貨物船でNZに着いてみたが・・・


母に電報打った。18日目の沖合いから日本の母に向けて
送った電報である。

1963年9月22日、日曜日だった。
スポンサー(名だけ)がNZ人だったので
たまたま行き着いたところがニュージーランドだった。
徳和丸3800トン徳和丸で神戸港を出航秋晴れの9月14日。
                    この写真は私が乗った貨物船、もちろん私が写っている。

日曜日のせいでメインストリートのQueen Streetは
全店休みである。
想像をはるかに超えてびっくりした。
百貨店、映画館、個人商店はもちろん、散髪屋、本屋、などなど
すべて休みでひっそり静まっている。
それも日本ではごった返している日曜日。

その日は到着手続きもできないので
貨物船に泊めてもらうことにした。
タラップのところで青年に呼び止められた。
彼は「エイガ」「エイガ」と言う。
どうやら映画があるので見に来い、らしい。

事務長(パーサー)、背の高い男前の人とは
18日の航海中で大変親しくなっていた、が
私に耳打ちする。
彼と宗教の話をするとうるさいから気をつけるように。
何にも知らない私は、ひどくこの忠告に感謝した。
その後彼(トニー・25歳)と親しくなるのだが
2ヶ月の間私はトニーと宗教の話は全くしなかった。

NZに着いて始めての日、映画でなくても飲み屋でも
どこでも連れて行ったもらえるところならどこでも
ついて行ったろう。
狭い船室に18日間も閉じ込められて、
やっと目的地着いてそのまま一日船室で過ごせるはずがない。

急いで背広を着て、トニーの車に乗り込んだ。
ルノーの小さい4人乗り、それもガラクタがいっぱいで
すわるところもない汚い車!
日曜日の夜のついたところが教会!
私の一番たどり着きたくない世界最後の場所であった。

日本から8000キロも離れた南半球の最果ての国で
一番初めに訪れさせられたのがキリスト教会であるとは!
その表玄関に着いて、正直思った。
「今ここから帰ることができるのなら
タクシー拾って帰りたい。」
でもそれを英語でどうやって言えばいいのだろう。
どこでも連れて行ってくれたらどこでも行くわ・・・
と心底思っていて「映画館?」(休みのはず)と思ったら
宗教の館であった。
あぁ、万事休す!教会は、日曜日はかき入れどころだった!

日本でも一度も行ったことのない場所!

つづく・・・・・


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