バンザ~~イ!!!
昨日銀行の貯蓄会があったんですよ・・・総勢100名くらいで。
本店から専務さんがいらしてて、私にこう言うんですよ・・・・・・
「支店長が、いつもきついことを言うのはナイト建設がよくなれば・・・と思うからなんですよ・・・仕事が多いって言うのも知ってますから、もっとよくするためにがんばってください」
デモね・・・よけいな仕事を増やすんじゃなく・・・金策よりも本業のほうをやらせてくれるなら、もっと楽になるんですけどねえ。。。。
でも、最後にその100人のお客様の中から抽選で、いろんな賞品のプレゼントがあったんですけどね・・・
10個の賞品の中から、私に当たったのが、こともあろうに「支店長賞」!!!
「フットスパ」って言うのが当たりました!!!
どんなのかわからないけど、今日開けてみてみます。
「あっ、そろそろ東京に帰らないと・・・・・今日中につけなくなりますね」
鶴子はあわてて立ち上がりました。
甚乃丞さんは、鶴子が保険の勧誘に来たものと思い込んでますから、早くここを出て行ってもらい、与ひょうが騙されないようにしたいと思ってましたから、
「アア、そうだなあ・・・・遅くなると田舎の道だで、真っ暗になってまた迷っちまうかも知れねえだからなあ・・・はようかえりー」
せきたてる様にしていましたが、与ひょうは名残惜しそうな顔をしていました。
その与ひょうの表情を見て取った鶴子は、甚乃丞サンの心の中を知ってか知らずか・・・・
「そうだ・・・与ひょうさん・・・・今度東京にぜひいらしてください・・・その時はご馳走しますから」
「行ってもいいのけ?」
うれしそうな与ひょうの顔を見てあわてたのは甚乃丞さん・・・・
「イヤ、こいつは東京なんぞ行ったことはねえし・・・・危なっかしくて出してやれねえぞ」
そう言ったんですけど、与ひょう方は心ここにあらずで・・・・・
「大丈夫ですよ・・・・それならあたしがご案内させていただきますし、亜由美さんもいらっしゃいますから・・・・じゃあいつごろにします?」
鶴子はさっそく段取りをしようとしていました。
「これから稲刈りもあるし、正月の準備もせにゃならん・・・・ちょっと無理じゃな」
甚乃丞さんは、あくまでも阻止しようとするのですが、与ひょうの目の輝きが違ってきています。
「わし、東京さ行って、ビルヂングっちゅうものを見てみたいんじゃ」
「まあ、日にちはともかく、すぐは無理じゃ・・・・・それより、あんた。もう遅くなってきたぞ・・・はよう出発せにゃ」
甚乃丞さんはあとから与ひょうに言い聞かせることにして、一刻も早く鶴子を追い出そうと思っていました。
「そうですね・・・・じゃああとからご連絡いただいたら、さっそく手配させていただきます。・・・じゃあその時にでもまた・・・・・」
鶴子はそう言って、自分の軽自動車に乗り去っていきました。
鶴子の車が視野から消えてすぐに、甚乃丞さんは与ひょうに懇々と説教しました。
「お前なあ・・・・都会のおなごの恐ろしさを知らんのじゃ・・・・」
「そったらこと言ったって、甚乃丞さんの鼻の下も、ずいぶん長くなってたぞ」
「わしゃいいんじゃ・・・いろいろ経験豊富だで、そったらごど慣れっこだに・・・じゃが、お前は無垢の人間じゃ・・・あんな東京の女狐にゃ、ころっと騙されるだに、気をつけにゃいかん・・・・東京に行っちゃならんぞ」
そこまで言うと、甚乃丞さんは、急ぎの仕事を思い出し、かえって行きました。
「あんなきれいな人が、女狐だなんて・・・甚乃丞さんももうろくしたんでねえか?・・第一しっぽなんぞ出てなかったぞ・・・・もし、狐だったとしても、わしゃ駐在さんと仲良しじゃ・・・行くときは鉄砲を借りていくけん、そんなときゃ、すぐに撃ち殺してくれる」
与ひょうはまだ見ぬ東京に夢を抱き、いろいろなことに思いをめぐらしていました。
「東京には東京タワーがあることは知っとったが、この前テレビを見とったら、東京タワーも結婚したみたいで、子供まで出来ておったなあ・・・・あんなものまで結婚できるんじゃから、わしにもきっとお似合いのおなごもいるはずじゃ・・・・それにしても鶴子さん・・・えがく綺麗な人じゃった。・・・隣村の恵さんと同じくらい綺麗な人じゃったなあ・・・」
与ひょうは、コマーシャルも実際も区別できないくらい純粋な人でした。
「あのよくばり熊子が、行ったっきり戻ってこねえ・・・なんかきっといいこともあるんだべえ」
与ひょうの夢はますます膨らみました。
それから二週間ほど経ったある日・・・・与ひょうが夕飯を済ませ、そろそろ風呂にでも入ろうかと思っていたころ、一本の電話が入りました。
「もしもし・・・・あたしよあたし・・・亜由美よ」
熊子からの電話でした。
今日から読み始めた人にご説明をしますと、亜由美というのは、与ひょうの中学時代の同級生でまこと本名は「佐藤熊子」・・・・若いころ渋谷を歩いているときにモデルクラブのキャッチセールスにスカウトされ、そのモデルクラブに入会金を払って所属して以来・・・・モデルとしての仕事はしていないが「自分はモデルよ」といい続けているのです。
もちろん仕事がないということは収入もないわけで、本人はアルバイトに保険の外交員をして生計を立てているのですが、どちらが本業かというと・・・・あくまでも「モデル」と言い張る熊子でした。
「あんた、こんど東京で鶴子とデートするんだって?」
「ベントウ・・・うんにゃ、弁当は食わねえだども、東京さ案内してくれるっちゅう話しだが・・・・」
「黙って聞いて!」
この「黙って聞いて」っていうのが熊子の口癖でした。
「いつ来るのかということと、あんたに服装の注意をしとこうと思ってね・・・でいつ来るの?」
「そうだなあ・・・正月が開けて10日ぐらいかな」
「じゃあ1月10日に準備しとくわ・・・切符の手配はうちの母さんがしてくれるよう電話しとくから・・・・それとね・・・どんな服装で来るの?」
「ああ、それなら去年の祭りで青年団で新調した半纏があるから・・・・」
「それはやめて、背広にしてちょうだい・・・・」
「あれなあ・・・・小次郎の結婚式のとき着たんだども”猫帯”っていうのが難しくってなあ・・・」
「猫の帯じゃなくてネクタイ!・・・それと靴はどうするの?・・・・」
「アアそれなら、この前穴が開いたんで、新しい長靴買ったばかりじゃから」
「それも結婚式のときに革靴はいたんでしょ?」
「ありゃ、水溜りを歩くときにゃ不便だぞ」
「黙って聞いて!!」
こうして、1月10日
与ひょうは東京に行くことに決まったのです。
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