「神様」は考えました。
「なんで竜王は、この亀参与をマロたちの接待係にしたんだろう?・・・参与といえばかなり偉い人・・・・浦島太郎と顔なじみとはいえ・・・浦島太郎は大事な乙姫様を連れ出した張本人・・・竜王は怒っていたはずだし・・・・ミミズに変えられたウサギ社長のことだって・・・・この亀参与がやったことなんだから・・・・いちばんふさわしくない接待係じゃないか・・・」
しかし、「亀参与」は何事もなかったかのようにニコニコしながら接待を続けようとしていました。
「皆様方・・・・宿舎のほうはお気に召しましたか?・・・・何しろ田舎のことで・・・充分とは言い難いんですが・・・一生懸命にやらさせてもらってます。」
「いやあ・・・もう充分すぎるくらいですわ・・・至れり尽くせりとはこのことですよ・・・ただ・・・・部屋にお風呂はついてないんですね?」
「風呂好き」の「孔雀」が言いました。
「ああなるほど・・・・早速準備させてもらいますわ・・・いやあ・・・私どもでは風呂に入る習慣がないものですから・・・24時間海流に身を任せていますから・・・・汚れることもないもんで」
なるほど・・・・魚や海洋性植物がお湯に入るのは「鍋」の材料になるときだけ・・・お風呂には入らないようです。
「それは早速したくさせていただくとして・・・・どうです皆さん・・・・私ども心づくしの手料理・・・田舎料理ですけど食べてみていただけませんか?」
「神様」たちの目の前には「豪華な二の膳つきの食事」が用意されていました。
「いやあ・・・おいしそうですねえ・・・・このぷりぷりとしたお刺身・・・よだれが出てきそうですわ?」
何も考えていない「孔雀」が目を丸くしながら早速箸を持ちました。
(え?刺身?・・・魚を調理したのか?)
「神様」は思わず、「亀参与」の目を覗き込んだのです。
だって、亀参与とウサギ社長の喧嘩の原因は、ウサギ社長が「新鮮な魚介類を出せ」といったのに対し、「亀参与」が「仲間の魚を食べるわけには行かない」と言ったからなんです。
それなのに、何で刺身が出るんだろう?
「神様」は頭をひねりました。
「ああ・・・それは刺身に似せて作ってありますけど、寒天と小麦粉や米粉で作ってありますから・・・・魚じゃありません」
「ほう・・・これが小麦粉や米粉・・・・ですか・・・・」
つまり「精進料理」なんです。
「ささ・・・どうぞ・・・・」
今度は「亀参与」・・・・大人には酒を勧めます。
「あら・・・あたしそんなにいける方じゃないんですのよ・・」
そういいながら「孔雀」は勧められるまま、飲み続けていたのです。
最初はお銚子で注いでもらっていました。
そのうちお銚子で注ぐとお猪口が少しずつ下がります。
「ああ・・・もうそんなに注がないで・・・酔っちゃいますから」
そういいながら「お猪口」が下がると言うことは「もっと注げ」ということでして・・・・そのうち・・・「こんな小さいのだとお手間でしょうから、大きな湯飲みでも貸していただけませんか?」・・・なんていいだす始末。
酔ってくると・・・
「ねえ・・・ただ飲み食いしてるだけじゃつまらないでしょ?・・・歌でも歌いましょうよ・・・あたしが最初ね・・・・」
そんなことを言い始めました。
子供たちはそんな酔っ払いの女性を見たことがありませんから、キャッキャ、キャッキャと大騒ぎを始めます。
「それじゃ・・・・歌を歌われると言うことで・・・準備をしましょうか?」
(ほう・・・・竜宮城じゃカラオケまであるのか)
「神様」も少し酔ったのか、「孔雀」のなすがままにしておきました。
しかしそのときです・・・・「亀参与」が手を叩いて「お姉さんお願いします」と言う声に・・・ふすまの奥から「は~い」と言う返事・・・・
ふすまが開くと三味線を持った芸者衆が・・・・・
実際ね・・・・・東京に行ったときお客さんの接待である料亭を紹介してもらったんですよ。
その時、料亭の女将さんが・・・・「ナイトさん・・・歌でも歌われませんか?」なんていわれて・・・・元プロ歌手としては・・・ここで歌わなきゃ接待にならないな・・・なんて思っちゃったものですから・・・お願いしたんですよ。
そしたら、ふすまの向こうから「三味線」を杖代わりにした「おばあちゃん」が出てきまして・・・・「都都逸かなんか?」・・・・
あの時は困りましたねえ・・・・私はてっきりカラオケの機械が出てくると思っていたもんですから・・・・
「孔雀」サンも困ったんですよ。
彼女も、都都逸、長唄、小唄、端唄・・・・もちろんご存じない・・・・歌える歌は流行歌だけなんですから・・・・・
でも一流の芸者さんっていうのは違うもんですね・・・・
「お客様の前に私が前座で」・・・・・そういいながら、なんだかよくわからない唄を歌い始めまして・・・・・3曲目ほどで「金毘羅ふねふね・・」なんていうのを弾き始めるんですよ。
「あ、これなら知ってる」・・・
知ってるメロディが出てくると「孔雀」も元気になりまして・・・・大きな声で歌い始め・・・・その唄が終わったとたん・・・・
「お客様にとりを勤めていただきましたんで・・・あたくしはこの辺で・・・」
なんて言いながら・・・「おばあちゃん芸者」はさっさと出て言っちゃったんです。
そこで宴会は「お開き」・・・・・
「さて・・・皆様だいぶお疲れのようですので・・・今日はこの辺にしていただきまして・・・明日また8時に大バスが迎えに伺います。・・・・・・明日は竜宮観光をしていただき・・・その後竜王殿に参りまして・・・竜王様に謁見をしていただくという段取りになっております」
そういうとさっさと「亀参与」・・・・「お帰りの手はず」を・・・・・
一階に戻ると・・・・まだ「平氏一門」がドンちゃん騒ぎをしています。
しかし、さすがの「神様」も今日は疲れたようで・・・・迎えに着た大バスに乗って、一行は「迎賓館」に帰ったのでした。
つづく
HirokochanさんCalendar
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