいつも一人でいるから。

そういう立場の自分が何だか悲しかったけど、
それでこういったプライベートを打ち明けてもらえるのも悪くないかな…
と思った。

多分、イシタニくんは誰にも話されたくないから私を選んだ。
彼女の悪口を言ってるみたいなのが嫌だから、
困ったり疲れたりしてても誰にも言えなかったから、
私を選んだのかもしれない。

「イシタニくんは優しいんだね。」

私はイシタニくんが分けてくれたカタログに穴を開けながら言う。

「そう?何か情けなくない?
もっとキッパリ言えばいいんだけどさ…。」

「言いたいこと言うと相手を傷つけちゃうから…
って思ってるんじゃないの?」

「…」

イシタニくんは何か考えてるみたいに、その返事をしなかった。

「ミゾグチさんはそうなの?」

「え?」

いきなり話が自分の方にふられたので、
咄嗟に何て言っていいのかわからなくなった。
今の質問は会社での私のことを指してるんじゃないかと思って。

「ミゾグチさんて、聞いてた感じと違うな~。
俺が思ってた通りの人な気がする…」

「聞いてたって何を?」

イシタニくんはそこで言っていいのかどうか迷った顔をした。

「あ、ううん、いいや別に。
聞きたくないし。
もう誰にどう思われてたって別にいいし。」

投げやりに言って、私はイシタニくんから目を逸らした。
悲しい気持ちでいっぱいになってた。
イシタニくんが、どうフォローしようか戸惑ってる空気がわかる。

別にイシタニくんが悪いワケじゃない。
気を遣わせてしまうようなことを言った私がいけないのかもしれない。
泣きそうな気持ちを抑えて、
無理に笑顔を作った。

「ずいぶん沢山カタログがあるんだね。
私、あっちから付箋取ってくるね。
それとデータの取り込みが必要だよね?」

私が席を立って行こうとすると、ずっと黙ってたイシタニくんの声がした。

「あ!あのさ…」

何?って私が振り返ると、席に座ったままイシタニくんは申し訳無さそうな顔をしていた。

「いや、何でもないよ。ゴメン…」

そのゴメンがどこにかかるのか、
何となく、わかったような気がして、
私はおどけて言った。

「えっと…別に大丈夫だよ。
では、行ってくるであります!」

イシタニくんは、一瞬ホッとしたような顔になって、
私に調子を合わせてくれて、同じように敬礼してくれた。

「ヨロシクお願いしますであります!」

お互い何だか可笑しくて笑った。

泣いたりしなくて良かったと思った。

こうして少しずつ話せる人が増えるといいな。

まだガンバろう…私。




前の話を読む

続きはまた明日

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最終更新日  2010年01月06日 22時00分33秒
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