竹やぶの中を彷徨っていた。
子供の私は・・・・親にはぐれ、山に一人ぼっち・・・・・・あちこち彷徨っているうちに竹やぶの中にいたのである。
親にはぐれた場所で、じっとしていた方が助かる確率が高い。・・・・というのは後年学んだのだが、なにせ子供であった。
昼のうちは良かったが、暗くなるにつれて、そこにじっとしているのが怖くなった。
犬の遠吠えのような声が聞こえる。
山犬・・・・・いや、もしかしたら絶滅したといわれる狼かもしれない。
じっとしているより・・・・そこから見える街の明かりの方へ歩いて行った方が・・・・人家に近い方が助かる・・・・そんな思いであった。
竹やぶの中を彷徨っているうちに・・・笹の葉であちこち切った。
鋭い笹の葉は・・・・剃刀のように肌を切った。
血がにじんでいる。
この地の匂いを嗅いで・・・・肉食獣が近寄ってきているような気配がした。
ここにじっとしていよう・・・・・私は子供ながらにそう思った。
ここなら・・・・どんな肉食獣も笹の葉で怪我をすることを嫌い、絶対に中には入って来ないだろう・・・そう感じてじっとしていることにしたのである。
空を見上げるとまん丸の月が煌々と辺りを照らしている。
まん丸だと思ったのは間違いかもしれない・・・・・もしかしたら満月より小さい・・・十三夜ぐらいなのかもしれないが、・・・・暗闇の中に、この明かりはありがたかった。
また近くで犬の遠吠えが聞こえたので、私は体を出来るだけ縮めた。
自然、地面が間近に見える。
とそこに・・・・・ぽっかりと空いた、私ひとりならなんとか隠れられそうな穴があった。
地表にいるより暖かいかもしれない。
私はその穴の中に潜り込むことにしたのだ。
しかし、意外なことに中は思いのほか広かったのである。
いや・・・広いのではない。・・・・なぜか私の体が・・・穴の中に入っていくに従って、どんどん小さくなっていったのだ。
つづく
HirokochanさんCalendar
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