曲目の変更については、「正指揮者」の「斎藤先輩」が言うことなので、部長以下・・・誰も文句を言う人はいませんでした。
しかし、「ミュージカルメドレー」の「踊り」のことに関しては、不満続出!
だってそうでしょう・・・・
ちゃんと踊りを習ったことがあるのなら何にもいわないでしょうが・・・全くの素人 が6人・・・自分達の目の前でなにやら怪しげな振る舞いをするのです。
「全部の曲に振り付けをするんですか?」
私達の同級生の「阿部さん」というソプラノの女生徒は、全身で不満を表し、声なんかいつもよりもっと高い調子で怒りをあらわにしました。
彼女は、「ウエストサイド物語」の「トゥナイト」で、憧れのテノール「山本部長」とデュェットすることになっているのです。
そんな良い雰囲気を・・・・私達仲間6人が乱入する・・・・彼女にとっては許しがたいことだったでしょう。
それは私も同じこと・・・・
私だって、「サウンド・オブ・ミュージック」の「エーデルワイス」を、40人のバックコーラスで気持ちよくソロで歌うことができるはずだったのですが、このままでは同級生の「村上」に取られてしまうんです。
そのほかにも・・・「指揮者の横暴」を訴える部員がなんと多かったこと・・・・
さすがの「斎藤先輩」も・・・特に女性部員の声に負けて・・・・全曲というのはやめることにしたのです。
しからばどの曲に?
「ドライボーンズ」の「小田島の骸骨踊り」は決まったものとして・・・・
「ミュージカルメドレー」のほうは3曲決定しました。
最初は「ウエストサイド物語」の「クール」・・・・・これは映画を見た人ならわかるかな?
ジョージ・チャキリスのジェット団が・・・・殺人を犯したあとに「こんなときこそ冷静になろう」というんで踊るんですけど・・・・足がピンと上がる・・・・そんなんじゃなきゃできないんです。
まだ高校生といえども、身体の硬い私にはきつい練習でした。
二曲目は「メリーポピンズ」から「チムチムチェリー」・・・・これはロンドンの煙突掃除屋さんの歌なんですけど・・・・これはバレーの先生が幻想的な振り付けをしてくださいました。
ケッコウ難しかったようですが・・・・私だけは再度変更になり「エーデルワイス」のソロを歌わせてもらうことになって・・・・曲の構成上、この踊りには参加しなくて良かったんです。
仲間たちは、バレー教室でレッスンに励みました。
三曲目は「サウンド・オブ・ミュージック」から「ドレミの歌」。
この歌は皆さん親しみのある歌ですから良くご存知でしょうが、途中・・・音階で歌うところがありますよね・・・
「ドミミー、ミソソー、レファファー、ラシシー・・・ドミミミソソレファファラシシ・・・ソードーラーファーミードーレーーーソードーラーシードーレードーーー」
あの部分を、私とその仲間が胸に「音階の札」をぶらさげて立ったりしゃがんだりする・・・・それだけでしたからこれはそんなに練習を必要としませんでしたが・・・・
実は最終的に私は、この最後の「ドレミの歌」だけ踊りに参加すればよいことになりまして・・・
立ったりしゃがんだり・・・・つまり「ヒンズースクワット」をしているようなもんで・・・ けっこう苦痛でした。
それとこれにはもうひとつ問題が・・・・・
音階は7つあるんですよね・・・・「ドレミファソラシ・・・」
そして私と仲間は6人だけなんです。
実際はオクターブ上の「ドとレ」があるんですけど・・・・それは問題にしないようにしようということで・・・どっちにしても一人は足りないわけで・・・・・
でもすぐ解決しました。
「S子で良いだろ?」
「小田島」がクールに言いました。
「それを誰が頼むんだ?」
「内藤・・・なにを言ってるんだ・・・お前以外ないじゃないか」
「石川」の一言で私にその役割が回ってきました。
「S子」は、実はブラスバンド部員です。
同じ日の違う時間・・・「青森市民会館」でやはりコンサートを行うんです。
「いやだよ・・・あたし・・・恥ずかしいもん・・・・それにコーラス部のあとにブラスバンドのコンサートがあるんだよ?」
ここで私達の仲間に入ったら、自分のコンサートのときに野次られると思ったようで・・・・
「ドレミの歌だけでいいんだよ・・・何とか頼むよ」
「あ・・・そういえば今年大学にいった先輩たちが来るんでしょ?・・・そうだ深町先輩に頼めば?」
「深町先輩」は前年の「正指揮者」で、「クラシック調でフォークソングを歌うな」って言った人・・・
コンサートで余興の様なことをするだけでも怒りそうでしたから、そんなお願いは出来ません。
「いや・・・もうお前しか頼めなんだよ・・・・去年だってはじめはドラムやってくれるって言ってたじゃないか・・・・ナ、ナ?・・・何とか頼むよ」
無理やり頼み込みました。
マア、この結果につきましては・・・・何とかうまくいったんですけど・・・
私の指揮者としてのデビューもうまくいったし・・・踊りの方もバレーの先生のおかげで何とか、幻想的な踊りも見れました。
ただですね・・・・・観客の品が悪くって・・・・・
どこから聞いたのか・・・〈きっと仲間のうちの誰かがしゃべったと思うんだけど)
市民会館の二階の観客席から・・・・・私たちが出て行ったとたん、真っ白な垂れ幕が下りてきて・・・そこには・・・・
「去年の失敗を恐れるな!!!石川、井上、藤本、小田島、川田、内藤・・・がんばれ!」という文字が・・・・
そして、どこから出してきたのか、「紙テープ」代わりの「トイレットペーパー」が飛んできて宙を舞います。
同級生たちがからかい半分作ったものでした。
「S子」は自分の名前がなかったことにほっとしていました。
そんなこんなで、高校3年間・・・・・・
私達は青春を謳歌したのです。
続きは・・・・受験そしてその後を書きますが・・・・私としてはちょっとほろ苦いことになるんです。
つづく
Calendar
Comments