りらっくママの日々

りらっくママの日々

2010年01月25日
XML
今日の日記




「ある女の話:カリナ84(決意2)」



思い切り深呼吸をした。

ただいま。

マッシーのところにいたのが、何だか夢のようだ。
竜宮城にでもいたような気分。

でも、
私はまだ一気に歳をとってない。

やることがある。
ちゃんと。

おばあさんになる前にやらなくちゃ。
取り返しがつかなくなる前に…

とりあえず、朝からやってるバカ高い料金を取る喫茶店に入って、
私は朝食を食べた。

青山くんは、ゆっくり眠れただろうか?
この週末を、どう過ごしたんだろ?
ゆっくり休めてればいいんだけど…。


  おはようマッシー!

  無事帰ったよ~。
  でも、家じゃないけど。
  これから、この足で、青山くんのとこに行ってきます!
  とり急ぎ、連絡しました。


マッシーにメールを送るとしばらくして、
「健闘を祈る!」って返事が来て、
私はその言葉を何度も読んだ。

励まされる。
胸に温かい気持ちが込み上げる。

さて、そろそろ行こう!

11時。
青山くんの携帯に電話をした。

「お…はよ…」

青山くんは、まだ寝ていたらしい。
よっぽど疲れてたんだな~って思った。

「ごめんね。11時ならもう大丈夫かと思っちゃって。」

「いや、いいよ。助かった!
これ以上寝たら、夜眠れなくなるとこだった。」

慌てた青山くんの声。
あんな別れ方をしたのに、いつも通りなんだと思った。
それが、何だか妙に懐かしくて、
ホッとする。

「返事をちゃんとしたいと思って…
会って話したいんだけど、今日、どう?
電話の方がいい?」

「会おう。今すぐ支度するから!」

私は青山くんの最寄り駅前の喫茶店にいることを伝えた。
青山くんは相槌を打って、電話を切った。

青山くんの様子から、
やっぱり返事を待ってたんだと思った。

今更ながら、緊張してきた。
席に戻って青山くんを待つ。
紅茶が、もうぬるくなってた。

心が落ち着かなくて、
何か違うことに意識を飛ばしたくて、
雑誌をバッグから取り出して、パラパラとめくる。
青山くんの会社の近くの喫茶店でも、
こんな気持ちで、この雑誌をめくったな…
そんなことを思い出したら、可笑しくなった。

頭の中に入ってくるような、来ないような。
雑誌のモデルが微笑む写真を見る一方で、
私、大丈夫かな…って考える。

まだ、プロポーズは有効なのかな。
青山くんは、ケンカの勢いで言っただけかもしれない。
でも、私は、いっしょにいたいと思ってる。
そのことは伝えないと…

携帯が震えた。
青山くんが、近くの道で車で待ってることを伝えてきた。

さあ、いよいよだ!

私は喫茶店で会計を済ませると、
指定された道に、青山くんが乗っている見慣れた車をみつけた。
慌てて乗り込むと、
青山くんはすぐに車を発進させた。

無言の、耳をふさぎたくなるような沈黙。

自分が緊張してるのがわかった。
こんなこと、初めてのデート以来じゃない?

私は落ち着かない気持ちを、
外の景色を見ることで誤魔化した。

車はどんどん高台に上って行く。
街の景色が見下ろせた。

そして、高台の人気が無い、駐車場らしきスペースに、
青山くんは車を停めた。

「ごめん!」

私が言葉を発しようと、息を吸い込んだ瞬間、
青山くんがガバッと私を強く抱きしめてきた。

「あんなこと言って…。
やっぱり…
僕…ダメだ。
カリナがいてくれないと、休まんないんだよ。」

青山くんの、真剣な気持ちが、
私の中に流れてきた。
強い想いが、抱きしめられた力と共に伝わってきた。

「カリナが僕に必要なんだよ!
結婚なんて、してもしなくてもいいよ!
とにかく、僕の側にいてくれれば、
もう…どうでもいいんだ!」

あ…

やられたな…って思った。
結婚しなくていいって言葉だけが逆で、
私が言おうと思ってたこと、
全部青山くんが言っちゃった。

途端に拍子抜けした。

もう~。
何だよ、あんな冷たい、
生活の現実だけのために結婚しようみたいなこと言ってたくせに。
こっちの決心はどうしたらいいの?

「結婚しなくていいの…?」

私のつぶやきに、青山くんは体を離して、
私の目を見て言った。

「しなくてもいいよ。
こうして会えさえすれば!」

「でも、そしたら、倒れちゃうんでしょ?」

私はイジワルな気持ちになっていた。
自分の、さっきまで思い詰めてた気持ちが、
青山くんの気まぐれで無しになっちゃうなんて、
何だか許せない。

「倒れたっていいんだ!」

ぶっ!
何言ってんの~!

真面目に真剣に答える青山くんに、
心が和らいでいくのがわかった。

彼のこんなところが、
私をありのままの自分にさせるんだろうな…。

私は笑い出したい気持ちを堪えてイジワルを続けることにした。

「何か私からも欲しいんでしょ?
私、何もアオヤンにあげてないんでしょ?」

「側にいてくれれば満足だよ。
今まで通りでいいんだ。
だからもう、結婚とか、考えなくていいんだよ。」

「ふぅん…」

まったく、冗談じゃない。
私のこの思いは、どうしたらいいのよ?
無しにするなんて、あんまりじゃない?

そうは、させるもんか!
って思って、呟いた。

「せっかく、結婚して下さいって、言おうと思ってたのに。」

さー、どうなの?

青山くんは、
本当に呆気に取られた顔ってやつをした。

正に、声が出ないってやつ。

「どうする?やめておく?」

その驚いた顔を見て、
私はちょっと満足した。

も~。
私だって、どっちだっていいのよ。
青山くんが側にさえいてくれれば。

「いや…
やめない!
やめないよ!
やめないって!」

青山くんは、私を強く抱きしめた。

やった~!って思った。
ふふ。
大満足…。

「仕事、辞めた方がいい?」

青山くんは、抱きしめる力を緩めて、
私の顔を見た。

「どっちでもいいよ。カリナが好きな方で。」

「仕事しちゃうと、疲れてご飯作れないかもしれないよ?」

「金があれば弁当でも買えばいいよ。」

「無かったらどうするの?」

「その時は作るしかない。」

「やりくり下手かもしれないよ?」

「じゃあ、僕が監視する!
…って言っても、僕も自信無いから、いっしょに考えよう。」

「料理、あんまり上手じゃないよ?」

「これから上手になればいいじゃん。
僕も上手じゃないし、作れないけど手伝うから。」

「ホント?ホントに手伝うの?」

「いや…多分…
できれば…
なるべく…。」

どれも自分が何とかするって言わない青山くんに、
私は頼り無いな~と思いつつも、
可笑しくなって笑った。

「自分で作るとは言わないのね。」

私の様子を見て、真面目に答えていた青山くんも笑い出した。

「結婚する条件が一つあるの。」

青山くんの顔が強張った。

もう一つだけイジワルしておこう。
これ位は、青山くんにガンバってもらいたい。

「もう一回。
今度はケンカっぽくない、ステキなプロポーズして。」

青山くんは、安心したように息を吐いて、
真面目な顔をして言った。

「お安い御用です!」

ペコリとお辞儀をするので、
私は嬉しくて、青山くんに抱きついた。

青山くんが私の体を、
同じように嬉しい!って気持ちの表れみたいに、
強く、強く、抱きしめてきた。

もう離さない…

こうして私は、
青山くんと結婚することになった。




前の話を読む

続きはまた明日

目次





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010年01月25日 21時43分23秒
コメント(2) | コメントを書く
[ある女の話:カリナ] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

プロフィール

りらっくままハッシー!^o^

りらっくままハッシー!^o^

カレンダー

コメント新着

千菊丸2151 @ Re:アカデミー賞授賞式(03/11) りらっくママさん、お久し振りです。 「君…

バックナンバー

2024年12月

キーワードサーチ

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: